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北海道《ウポポイ/民族共生象徴空間》
アイヌ民族の世界を学ぶ。

1|ウポポイとは

2022.8.15 PR
<small>北海道《ウポポイ/民族共生象徴空間》<br>アイヌ民族の世界を学ぶ。</small><br>1|ウポポイとは

アイヌとは、アイヌ語で「人間」を指す言葉だ。先住民族アイヌの暮らしは自然とともにあり、人間を支える自然をカムイ(神)として敬いながら共生してきた。北海道白老町(しらおいちょう)にある「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、五感を使ってその世界観や文化を体感し、学ぶことができる。

ポロト湖畔に広がるナショナルセンター

基本展示室の一画。樺太アイヌが霊送り儀礼で使う「クマつなぎ杭」と装飾を施された仔グマは、世界観や暮らしを伝える展示品のひとつ

新千歳空港から車で約40分、北海道初の国立博物館「国立アイヌ民族博物館」を有する「ウポポイ(民族共生象徴空間)」は、太平洋に面した自然豊かな白老町にある。

私たちの国の貴重な文化でありながら、歴史的に「未開の文化」、「滅びゆく文化」などの不当なレッテルを貼られ、存立の危機にあるアイヌ文化の復興・発展の拠点として2020年7月にオープン。アイヌ語で「(大勢で)歌うこと」を意味する「ウポポイ」の愛称の通り、独自の言語、文化、歴史を有する先住民族アイヌの尊厳を尊重するとともに、多様性を受け入れ、豊かな文化をもつ、活力ある社会の象徴となる空間として整備された。

かつてアイヌ民族は、本州北部や北海道、樺太、千島列島に住み、狩猟、漁撈、採集、農耕、周辺民族との交易などを生業とし、各地に「コタン」と呼ばれるコミュニティをつくって暮らしていた。ポロト湖畔に広がるウポポイの敷地には、展示や映像上映が中心の博物館のほかにも、アイヌ民族の昔のチセ(家屋)を再現し、生活空間やそこでの仕事が体感できる伝統的コタンのエリアや、国の重要無形民俗文化財に指定されている「アイヌ古式舞踊」などの伝統芸能や、「ムックリ(口琴)」と呼ばれる楽器の演奏などを上演する体験交流ホール、アイヌ民族に受け継がれてきた木彫や刺繍の体験ができる工房などが配置されており、五感を使ってアイヌ文化に触れることができる。

ウポポイの大きな特徴は、敷地内のサインがアイヌ語で書かれていること。第一言語をアイヌ語として最初に表示し、日本語や英語などで補完する。さらに、スタッフは「ポンレ」と呼ばれるアイヌ語のニックネームをもち、名札に記して身につける。こうした言語をはじめとし、衣服や道具、祭具に見られる美しいアイヌ文様、ユカラ(叙事詩)に代表される口承文芸などの文化は、アイヌ民族のアイデンティティであり、日本の豊かな多様性でもある。広大な空間を歩くだけでも、その空気を感じることができるのだ。

いま、社会の在り方や働き方、価値観など、あらゆる分野で常にダイバーシティ(多様性)が求められている。アイヌ民族には、人間を指す「アイヌ」に対して、「カムイ」と呼ばれる神の存在と信仰がある。カムイを敬い、カムイに感謝する「カムイノミ(神への祈り)」や、神々とともに楽しむ歌や踊りなどの世界観に触れることは、ダイバーシティの理解につながるに違いない。この夏、ぜひウポポイで体感し、学んでほしい。

アイヌ民族の視点で6つのテーマが語られる基本展示室
博物館は、ポロト湖畔の風景と一体化するよう高さを抑え、周辺の稜線とも調和させた
アクセスのよさがうれしい。空港を起点に、車でも特急列車でも約40分で白老町に着く

国立アイヌ民族博物館
敷地面積|1万.25㎡
建築面積|5145.64㎡
延床面積|8618.04㎡
構造|鉄骨造一部鉄骨鉄筋コンクリート造3階建
竣工|2020年4月
施工|竹中・田中特定建設工事共同企業体
設計|北海道開発局営繕部、久米設計

 


アイヌ民族の「多様性」が知れる!
 
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text: tomoko Honma photo: Hiroyuki Kudoh
2022年9月号「ワクワクさせるミュージアム!」

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