住吉屋の「へそもなか」
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は画家の横尾忠則氏が包装紙のデザインを行なった、住吉屋の「へそもなか」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。8年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
兵庫県西脇市は、東経135度線、北緯35度線が交差する日本列島の中心点「日本のおへそ」に位置する街です。このことを知れば、西脇の名物菓子が、へその意匠を施した住吉屋の「へそもなか」なのもうなずけます。おへそ型がかわいい最中皮の中には上品なあんと。注文を聞いてからあんを詰めるから、皮はパリパリです。
そして、西脇市が生んだ天才画家といえば、横尾忠則氏。後にアーティストとして確固たる地位を築く横尾氏ですが、スタートは日本デザインセンターなどにも席を置いたカリスマ商業デザイナーでした。そんな横尾氏の初デザインかも? といわれているのが、住吉屋の包装紙。いまから約70年前の1952年頃、高校生だった横尾氏が手掛けたデザインです。
鮮やかな緑地に、白い円で囲んだ茶色地の中に白抜きで「饅頭・餅」、「住吉屋・西脇蓬莱橋」などと文字を入れた意匠は、意外なことに民芸の影響が色濃い。私見ですが、円弧に接するように彫刻風の文字を配する意匠には、芹沢銈介や河井寬次郎、棟方志功を感じます。
住吉屋
住所|兵庫県西脇市西脇974-7
Tel|0795-22-3198
営業時間|9:00〜17:00
定休日|不定休
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2020年2月号 特集「世界に愛されるニッポンのホテル&名旅館」