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空海の教えに思いを馳せて
心が清まる香川・七ヶ所まいりへ〈後編〉

2022.9.27 PR
空海の教えに思いを馳せて<br>心が清まる香川・七ヶ所まいりへ〈後編〉

真言密教を日本に広めた弘法大師空海。来年は御誕生1250年と記念の節目にあたる。その祝賀気分に沸く香川県の善通寺をはじめ四国霊場七ヶ所を、高知県を拠点に活動するテキスタイルデザイナー・松田唯さんと巡礼した。

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善通寺に宿泊して“朝のお勤め”からスタート

翌日は、特別な朝が待っていた。清浄な空気が流れる御影堂での朝勤行に参加できるのだ。僧侶による法話後は戒壇めぐりで弘法大師の聖地を地下から参拝。光のない漆黒の空間を体感することで、自分を見つめ直せるのだという。
「法話では生きていく上で大切なことを教わりました。つい自分のことで必死になって忘れてしまいがちな、思いやりの心を仏教は伝えてくれているんですね」

特別な体験をした後は、四国霊場七ヶ所まいりへ。車でめぐれば1日で完結できる、いわばプチ遍路なのだが、中には険しい巡拝路も。「出釋迦寺」から奥の院「捨身ヶ嶽禅定」への道である。五山の中で一番高い我拝師山の頂上付近にあり、出釋迦寺境内から約1.4㎞。舗装道で、距離はわずかと感じたのも一瞬。
「最初は調子よく歩いていたのですが、あまりに坂道が急で……。もう歩けないと思ったとき、霊験水が湧く柳の水があり、冷たい水に癒されました。その後は道ばたの植物を見たり、木の下のひんやりとした空気を体感したりしながら、ゆっくりと歩いていけました」

奥の院で鐘をつき、旅を無事に過ごせたことへの感謝を伝え、寺を後にした。七ヶ所まいりで空海の足跡をたどり、仏さまとのご縁をいただいた松田さん。実生活ではこれから、どんなご縁を結んでいくのだろうか。

弘法大師が生まれた邸宅跡に建てられた御影堂で行われる朝勤行。5月〜9月は5時30分〜、10月〜4月は6時〜で、一般参拝も可能。御影堂奥殿の厨子内には秘仏・瞬目大師像が祀られ、2023年4月23日〜6月15日にご開帳が予定されている

自分を見つめて暗闇を歩く“戒壇めぐり”

御影堂の地下通路を、仏画が描かれた壁を頼りにめぐる「戒壇めぐり」。真下から空海生誕の聖地を参拝し、仏さまとのご縁を結ぶことができる。暗闇を進み自己を見つめ直す精神修養の場でもある。

標高481mの山を上る空海修業の場、出釋迦寺へ

我拝師山の山頂付近に位置する捨身ヶ嶽禅定。出釋迦寺の境内から急坂を50分ほど上った奥の院にあり、眼下には讃岐平野や瀬戸内海を一望できる

弘法大師空海自作の釈迦牟尼仏如来を本尊とし、衆生済度の根本道場として開創。弘法大師出家の原点として位置づけられる重要な霊跡で、石灯籠が並ぶ我拝師山を50分ほど上っていくと奥の院へ。

立ち寄りスポット

お遍路のお供はカッチカチのカタパン!
カタパンが名物の菓子店。石パンはひと口サイズ。口に含むとあまりの硬さに驚くが、次第にカリカリとした歯応えを楽しめるように。ショウガ砂糖がふわりと香り、ほんのりとした甘さが癖になる。石パンは200円(100g)。
熊岡菓子店
住所|香川県善通寺市善通寺町3-4-11
Tel|0877-62-2644
営業時間|9:00〜16:00
定休日|火曜、第3水曜(祝日の場合は営業)

腹ごしらえは具沢山うどん!
相撲好きの店主が営むうどん店。早朝から仕込むという麺は、モチモチとして弾力がある。イリコ、鰹、昆布で取った出汁が味わい深く、定番のかけうどん、かやくうどんが人気。
オハラうどん
住所|香川県善通寺市善通寺町919-2
Tel|0877-63-2981
営業時間|10:00〜15:00(売切次第終了)
定休日|木曜、第2・4水曜
https://ohara.adrgm.com

宿泊先はこちら

大きな湯船で愉しむ“大師の里湯温泉”
宿坊「いろは会館」には敷地内に湧き出した天然温泉に浸かれる大浴場がある。入浴時間は16時〜21時。食堂もあり、宿泊者が夕食や朝食の利用ができるほか、予約制で昼食に精進料理も提供。
宿坊「いろは会館」
Tel|0877-62-0111(9:00〜17:00)
客室数|和室50室
料金|1泊2食付1人8000円、朝食のみ1人6000円
※予約は電話のみで受付
www.zentsuji.com/shukubou

七ヶ所まいりの寺院DATA

寺名は仏の谷を意味。空海が修行に励んだ場
第71番札所 弥谷寺(いやだにじ)
蔵王権現のお告げにより、空海が五柄の剣と金銅の五鈷鈴(ごこれい)を納め、剣五山弥谷寺と名づけられる。阿弥陀三尊などがじかに刻まれた岩壁がある。
住所|香川県三豊市三野町大見乙70
Tel|0875-72-3446

寺名は空海が曼荼羅を安置供養したことに由来
第72番札所 曼荼羅寺(まんだらじ)

596年、空海の御先祖たる佐伯家の氏寺として建立され、四国霊場で最も古いといわれる。空海が唐から帰り伽監を建立して、曼荼羅寺と改称。
住所|香川県善通寺市吉原町1380-1
Tel|0877-63-0072

空海が師(釈迦)の姿を拝んだ地
第73番札所 出釋迦寺(しゅっしゃかじ)
幼少期の空海が身を投げた伝説が残される。我拝師山の頂上付近にある奥の院には、絶壁の上に、石の護摩壇と稚児大師像が祀られている。
住所|香川県善通寺市吉原町1091
Tel|0877-63-0073

山号の「医王山」は病を癒す薬師如来に由来
第74番札所 甲山寺(こうやまじ)
大師堂の左手にある岩窟には、空海が刻んだ毘沙門天が祀られている。ウサギと縁があることから、境内の各所にさまざまな表情をしたウサギが見られる。
住所|香川県善通寺市弘田町1765-1
Tel|0877-63-0074

山号の「五岳山」を南大門に掲げる
第75番札所 善通寺(ぜんつうじ)
空海誕生の地。高野山、京都東寺とともに大師の三大霊跡として信仰を集める。数々の堂宇が建ち並び、国宝や重要文化財などの寺宝も数多く所蔵。
住所|香川県善通寺市善通寺町3-3-1
Tel|0877-62-0111

訶利帝母尊が日本で最初に出現したと伝わる
第76番札所 金倉寺(こんぞうじ)
空海の甥・智証大師誕生の地。旧陸軍第11師団の初代団長として赴任した乃木将軍が住居としたことでも知られ、境内には乃木将軍妻返しの松がある。
住所|香川県善通寺市金蔵寺町1160
Tel|0877-62-0845

一時は四国随一の大伽藍で三大師を輩出
第77番札所 道隆寺(どうりゅうじ)
和気道隆が誤って乳母を射ったことから供養のため建立。空海が薬師如来を刻み本尊とする。眼病に霊験があると伝わる。
住所|香川県仲多度郡多度津町北鴨1-3-30
Tel|0877-32-3577

読了ライン

text: Hiroko Yokozawa photo: Maiko Fukui
2022年10月号「旅で、ととのう。」

 

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