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多様な泉質を備える
秋田県《乳頭温泉郷》
|温泉教授・松田忠徳が惚れた名湯10選①

2024.3.4
多様な泉質を備える<br>秋田県《乳頭温泉郷》<br><small>|温泉教授・松田忠徳が惚れた名湯10選①</small>

保湿やアンチエイジングの効能がある美肌をつくる温泉、胃腸や免疫力など体内に効く温泉……。温泉研究歴40年以上の大先生が、人気温泉地から秘湯まで、東西の名湯をセレクト。
 
今回は趣ある雪見露天風呂が楽しめる秋田県の秘湯「乳頭温泉郷」を紹介。

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江戸時代から続く日本最後の秘湯

乳頭温泉郷の中で最も古い歴史をもち、秋田藩主の湯治場だった鶴の湯温泉。江戸時代の建物や雪景色など、周囲の景色はいつまでも飽きない

秋田・田沢湖高原の奥、乳頭山麓の先達川が縫うように流れるブナの原生林のそこかしこから湯煙が上がる。鶴の湯、大釜、乳頭、妙乃湯、蟹場、孫六、黒湯。七湯からなる乳頭温泉郷が“日本最後の秘湯”といわれて久しい。その中でも最も湯治場風情を色濃く残すのが「孫六温泉」である。あくまでも“質素”であることに徹しているようにも思える、湯ひと筋に懸ける湯治哲学に頭が下がる。
 
ただ今回は女性も含めた幅広い世代向けに「鶴の湯温泉」を推薦したい。鶴の湯は一般の旅館としても、40年来高く評価してきたが、実は温泉ファン垂涎の的の鶴の湯はソロの湯治客も受け入れている。ご主人の佐藤さんは「温泉の原点は湯治です」が口癖だからだ。国際的に超人気の秘湯の宿になっても、その哲学を崩すことはない。江戸時代の囲炉裏が切られた「本陣」と称する茅葺屋根の長屋部屋の向かいの2号館、3号館に、2食付きで泊まれるのだ。

鶴の湯温泉の白湯。美人の湯、冷えの湯とも呼ばれる、混浴露天風呂の源泉。泉質は硫黄泉で、高血圧症、皮膚病、糖尿病などに効能がある

鶴の湯の持ち味は建物、風呂を含めた山里の桃源郷のような日本的風景だろうが、やはり湯質がピカいちである。硫化水素泉を主体とした4種類の泉質を有し、それぞれ白湯(美人の湯)、黒湯(子宝の湯)、中の湯(眼っこの湯)、滝の湯(打たせ湯)と呼ばれ、連泊でも飽きがこない。しかも湯船の底から乳白色の湯が自然湧出する名物の混浴大露天風呂のほかに、女性専用の露天風呂が2カ所もある。

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三重県《榊原温泉》
 
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鶴の湯温泉
住所|秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林50
Tel|0187-46-2139
料金|1泊2食付1万600円〜(税・サ込。冬季は1室につき暖房費1320円)、日帰り入浴700円
IN|15:00
OUT|10:00
キッチン×/ランドリー〇/Wi-Fi〇
※現在孫六温泉は休業中、2024年秋頃に別所有者が再開予定
 
<温泉data>
泉質|硫黄泉(含硫黄・ナトリウム・カルシウム塩化物・炭酸水素泉)
湧出温度|約59.6℃
かけ流し|〇

text: Tadanori Matsuda
Discover Japan 2024年2月号「人生に効く温泉」

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