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発酵食の深淵をのぞきに西へ東へ①
発酵をデザインするヤマモ味噌醤油醸造元7代目の味噌づくり

2019.11.22
発酵食の深淵をのぞきに西へ東へ①</br>発酵をデザインするヤマモ味噌醤油醸造元7代目の味噌づくり

日本の発酵食文化は、地域特有の気候や文化、風習などから独自の発展を遂げ、いま新たな多様性を秘めている。発酵食の代表格であり、歴史深い、味噌や醤油づくりの地へ向かうと、発酵を軸にそれぞれつくり手が考える日本食の未来が見えてきます。その中から今回は味噌づくりにフォーカスを当ててみましょう。

新種の酵母を発見!
発酵をデザインする7代目の味噌づくり

日本の家庭料理に欠かせない存在である味噌。 「ヤマモ味噌醤油醸造元」では150年にわたり継承されてきた技術を守りつつ、いま革新的な味噌づくりが行われているという。その新たな発酵の現場を探るべく、発酵デザイナー・小倉ヒラクさんと秋田県にある蔵へ訪れた。

ここで味噌と醤油を同時に熟成 伝統的もろみ蔵。大豆や米麹、塩を混ぜ合わせたものを仕込み、発酵・熟成させるもろみ蔵。巨大な木桶は古いものでは100年以上経過し、先人たちの知恵が詰まった伝統的な仕込み方法が行われている

かつて城下町・宿場町として栄えた秋田県湯沢市岩崎。江戸末期、豊かな自然の恩恵を受け、米や酒、味噌づくりが根づく中、初代・高橋茂助が創業したのがヤマモ味噌醤油醸造元だ。150年以上にもわたり岩崎の地で味噌と醤油づくりを行ってきたヤマモは、革新的な味噌と醤油をつくる蔵として注目が集まっている。今回は味噌にフォーカスを当て、7代目の高橋泰さんに話をうかがった。

高橋さん:これまで調味料は変わらぬ味が求められてきましたが、どこかで革新を生み出さなくては新たな資産を築いていけない。家業を継いだ13年前から、実験的な試みやカルチャーをミックスさせて、新たな醸造を続けてきました。

新たな酵母菌を使って実験中革新的もろみ蔵(ラボ)。7代目・泰さんが新たに立ち上げたもろみ蔵。発酵・熟成の研究や新種の酵母菌を利用して試験的な味噌づくりを行っている。ここで新たな酵母が生み出されるなど、まさに革新の現場だ

泰さんが家業を継いで間もなく、配合比率や発酵・熟成の期間、工程の試験を開始。酵母や乳酸菌の活動を活かすため、製品によっては塩分濃度を一般的な13%から7%まで減塩を行った。そんな中、近年泰さんが味噌づくりで注目するのは酵母。環境を変化させながら検証をしたところ、3年前に新種の酵母菌を発見。最適な環境を実現するため、熟成工程もホーロータンクを採用するなど、酵母の働きを最大化し、狙った風味を引き出すため発酵をデザインしているのだとか。

小倉さん:酵母はその地域によって特性があるので、それを生かして味噌づくりをするのは合理的。ヤマモさんの味噌には〝コンセプト”を感じます。

高橋さん:酵母の働きには可能性があります。狙いを定めてそこに対して検証していく。新種の酵母は華やかな香りを生み出すだけでなく、肉や魚を軟らかくする作用もある。また味噌由来の菌では珍しいことに無塩でも働くため、今後は加工食品など新たな商品や酒づくりも視野に入れています。

先祖が脈々と受け継いできたものを生かしながら、現当主のエッセンスを加えていくことこそが、革新的な味噌づくりなのだろう。

7代目・泰さんが新たに立ち上げたもろみ蔵(ラボ)。ここは、発酵・熟成の研究や新種の酵母菌を利用して
試験的な味噌づくりを行われており、新たな酵母が生み出されるなど、まさに革新の現場。

日本を代表する伝統的な調味料、味噌と醤油。ここを訪れれば、味噌や醤油が出来上がる工程を見て、実際に味わって、知ることができます。また、室町時代から伝わる岩崎の竜神伝説を背景とした日本庭園やアートギャラリー、カフェ、ショップなどでも楽しむことができます。

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ヤマモ味噌醤油醸造元
住所:秋田県湯沢市岩崎124
Tel:0183-73-2902
営業時間:9:00〜18:00、カフェ10:00〜16:30(L.O.)
定休日:不定休
https://salon-tea.jp

文=藤村実里 写真=野中 弥真人

 Discover Japan 2019年11月号『すごいぜ!発酵』の一部を抜粋して掲載しております。

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