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「ル・ゴロワフラノ」倉本聰が監修した富良野の一軒家レストラン
【後編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン

2021.2.18
「ル・ゴロワフラノ」倉本聰が監修した富良野の一軒家レストラン<br>【後編】<br><small>犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン</small>

どんな小さな店でも、どんな辺鄙な場所でも、『ホンモノ』であれば、必ず人は引き寄せられる。今月も強烈な一店に出合いました!今回は、北海道富良野市のレストラン「ル・ゴロワフラノ」について、前後編記事でご紹介します。

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畑と同じ空気の中で料理。
最短距離でしか出せない味

東京で営業しているときも、大塚シェフが仕入れる北海道の素材はピカ一だった。中でも山本さんの王様トマトは甘みと酸味が絶妙でパンチ力あふれるプチトマト。「サラダのアクセントには最適です。以前はこのトマトがうちの大切な要素でした。でもイタリア料理を意識するようになった現在はさまざまなタイプが必要なんです」。「黒木農園」のプチプヨは皮が柔らかくて使いやすいミニトマト。中玉も味が濃くて安定した味が特徴。「百姓や」のシシリアンルージュは加熱すると旨みが出るからソース向き。ニセコの「アムリタファーム」の塩トマトは食感はしっかりしているけれど優しい味。モッツァレラと合わせるカプレーゼには欠かせない。「今日はどれを使おうかな」といろいろ迷えることが何より贅沢。店に入る前、シェフは生産者のところに寄り、採れたてのトマトを厨房へ持ち帰る。そのトマトがランチにはもう皿の上にのっている。「鮮度が違うから味も違います。特に違うのは、寿都のキンキやヒラメ。いままで味わったことがない力強い味」。

大塚夫妻が北海道の生産者をたずね、一つひとつ納得した素材を使うようになって約20年。野菜ならできるだけ農薬を使わない、魚や肉など丁寧に扱う生産者たちにお願いして、東京に送ってもらってきた。そんな「北海道フレンチ」の看板を掲げ、生産者とともにより安全安心な素材を広める活動が評価され、’10年には第1回農林水産省料理マスターズブロンズ賞を受賞した。新しい店ではさらに新しい生産者を発掘することに力を入れたいという。以前は30件ほどだった生産者も、こちらに引っ越してから50近くに増えた。産地と生産者と向き合い、五感で感じる北海道をイタリアンで表現する。そのパワーは確実に東京の3倍にも、倍にもなっている。白樺林に緑の芝生。そんな風景の中白い壁、三角屋根の一軒家は、ユニークなオブジェが壁面の一部を覆っている。流線型の鉄製のリーフを幾重にも重ねた作品「ゴロワの鐘」と、庭に置かれた同じシリーズのオブジェ。どちらも世界的に有名な左官技能士・挾土秀平氏によるもの。店内の広く取った窓から300mほど先には、のんびり牧草を食む4頭の馬たちが見える。この風景があってこそ大塚流イタリアンが生まれた。風土が味を創るとはこのことだと思う。

緑だった自然も、これから白一色の冬になる。雪景色の中のレストランも別世界のような美しさだろう。そして「ル・ゴロワフラノ」は冬の味覚を蓄え、もっともっと美味しくなる。

北海道の旬を丸ごと味わう“おまかせコース”

東京で使っていた素材の95%は北海道産だったが、こちらに来てからはほぼ100%になった。「特に魚はまったく違う」と大塚シェフも驚くほど鮮度がよいものが届く。その素材で、最高の組み合わせを楽しめるのはおまかせコース。1万5000円。

カプレーゼ

南イタリアの代表的な前菜。ニセコの「アムリタファーム」の塩トマトと「楽恵舎」のモッツァレッラの、鮮やかな甘みと酸味、まろやかなフレッシュチーズが織りなすベストコンビ。この組み合わせは知識と経験を積んだ大塚シェフだからこそ。

サンマのテリーヌ

真ん中のストライプの部分が、厚岸のサンマにシソ、カブ、黄ピーマンを層にしたテリーヌ。手前の緑の丸い部分が青首大根。上は葉野菜と紫玉ネギなど。新鮮なサンマをテリーヌにして味わうことで魚の旨みが野菜を美味しくする。

帆立貝のグリルとラタトゥイユ

大塚シェフが北海道でまだまだ知らなかったクオリティの高い寿都のホタテ貝。グリルするときは、外側に焼き色をつけて、中はレアで仕上げると甘みが引き立つ。下にラタトゥイユを敷き、ホタテ貝、そしてバターソースを添える。

坊ちゃんカボチャのポタージュ

コースの中には必ずスープが出る。秋の名物はカボチャ。中をくり抜いて中身はポタージュに、外側はうつわに。甘いカボチャはトロリとしたポタージュにぴったり。冬はカブ、大根、ゴボウなどの根菜類が甘みを増す。夏はトウモロコシが人気抜群。

キンキの柚子風味焼き

羅臼のキンキもシェフが太鼓判を押すクオリティ。柚子のヴィネガーに漬け込んでから焼いたキンキにカブのピューレ、美瑛の「百姓や」のひも南蛮をフリットにして添える。柚子の香りとキンキの香ばしさが相性ぴったり。

星空の黒牛のヒレ肉のグリル
山ワサビソースとドフィノワ

“星空の黒牛”は標茶町で生産されている黒毛和牛種とホルスタイン種のハーフ。黒毛和牛のジューシーな甘みとホルスタイン種のもつ赤身の肉質のいいとこ取り。付け合わせは濃厚な生クリームが風味豊かなドフィノワ。

グレープフルーツのプリン

マダムの敬子さんが原宿時代に考えた「ル・ゴロワ」を代表するスペシャリテ。プリンの上にグレープフルーツを添えたほんのりビターな味。甘いものが苦手な人にも爽やかな味が人気。永遠のデザートと呼ばれる。

ル・ゴロワフラノに行くべき3つの理由

①おとぎの国のような一軒屋に薪窯が窯の周りを挾土秀平氏の笹をモチーフにしたオブジェが覆う。その大胆な作品は氏もはじめての挑戦だそう。

②窓の外に見える風景が、ザ・北海道。もともとゴルフ場だった場所にレストランを建てた。馬場の奥、遥か彼方に見えるのは中富良野の町並み。

③とにかく恵まれた素材の数々。朝、店に行く途中、生産者の元へ寄る。時には一緒に野菜を収穫することも。「百姓や」青木芳文さんと

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ル・ゴロワフラノ
住所|北海道富良野市中御料新富良野プリンスホテル
Tel|0167-22-1123
営業時間|12:00~13:30(L.O.)、17:30~20:30(L.O.)
定休日|月・火曜、11/12~20(メンテナンスクローズ)以降は通常踊り
料金|ランチ/3600円、5000円、ディナー/おまかせ1万円、1万5000円、プリフィクス7800
www.princehotels.co.jp/newfurano/restaurant/contents/legaulois

text:Yumiko Inukai,photo:Muneaki Maeda
Discover Japan 2018年12月号『目利きが惚れ込む 職人の逸品』


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