俳優《恒松祐里》が聞香を体験。
演技や自分と向き合う時間に欠かせない香りとは?

表現力に定評のある俳優・ 恒松祐里さんが「星のや東京」で「今様香り合わせ」を体験。電子香炉を使い、伽羅、沈香、白檀、薫物の香りを聞き比べた。演技や自分と向き合う時間に欠かせない香りとは?
恒松祐里(つねまつ ゆり)
1998年生まれ、東京都出身。近年の出演作は『わたしの宝物』、『全裸監督シーズン2』、『おかえりモネ』など。現在、『ガンニバル』シーズン2がディズニープラスで独占配信中。映画『きさらぎ駅 Re:』が6月13日(金)から公開予定。
「自分の内側に香りが入ってくるようで
香りを“聞く”ということ はじめて実感しました」

「まるで凪のようです」と、白檀の香りを聞きながらそうつぶやいた俳優の恒松祐里さん。
「伽羅はリラックスできる木の香り。沈香はどこか懐かしいけれど爽やかで、酸味のある香りで印象に残りました。白檀は一番心が鎮まるし、薫物はスパイシーな料理みたいでお酒に合いそう」と、4種類の香りを表現。聞香体験は今回がはじめてながら、香りを“聞く”と言い表す意味が腑に落ちた様子。
「最初は聞くってどういうことなんだろうと思ったのですが、先生の所作をまねしていくうちにわかってきました。嗅ぐは自分から意欲的にする行為だけど、聞くというのは音が自然と耳に入ってくるように、呼吸とともに香りが身体にスーッと入って浸透していく感覚。燃やすと消えてしまう香木の声は心地よくて、温かみを感じました。ぜひ、また体験してみたいです」

子どもの頃から祖母が点ててくれた抹茶に親しみ、中学時代には茶道部に入っていたという恒松さん。茶道と香道の共通点にも気づいたそう。
「茶道はお客さまへ心を配り、一つひとつの動作にも意味があって、やればやるほど極められていくところが好きでした。それに水の音や抹茶を点てる音を聞いて、静けさに耳を傾ける楽しみがある。心が落ち着くという点も似ているように感じます」

普段から香水を愛用し、自分好みの香りを探しているとのこと。お気に入りはイチジクやザクロなど、みずみずしく青みがかった果実系の香り。
「あとはミモザの香りも。飼っていた猫が3月8日の国際女性デーに亡くなったので、象徴であるミモザのキャンドルを焚いて思い出したり」
また、ロケ先に香水を持ち歩き、香りの力に助けられることも。
「緊張するシーンのときに好きな香りを身につけたりします。香りを嗅ぐと我に返って、一瞬でもリラックスできますから。舞台や演じる役柄ごとに香水を替えている役者の方もいるので、私も挑戦してみたいです。好みから離れて役柄に合わせて香りを選ぶことで、役への入り込み方も変わりそうです」

自分の時間を大切にしている恒松さんは、家でアロマキャンドルやお香を焚きながら、趣味の編み物やアクセサリーづくりに没頭する時間が至福のひとときなのだそう。
「陶芸もやっていて、唇のかたちをしたお香立てをつくったこともあります。香りは記憶を呼び起こすなどさまざまな力がありますが、私にとっては心を落ち着かせるもの。自分をハッピーにしてくれる存在です」
line
text: Rie Ochi photo: Maiko Fukui hair & make-up: Asuka Fujio styling: Marie Takehisa
2025年5月号「世界を魅了するニッポンの香り」