伊根町は、美酒・美食三昧
|立ち寄りたいおすすめスポット3選
京都北部の7市町で構成される「海の京都」。和の源流を感じながら、冬の味覚をキーワードに“もうひとつの京都”の魅力を発見する旅へ――。今回は、舟屋が連なる景観で人気を集める「伊根町」をご紹介。日本海で珍しく南向きで、無人島が防波堤となっていることから一年を通して穏やかな内湾が漁業を育む。その情緒豊かな漁村には固有の食文化が息づいている。
01|INE CAFE
伊根湾の美景を眺めながら
優雅なカフェタイム

後半島の北東部に位置する伊根町は、海の京都を象徴する漁村だ。オーシャンフロントどころではない海の“真上”。複合施設「舟屋日和」内にある「INE CAFE」で、朝陽がきらめく内湾を眺めながらそう実感した。湾沿いに建ち並ぶ切妻造の家屋は、多くが船を格納する船揚場を設けた舟屋仕様だ。濃厚なチーズケーキをいただきながら情景を眺めていると郷愁がわき上がってくる。「伊根の海は、夏場は2階から泳いでいる魚が見られるほど透明で、イルカが迷い込んでくることもありますよ」と店長の永濱志穂さん。

INE CAFE
2017年にオープンした、舟屋をイメージしたカフェ。卵や季節のフルーツなど伊根産の地元食材を使用したスイーツやドリンク、旬の魚で仕立てるハワイの郷土料理・アヒポキ風の海鮮丼など手づくりメニューがゆったり味わえる。
住所|京都府与謝郡伊根町字平田593-1(舟屋日和施設内)
Tel|0772-32-1720
営業時間|10:30~17:00(L.O.16:30)、ランチ11:00~14:30(※時期により変動あり。テイクアウトはドリンク&アイスのみ)
https://funayabiyori.com
02|向井酒造
唯一無二の赤い酒で
世界に名を馳せる

そこから湾曲する集落を歩き「向井酒造」を訪ねた。創業は1754年、町唯一の酒蔵は「日本で最も海に近い」酒蔵といわれる。年間生産高500石の小さな造り酒屋の名が世界で知られるきっかけとなったのが、杜氏の向井久仁子さんが生み出した「伊根満開」。

向井さんは東京農業大学醸造科を卒業後、帰郷した翌年に突如杜氏に就任し、蔵人とぶつかりながらも、ひたむきに酒造りに邁進。そんな中、大学時代の恩師・竹田正久教授とともに、赤い酒は古代米の赤い米から造れるのかという探究心から生まれたのが、前代未聞の赤い日本酒・伊根満開だ。ロゼワインのような桜色とベリーのような甘酸っぱさが斬新な酒は人の縁を結び、皇室やG20大阪サミット、世界一と称されたコペンハーゲンのレストラン「noma」など、国内外の檜舞台を席巻。
生み出して四半世紀経ったいまも最高の配合を追求しながら新しい酒も開発している。そう話す向井さんは、太陽のようにエネルギッシュで、誰よりも伊根愛が強い。
「人がやっていないことに挑戦して、お酒を通じて伊根を知ってもらたい。ここは水揚げしたての魚が本当に美味しいから!」

赤い色は、ワインにも含まれる天然色素のポリフェノール。冷や、熱燗、炭酸割りなど、どんな飲み方でも美味しく、料理を選ばない味は、欧米のミシュラン星獲得店でも好評
原材米|古代米(紫黒米)100% 精米歩合|65% アルコール度数|14度
向井酒造
創業以来270年余りにわたって舟屋を仕込み蔵として受け継いできた老舗酒蔵。女性初の但馬杜氏・向井久仁子さんは1999年より酒造りをはじめ、代表銘柄「伊根満開」をはじめ、全量純米酒で伝統的な生酛や山廃を復活させるなど、独自の酒造りにこだわる。
住所|京都府与謝郡伊根町字平田67
Tel|0772-32-0003
営業時間|9:00~12:00、13:00~17:00
定休日|木曜、年末年始
蔵見学|不可
www.kuramoto-mukai.jp
03|鮨いちい
伊根の海を味わう隠れ家

空が茜色のグラデーションを描き、静かな水面に舟屋のシルエットが映し出された夕刻。「鮨いちい」の暖簾をくぐった。
店主の市井八州司さんは、京都市街の日本料理店などで研鑽を積み、伊根の名旅館「油屋」で約20年料理長を務めた生粋の料理人。半世紀を超えるキャリアの集大成として地元でカウンター8席のみの鮨店をオープンさせたという。

市井さんがこだわるのは、地産地消だ。伊根の海と魚を知り尽くした目利きで旬の地魚を厳選し、シャリは1年半寝かせた伊根町産のコシヒカリを使用する。肉厚なアオリイカの力強い甘み、鯖へしこの凝縮した旨み、そしてフォアグラのように濃醇なカワハギの肝……。伊根の暮らしに寄り添った海の恵みをまるごと味わえる食体験は贅沢なことこの上ない。
次回この地を訪れたら、舟屋に滞在し、朝は旅人も購入できる伊根漁港を訪れてみよう。
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鮨いちい
2021年、伊根湾めぐり遊覧船乗り場近くにオープン。丹後半島の四季折々の魚介とまろやかでコクのある京都の千鳥酢を使用した握りが堪能できる。「これからの時期は、脂ののった伊根ブリやヤガラが美味しくなりますよ」と市井さん。
住所|京都府与謝郡伊根町字日出116-4
Tel|090-5155-5621
営業時間|17:00〜22:00(L.O.21:30)
定休日|月・木・日曜
Instagram|@ichii_susi
text: Ryosuke Fujitani photo: Kousaku Kitajima
2025年12月号「京都/冬こそ訪れたいあの旅先へ」



































