お香の香りのもと「香原料」の種類
植物や生物から採れる天然の素材
|日本の香りの素材

日本古来の香りであるお香には、線香や塗香、薫物などさまざまある。その芳香は、地球が長い時間をかけて育んだ香木や、生薬としても使われる草根木皮をはじめとする自然の恵みから生まれる。今回は、植物や生物から採れる天然の素材「香原料」をご紹介。
お香の香りのもと「香原料」とは?
香木とともに、お香の香りのもととなる香原料の多くは樹皮や樹液、実や根など植物由来のもの。非常に限られているが、麝香、龍涎香など動物由来のものもある。
代表的な香原料の種類
〈安息香〉

エゴノキ科のアンソクコウノキの幹に傷をつけ、そこから採取した樹液を乾燥させたもの。バニラのような甘みのある香り。
〈貝香)

巻き貝の殻口を閉じる蓋を乾燥させたもの。香りを長持ちさせる保香材として用いられる。清涼感のある磯のような香り。
〈桂皮)

別名・シナモン。クスノキ科の常緑樹の樹皮を乾燥させたものでスパイシーな香り。古代エジプトではミイラの保存に使われたとされる。
〈山奈)

ショウガ科バンウコンの根茎を輪切りにして乾燥させたもの。ショウガに似た爽やかで甘い香り。健胃薬としても使われる。
〈丁子)

別名・クローブ。フトモモ科の常緑樹のつぼみを乾燥させたもの。酸味や甘みを感じるスパイシーな香り。華やかさもある。
〈乳香)

カンラン科の常緑低木の樹液。西洋で広く使われる。柑橘様の爽やかで甘い香り。キリスト教では没薬(もつやく)とともに焚かれる。
〈龍脳)

フタバガキ科の常緑樹の樹液が結晶化したもの。書道用墨で膠(にかわ)の匂い隠しとして使われる。清涼感と清潔感のある香り。
line
text: Miyu Narita photo: Maiko Fukui
2025年5月号「世界を魅了するニッポンの香り」