【漫画】香りの歴史〈飛鳥～奈良時代①〉
香りの歴史は仏教が伝来したときにはじまりました

日本は1400年以上の歴史をもつ香り大国。インドから中国へ、そして朝鮮半島へと渡った仏教の教義とともに日本へ持ち込まれた香り。飛鳥～奈良時代では新たなる信仰を尊び、祈りの香り文化をもたらした。飛鳥～奈良時代の香り文化とは？

監修＝稲坂良弘（いなさか よしひろ）
「日本香堂ホールディングス」特別顧問、脚本家・演出家。
1575年に京都で創業の「香十」前代表。香の伝道師として知られ、『香と日本人』など著書や講演・講座も多数。

漫画で読み解く“香りの歴史”

インドに発祥したお香は
仏教文化として日本へ

日本最古の史書『日本書紀』には、595（推古3）年、淡路島に漂流した一本の流木を焚いたところ、類いまれなる芳香が一面に立ち上り、驚いた島民は流木を推古天皇に献上したと記されている。そして流木を稀有の至宝「沈香じんこう」だと教えたのは、推古天皇の摂政として天皇家による中央集権の世に導いた聖徳太子だったと記述が残っている。

このことから推古時代には仏教文化とともに、そこに内包されたお香がすでに根づいていたことがわかる。聖徳太子が流木を沈香だと見抜いたように、『日本書紀』に記された時期の半世紀ほど前から朝廷では、仏教のお香を用いていたと思われる。

3000年前にインドではじまったお香の文化は、やがて東西の国へとかたちを変えて広がっていく。西には液体の香油として、東には固体の香木として。

日本には、仏教伝来とともにお香が伝えられたといわれている。古代インドに生まれた仏教哲学は、古代中国に伝わり数百年にわたって一大文化体系へと磨かれる。そして朝鮮半島の百済へ渡り、百済の聖明王より日本の欽明天皇の元へと仏教とお香がもたらされた。

大陸からもたらされたのは、沈香や白檀の香木、医薬の原料となる漢方生薬。それらはベトナム・タイ・インドネシアなどの東南アジアの特定地域で産出されるものだ。

香木とは、芳香を放つ木のことではない。木が傷つくことでバクテリアが樹液に作用してつくられる芳香が物質化したもの。木のようでいて木ではない、自然や気候など東南アジアの風土が生んだ奇跡の産物は、日本に存在せず、だからこそ優美な香りに人々が強く惹きつけられたことは想像に難くない。

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〈飛鳥～奈良時代②〉
神聖な祈りの香りとは？
 
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text: Yukiko Mori　illustration: Takayuki Ino
2025年5月号「世界を魅了するニッポンの香り」