新作民藝運動の想いを伝える
「鳥取民藝」を贈る。
お菓子研究家・福田里香さんが、鳥取県で見つけた「愛でたいモノ」ギフトを紹介。民藝運動の父・柳宗悦の没後60年のいまだからこそ贈りたいモノとは?
鳥取民藝には
愛でたいモノがイッパイ!
柳宗悦が民藝運動を起こして約100年が経ち、今年は没後60年にあたります。また鳥取民藝の生みの親である吉田璋也が柳に出会ってからも約100年、さらに吉田が尽力した新作民藝運動がはじまって90年という節目の年が2021年です。
話は変わりますが、しゃぶしゃぶが民芸フードだということを御存じですか? いまや日本中が知る有名料理ですが、実は吉田が中国に軍医として渡ったときに食べた料理からヒントを得て考案し広めた料理といわれています。吉田が「鳥取民藝美術館」と「鳥取たくみ工芸店」の隣で「たくみ割烹店」をはじめたのが1962年。これを生活的美術館と呼びました。この年、3軒を連ねて営業がはじまりました。
民藝館で飾っているだけではいけない、使ってこそ真の民芸品だという思いから、はじめたことだそうです。たくみ割烹店は、山麓や東伯の地で育てた和牛に鳥取産の野菜や海産物、うつわも吉田が自ら復興に手を貸した地元の窯「牛ノ戸焼」を使うなど、すべて地元の素材にこだわるというスタイル。スローフードがはやるはるか前から、このような取り組みをしていたとは驚きです。
最後に書籍『吉田璋也 民芸のプロデューサー』(牧野出版)より言葉を抜粋します。
・材料は用途によって適切なものを吟味し、出来るだけ装飾を少なくすること。
・用途に忠実に、使いよいものをと心掛けること。
・仕事は誠実で丈夫であること。
・無理な技法はさけ、安全な技法を選び、伝来の熟練した技術を護ること。
・雅味を狙ったり、特殊なもの、 奇異なる形をこのまないこと。
・粗悪にならぬ限り、安価に創ること。
・繰り返し造って熟練すること。
以上、吉田の教えをいまも誠実に守り続けていること。それが鳥取民藝の大いなる魅力の源泉となっているのだと思います。
鳥取民藝を紹介します!
延興寺窯
吉田璋也に感銘を受けて作陶をはじめた山下清志さんと裕代さん親子が営む「延興寺窯」は、山陰を代表する民窯のひとつ。白や瑠璃色の無地シリーズは和洋アジアンを問わず料理映えがするうつわです。
宝月堂の生姜せんべい
吉田璋也プロデュースの鳥取銘菓。柳宗悦が来鳥した際、駄菓子屋で一枚売りしていたせんべいが旨いことを発見し、それを受けた吉田が地元の名店に製菓を頼み、箱をつくりと尽力した伝説の逸品。
型染 くじら
「型染 くじら」は鳥取市福部町久志羅に在住の型染め作家、くじらさんこと谷口恵美子さんの作品です。大胆な幾何学模様と色遣いもどこか穏やかで日常生活にしっくり馴染む、おおらかさが魅力。
牛ノ戸焼
新作民藝のプロデューサー吉田璋也の代表作といえば「牛ノ戸焼」の緑と黒の美しい染め分け皿。吉田の指導の下に誕生した用の美の名品は、時代を経ても誰かに贈りたくなる魅力があります。
山根窯
青谷町で作陶を続ける石原幸二さんの「山根窯」はスリップウェアのうつわでも人気。2色の釉薬を丸く掛け分けた色違いのお湯のみはこれぞ民藝と感じるおおらかさで、お祝いの贈り物にぴったり。
因州和紙
因州和紙は鳥取県東部の旧国名・因幡で生産される和紙の総称。一筆箋はいまやお土産の人気の定番品です。「山根名刺」は実は一筆箋にぴったり。サイズと紙質が2種類あるのもうれしい。
鳥取民藝を買うならココ!
鳥取の新作民藝の販売拠点として吉田璋也が創業。吉田プロデュースの生活道具や、国内外の工芸品なども揃う。
鳥取たくみ工芸店
住所|鳥取県鳥取市栄町651
Tel|0857-26-2367
営業時間|10:00〜18:00
定休日|水曜
text=Rika Fukuda photo=Wakana Baba
2021年12月号「ストーリーのある贈り物」