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謝花きっぱん店の冬瓜漬&千日のアイスぜんざい
南方写真師・垂見健吾厳選の
沖縄スイーツ案内|Part 3

2022.8.7
謝花きっぱん店の冬瓜漬&千日のアイスぜんざい<br><small>南方写真師・垂見健吾厳選の<br>沖縄スイーツ案内|Part 3</small>

写真師歴44年、沖縄在住33年のタルケンおじぃこと垂見健吾さんが、これまで撮影で訪ね歩いた先で出合ったすてきなスイーツを紹介。スイーツ天国沖縄へめんしぇーびり(いらっしゃい)!

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【謝花きっぱん店の冬瓜漬】
琉球王朝時代の高貴な味を唯一継ぐ、
宝石のような琥珀色の輝きを放つ銘菓

沖縄の特産野菜・冬瓜がスイーツに。冬瓜漬は糖分が高いため凍らない。保存料不使用のため、すぐに食べない場合は冷凍を。冷やして、爽快な食感を楽しむのもおすすめ

いまから300年以上前、中国の福州(ふくしゅう)から伝わった銘菓「きっぱん」と「冬瓜漬」。琉球王朝時代、冊封使(さっぽうし)をもてなすための「御冠船(うかんしん)料理」で供された歴史があり、かつては高位な人しか味わえなかったお菓子だ。庶民が口にできるようになったのは明治時代から。創業130年以上という「謝花(じゃはな)きっぱん店」がちょうど開業した頃と重なる。「4代目の祖母の時代は、我喜屋(がきや)商店という屋号で那覇市久米(くめ)に店を構えていました。その後、この場所に店を移し、現在の店名になったのは約50年前のことです」。そう教えてくれたのは、6代目の謝花ひさのさん。きっぱんと冬瓜漬は、とても手間暇かかるお菓子のため、現在製造しているのは、なんとこのお店のみ。ひさのさんは「このお菓子がなくなってほしくない」という想いで、2011年に嫁ぎ先のロンドンから家族とともに帰郷し、先代の父から家業を継いだ。

四角に成形した冬瓜漬から出る切り端も、お試し用として販売(700円)

その決意を応援しているというタルケンおじぃがおすすめするのは、「以前は、泡盛のアテとして楽しんだ」と語る冬瓜漬。冬瓜はウリ科の植物。沖縄では「しぶい」と呼ばれ、味噌煮などの料理にも用いられるメジャーな食材だ。冬瓜漬は、1日かけて皮とワタを取り除いたものをアク抜きし、翌日砂糖と冬瓜蜜で煮詰め、仕上げに砂糖をまぶすことで完成する。冬瓜蜜とは、煮詰める際にできるキャラメル状の糖蜜。何年も継ぎ足すことで琥珀色になり、その輝きが冬瓜を美しく彩る。スライスされたキラキラ光る冬瓜漬の断面を見て、ひさのさんは「宝石みたいよね」と目を輝かせた。ひと口噛むと、まず砂糖のシャキッとした食感、その後に果汁のようにジューシーな味わい。近年では、シークヮーサーや伊江島(いえじま)産ラム酒などを染み込ませた新しいフレーバーの冬瓜漬も販売。伝統を守りつつ、時代に合った感性を取り入れ、その魅力を増幅させていく。沖縄ならではの、文化を感じさせる銘菓だ。

プレーン3本とシークヮーサー味、ラム酒味が入った冬瓜漬セットはギフトとして重宝する(2200円)

<タルケンおじぃのおすすめポイント>
琉球王朝時代から受け継がれた歴史的な背景が素晴らしく、それを守り抜く老舗の努力に感服よぉ。冬瓜漬はブルーチーズをのせて食べたら、これが上等(とてもいい)! 甘いものが苦手な方も試してみてください!

謝花きっぱん店
住所|沖縄県那覇市松尾1-5-14
Tel|098-867-3687
営業時間|10:00~17:00
定休日|日曜

【千日のアイスぜんざい】
情緒あふれる老舗で創業から変わらぬ味を

看板メニューのアイスぜんざい(400円)。懐かしい雰囲気漂う店内には、先代の頃から通うお客も多く、ひ孫を連れて4世代にわたって訪れる家族もいるという

沖縄以外で「ぜんざい」といえば、小豆が入った温かいものを指すが、沖縄では、金時豆の甘煮にかき氷をのせたものをぜんざいという。金時豆を使うのは、戦後、米軍からの補給物資で金時豆が豊富に出回り、入手しやすかったことが発端。暑い沖縄でほっとひと息、甘味と涼をとるために絶好なスイーツ。このぜんざいが、いつ誕生したか定かではないが、沖縄ぜんざいの老舗「千日」で1960年代に撮影された写真のメニューに「冷しぜんざい」の文字が写っていることから、この頃には確かに存在していたということになる。

千日のはじまりは、’52年。現店主である金城茂人さんの父・新五郎さんと母・春子さんが前身となる「屋船食堂」をオープン。家庭料理、そしてアメリカ製の手動の氷削り機を使ってかき氷を提供する、食事と喫茶の店だった。その後、アイスクリーム工場「千日冷菓」を経て、現在の場所に千日を構えたのが’62年のことだという。

「先代の母は、とても人懐っこい人柄で、母を慕って訪れるお客さんも多かったようです。父は味の研究に熱心で、几帳面な性格だったので、レシピを細かく書き残していました。おかげで、私たちはいまもその味を受け継ぐことができているんです」。兄・茂人さんとお店を切り盛りしている、三女の小坂れい子さんがそう教えてくれた。

円錐状に高く盛られたふわふわの氷は、硬い氷とよく研がれた刃がなせる業。口に含んだ瞬間、きめ細やかな氷がすーっと舌の上で溶けていく。氷の下から顔を出すのは、6時間以上煮込んだ後、1日寝かせて味を馴染ませたという金時豆。ふっくら軟らかい食感とやさしい甘みで、ほおがゆるむ美味しさだ。千日は現在、茂人さん夫妻、れい子さん夫妻と息子の国慶(くによし)さん、長男嫁の敏子さん、家族みんなで支え合い営まれている。「これからも先代の味を守っていけるように」。家族の輪が築いた沖縄ぜんざいの物語は続いていく。

盛られた氷が崩れないようにビニール袋に入れてテイクアウト

<タルケンおじぃのおすすめポイント>
1980年頃にはじめて撮影に訪れて、まずかき氷をテイクアウトするという光景にでーじ(とても)びっくり! ふっくら煮た金時豆がきめ細かな氷と合わさって、ほどよい甘さになるから、ここのぜんざいは大好きさぁ~

千日
住所|沖縄県那覇市久米1-7-14
Tel|098-868-5387
営業時間|11:30~19:00(夏季は〜20:00)
定休日|月曜

 

うむくじ天ぷら&田芋シュー
 
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《南方写真師・垂見健吾厳選の沖縄スイーツ案内》
Part 1|珊瑚黒糖
Part 2|サーターアンダギー
Part 3|冬瓜漬&アイスぜんざい
Part 4|うむくじ天ぷら&田芋シュー
Part 5|タピオカ黒糖豆花&ハチミツ
Part 6|ドーナツ&くるみあんぱん

text: Norie Okabe photo: Kengo Tarumi
Discover Japan 2022年7月号「沖縄にときめく/約450年続いた琉球王国の秘密」

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