御座候の「御座候」
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は染色家・小田中耕一さんの型染め作品をパッケージに使用した、御座候の「御座候」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。8年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
平たい円筒型の薄皮の中には、熱々のあんこがたっぷり。このお菓子は地域ごとに多彩な名前で呼ばれています。少し異なる名前というレベルではなく、今川焼き、回転饅頭、大判焼き……と全然違うのでした。
兵庫県を中心に「御座候」 という名前でも呼ばれますが、これはお店の名前。御座候という社名と品名は〝お買い上げ賜り、ありがたく御座候〞という感謝の意からきています。赤あんと白あんがあり、どちらも絶妙な甘さで、ぺろりと2個は食べられる美味しさ。そして、保存料や日持ち向上剤は不使用です。
小田中耕一は、染色工芸家で民芸運動に深くかかわった芹沢銈介に師事した人で、お菓子好きには光原社のくるみクッキーの箱絵でもお馴染み。2016年に刷新した「御座候」の包装紙は、小田中の型染め作品です。
丸を基調とした図案は日本古来の餅、お茶、稲、太陽などと並んで菓子職人も描かれ、楽しくて目が離せません。大量印刷による廉価な紙でありながら、最新技術を駆使して細かな線の滲みまで再現していて圧巻。
御座候工場ショップ
住所|兵庫県姫路市阿保甲 611-1
Tel|079-282-2311
営業時間|10:00 ~ 17:00
定休日|火曜
http://www.gozasoro.co.jp/
text : Ricca Fukuda photo : Wakana Baba
2019年8月号 特集「120%夏旅。」