土香るのうむくじ天ぷら&マルメロの田芋シュー
南方写真師・垂見健吾厳選の
沖縄スイーツ案内|Part 4
写真師歴44年、沖縄在住33年のタルケンおじぃこと垂見健吾さんが、これまで撮影で訪ね歩いた先で出合ったすてきなスイーツを紹介。スイーツ天国沖縄へめんしぇーびり(いらっしゃい)!
【土香るのうむくじ天ぷら】
個性的なかたちで美味しさが増す
モチモチ&上品な甘さの郷土菓子
琉球王朝時代、宮廷料理の一品だった「うむくじ天ぷら」は、紅芋とうむくじ(芋くず)でつくる料理。蒸してすりつぶした紅芋に、うむくじ、塩、砂糖、水などを練り込み油で揚げる。現在では、お店で日常的に買える郷土菓子だが、そのかたちは実にさまざま。丸い団子状や平たい楕円形、細長い棒状のもの。そんな中、どれとも似ないユニークなかたちで楽しませてくれるのが、那覇市にある「土香る」。沖縄に古くから伝わる「食はクスイムン(薬になるもの)」という医食同源の教えの下、旬な地産食材を厳選し、その滋味を生かす調理にこだわるお店だ。
店主で料理人の村岡省吾さんは、香川県出身。地元の沖縄料理店で修業後、沖縄へ移住し、老舗沖縄料理店「うりずん」の姉妹店「ぱやお」で1年半ほどキャリアを積み、2013年に独立した。
「沖縄料理をわかったつもりになっていたなと反省した時期があって、それを機に古典的な郷土料理を掘り下げて基礎をつくり直そうと思いました。うむくじ天ぷらをつくるようになったのも、その一環でした」
こだわったのは食感。一部分だけでなく、全体的にサクサクモチモチ感を楽しめるようにしたい。それには揚げる面積を増やせばいい。ふと、ぱやおで働いていた時代に見た先輩の手技を思い出し、生地を軽くひねってみると、思い描いていた理想の食感が生まれた。
「かたちは歪だけど、楽しい食感と紅芋独自の深い甘みが最後のひと口まで続きます。沖縄の郷土料理はシンプルだけど奥深い。その魅力を感じていただけたらうれしいですね」
<タルケンおじぃのおすすめポイント>
もとは宮廷料理だけど、後の料理人さんたちの努力で、こんな美味しく再現していただいて、いっぺーにふぇーでーびる(本当にありがとう)! カリッとふわっと、この食感、たまりませんねぇ。おじぃは幸せやっさー!
土香る
住所|沖縄県那覇市松尾2-6-24 B1F
Tel|098-943-9460
営業時間|17:00~23:00(L.O.22:00)
定休日|水曜
【マルメロの田芋シュー】
金武町のきれいな湧き水で育った
田芋の魅力をスイーツで表現
沖縄の伝統野菜・田芋(ターンム)は、水田で栽培される里芋の一種。親芋の回りにたくさんの子芋を実らせることから、子孫繁栄の縁起物として行事料理に欠かせない食材である。田芋は、きれいな水のある環境で美味しく育つ。沖縄本島中部、金武町は、湧き水が豊富なため田芋の栽培が盛んに行われてきた。「地域の特産品をスイーツにしてほしい」。2005年、そんな町役場からの依頼を受けて、田芋スイーツの開発に乗り出したのが、金武町でケーキ店「マルメロ」を営む宮城康守さん、蘭子さん夫妻だ。田芋をどうアレンジしたら美味しいスイーツをつくれるのか。当初は迷いもあったが、まずは看板商品であるシュークリームに使ってみようと考えた。田芋はふかした状態で農家さんから届く。その皮をむき、すりつぶして、砂糖と一緒に煮込んであんをつくる。それを生クリームに混ぜ、シュー生地に入れる。近所の大人から子どもまで試食をお願いし、意見を聞きながら、約3カ月の試行錯誤を経て「田芋シュー」を完成させた。
悩んだのは、田芋の粒を大きいまま残すか、小さくすりつぶすか。「田芋が苦手という人にも食べてもらいたい。そう思って結果的に小さくすりつぶし、なめらかな食感に仕上げました」と蘭子さん。「そう、この少しわかるってくらいのターンムの食感がたまらないんだよね」とタルケンおじぃも納得の様子。17年前からは、三男の学さんも店のケーキ職人に。家族でアイデアを出し合い、ロールケーキやモンブランなど、新しい田芋スイーツも発信中だ。
<タルケンおじぃのおすすめポイント>
おじぃはシュークリームとターンムが大好きだから、中城(なかぐすく)パーキングエリアで見つけて即購入。田楽や揚げ物では食べてきたけど、スイーツでもこんなに美味しいとは! ターンムの素晴らしさを知ったよ~
マルメロ
住所|沖縄県国頭郡金武町金武146
Tel|098-968-2298
営業時間|10:00~20:30
定休日|日曜
Part 1|珊瑚黒糖
Part 2|サーターアンダギー
Part 3|冬瓜漬&アイスぜんざい
Part 4|うむくじ天ぷら&田芋シュー
Part 5|タピオカ黒糖豆花&ハチミツ
Part 6|ドーナツ&くるみあんぱん
text: Norie Okabe photo: Kengo Tarumi
Discover Japan 2022年7月号「沖縄にときめく/約450年続いた琉球王国の秘密」