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俳優《恒松祐里》が聞香を体験。
演技や自分と向き合う時間に欠かせない香りとは?

2025.5.27
俳優《恒松祐里》が聞香を体験。<br><small>演技や自分と向き合う時間に欠かせない香りとは?</small>

表現力に定評のある俳優・ 恒松祐里つねまつ ゆりさんが「星のや東京」で「今様香り合わせ」を体験。電子香炉を使い、伽羅、沈香、白檀、薫物の香りを聞き比べた。演技や自分と向き合う時間に欠かせない香りとは?

恒松祐里(つねまつ ゆり)
1998年生まれ、東京都出身。近年の出演作は『わたしの宝物』、『全裸監督シーズン2』、『おかえりモネ』など。現在、『ガンニバル』シーズン2がディズニープラスで独占配信中。映画『きさらぎ駅 Re:』が6月13日(金)から公開予定。

「自分の内側に香りが入ってくるようで
香りを“聞く”ということ はじめて実感しました」

「まるで凪のようです」と、白檀びゃくだんの香りを聞きながらそうつぶやいた俳優の恒松祐里さん。
伽羅きゃらはリラックスできる木の香り。沈香じんこうはどこか懐かしいけれど爽やかで、酸味のある香りで印象に残りました。白檀は一番心が鎮まるし、薫物たきものはスパイシーな料理みたいでお酒に合いそう」と、4種類の香りを表現。聞香体験は今回がはじめてながら、香りを“聞く”と言い表す意味が腑に落ちた様子。

「最初は聞くってどういうことなんだろうと思ったのですが、先生の所作をまねしていくうちにわかってきました。嗅ぐは自分から意欲的にする行為だけど、聞くというのは音が自然と耳に入ってくるように、呼吸とともに香りが身体にスーッと入って浸透していく感覚。燃やすと消えてしまう香木の声は心地よくて、温かみを感じました。ぜひ、また体験してみたいです」

「祖母の家でお線香を焚く機会はありましたが、香木の香りを聞くのははじめてです。木の香りはやはり落ち着きますね」と恒松さん

子どもの頃から祖母が点ててくれた抹茶に親しみ、中学時代には茶道部に入っていたという恒松さん。茶道と香道の共通点にも気づいたそう。
「茶道はお客さまへ心を配り、一つひとつの動作にも意味があって、やればやるほど極められていくところが好きでした。それに水の音や抹茶を点てる音を聞いて、静けさに耳を傾ける楽しみがある。心が落ち着くという点も似ているように感じます」

普段から香水を愛用し、自分好みの香りを探しているとのこと。お気に入りはイチジクやザクロなど、みずみずしく青みがかった果実系の香り。
「あとはミモザの香りも。飼っていた猫が3月8日の国際女性デーに亡くなったので、象徴であるミモザのキャンドルを焚いて思い出したり」

また、ロケ先に香水を持ち歩き、香りの力に助けられることも。
「緊張するシーンのときに好きな香りを身につけたりします。香りを嗅ぐと我に返って、一瞬でもリラックスできますから。舞台や演じる役柄ごとに香水を替えている役者の方もいるので、私も挑戦してみたいです。好みから離れて役柄に合わせて香りを選ぶことで、役への入り込み方も変わりそうです」

「電子香炉があれば家でも香木が聞けていいですね」と恒松さん

自分の時間を大切にしている恒松さんは、家でアロマキャンドルやお香を焚きながら、趣味の編み物やアクセサリーづくりに没頭する時間が至福のひとときなのだそう。
「陶芸もやっていて、唇のかたちをしたお香立てをつくったこともあります。香りは記憶を呼び起こすなどさまざまな力がありますが、私にとっては心を落ち着かせるもの。自分をハッピーにしてくれる存在です」

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text: Rie Ochi photo: Maiko Fukui hair & make-up: Asuka Fujio styling: Marie Takehisa
2025年5月号「世界を魅了するニッポンの香り」

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