HOTEL

秋冬に訪れたい文豪も愛した温泉地3選。

2019.10.28
秋冬に訪れたい文豪も愛した温泉地3選。

志賀直哉、与謝野晶子、谷崎潤一郎、夏目漱石……。多くの文豪たちが愛し、古くから名湯として知られている温泉を厳選してご紹介。今では、その名は日本だけでなく世界中にも広がっているようだ。

①本とアートと、温泉と。
生まれ変わった城崎温泉へ

北は日本海、東は京都に面する兵庫県豊岡市の温泉街、城崎温泉。誰もが一度は耳にしたことのある、志賀直哉の短編『城の崎にて』の舞台です。但馬の豊かな山と海の幸が集う、古くから名高いこの温泉地は、志賀直哉をはじめ、多くの文化人たちが作品づくりのために訪れた地でもあります。

城崎温泉の歴史は古く、平安時代の書物にもその名が記録されるほど。 はるか1400年以上もの昔か ら日本人に親しまれてきた温泉は、 現在でも多くの観光客が訪れ、その歴史は変わらず紡がれています。

この街の楽しみ方といえば、外湯めぐり。古くから城崎温泉では、湯治に訪れた人々を街がもてなす慣習があり、この文化はいまも変わらず残っています。宿はあくまで居間。浴衣に着替えたら、温泉街の中心部を流れる大谿川(おおたにがわ)に沿って、そぞろ歩きが基本です。

②歴史は600万年以上!?
有馬温泉で古の時代にタイムスリップ!

有馬温泉の歴史は、なんと日本書紀にまで記録されている。泉源は大己貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)の神により発見され、7世紀前半に舒明天皇が滞在したことにより、その名は広く知られていったという。しかし、その後、度重なる災害や戦乱により、何度も壊滅状態に陥る。そんな有馬の悲劇を救ってきたのは、“有馬の三恩人”として知られる、僧行基、仁西、豊臣秀吉だった。彼らの強力なバックアップにより活気を取り戻した有馬温泉は、庶民から外国人にまで愛される、日本が誇る名湯としていまも世界を魅了している。

温泉大国、日本には多くの火山が点在するが、実は有馬がある近畿地方には火山がない。ではどうして温泉が湧くのか? なんとその理由はフィリピンに繋がっていた。フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む際に引き込まれた海水が、有馬で温泉となって噴出しているというのだ。海水が温泉となって地表に出てくるまで600万年以上。なんと長い時間がかかっていることだろう……。湯のルーツを知り入浴すると、また格別な気分を味わえるに違いない!

➂多くの文豪が愛した癒しの湯、伊香保温泉

榛名山中腹の標高約700m付近に位置する温泉地、伊香保温泉。この地には現在、茶褐色の「黄金の湯」と無色透明の「白銀の湯」が湧き出る。黄金の湯は、伊香保温泉を代表する湯で、肌当たりが柔らかく、多くの来訪者を癒してきた。明治から昭和初期にかけては、夏目漱石、土屋文明、与謝野晶子など多くの文人墨客が訪れている。また、情緒ある温泉場として小説や映画の場面によく登場し、中でも徳富蘆花と竹久夢二は伊香保を最も愛した人物として知られる。徳富蘆花は、『不如帰』の舞台に伊香保を選び、文中に、「湯良し、宿良し、眺望よし。私はすっかり伊香保に惚れた」と書いている。さまざまな文化人から愛された伊香保温泉は、芸術文化にも、大きく影響を与えた場所だといえる。

伊香保温泉を代表する湯、それが「黄金の湯」。伊香保に古くから湧出していた湯で、独特の茶褐色が特徴だ。源泉の温度は約42℃。湯は温泉引湯口の小間口を通り、各宿に届けられている。効能は神経痛や筋肉痛、傷の治りをよくするといわれている。湯はトロッとしていて刺激が少なく、肌当たりが柔らかで、関節痛や神経痛に効果的なので、療養や静養のために多くの人を癒してきた。身体を芯から温め、血行を促す効果もあるので、冷え症の人にもぜひおすすめしたい。

歴史上の著名人たちが愛した温泉地は、どんな景色を見せてくれるのだろう。彼らがおすすめする温泉地を巡る旅で、身体も心も癒されてみてはいかがだろう。

2017年11月30日発売『Discover Japan_TRAVEL ニッポンの名湯宿』

兵庫のオススメ記事

関連するテーマの人気記事