FOOD

《Cliff Beer/クリフビール》
コリアンダーシード、パッションフルーツ……
沖縄食材を生かしたクラフトビール造り【後編】

2023.8.25
《Cliff Beer/クリフビール》<br><small>コリアンダーシード、パッションフルーツ……<br>沖縄食材を生かしたクラフトビール造り【後編】</small>

沖縄には、現在14カ所ほどのクラフトビール醸造所があるが沖縄産の副原料にこだわり、県内の生産者たちとのコラボレーションを大切にしている、Cliff Beerのものづくりの現場へ案内してもらった。

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ビール造りはすべて手作業。
飲む人の笑顔を思ってコツコツと

ビール造りは手作業。スタッフの屋宣亜耶乃さんは素材を原料にする作業と、完成したビールを出荷するまでを担当。山パ農園で仕入れたパッションフルーツを圧搾機にかけて果汁を搾る

いまでは県内はもちろん、全国の飲食店やグロサリー、デパートなど、あらゆるシーンで目にするCliff Beerだが、沖縄市の静かな住宅街に佇む店舗兼工房は、ビールを求めるお客で賑わう。那覇からバスを乗り次いで訪れる観光客もいるほどだ。
 
ショップに併設している工房の中は、むき出しになった管が垂れ下がり、まるで実験室のよう。ビールができる原理さえわかれば器具をつくるのはそれほど難しくはないというクリフさんは、その言葉通り、必要な器具をすべて自作した。ビールの製造から出荷までは手作業で、効率よく行われている。ビール造りをはじめたい人たちからも工房を見学したいという要望が多いという。
 
ビールはだいたい4週間から1カ月で完成するが、原料の素材の持ち味を最大限生かせるように、どの工程で原料を加えるかは重要なポイントだ。「ビールは香りを大切にしたい」と話すクリフさん。たとえば、パッションフルーツを使うビールは香りが飛ばないように発酵の後半に加えている。

ショップの奥にあるビールの醸造所で糖化作業中。麦芽を熱湯に入れてひたすら混ぜ続けると、でんぷんが分解されて糖に変わる。この後、ろ過や発酵、熟成などの工程へ進む。醸造機はクリフさんの手づくり
ビールを充填中。この後瓶の口を打栓
一枚一枚慎重にラベルを貼る。ラベルデザインはクリフさんが手掛ける

またクリフさんは原料のロスをなくしたいという思いも強い。役目を終えて本来なら捨ててしまう麦芽粕は、農薬や化学肥料を使わないバナナ農家である友人の畑の土づくりに生かしている。
 
立ち上げから5年、思い入れのある外人住宅の店舗だが、多いときは1日に300本以上出荷することもあり、さらに大きな拠点を求めて今年の9月頃には同市内に移転を予定している。こののどかな高台での営業もあと少しだ。

糖化を終えた麦芽粕は、有機農場「ボアのいる谷」へ。新たに菌を加えて1週間ほど乳酸発酵させると、甘酸っぱい香りと納豆のような粘りが出る。これをバナナの幹の根元へかけるとミミズが活発になり、美味しいバナナに育つ

限定シリーズ多数!
一期一会のCliff Beerラインアップ

Cliff Beerのスタイルは、ペールエール、ホワイトエール、IPA、ヴァイツェン、スタウト、セゾンなどさまざまで、これまでに造った20種類以上のビールはどれも作物と真摯に向き合う小さな生産者さんとのコラボから誕生したもの。
 
商品には必ずストーリーがあり、味をほうふつとさせるラベルのイラストもCliff Beerの魅力。ストーリーが先に浮かぶときもあれば素材からインスピレーションを受けることも。ラベルから味を想像して、全種類制覇したい!
 
下記の中で定番は、かなさんWHITE、DOSY COYOTE(ドージーコヨーテ)。定番だけど期間限定だったり、数量限定だったりと、完成したビールはどんどん出荷されていくので、ショップにもラインアップがすべて揃うことはなかなかないのだそう。お目当てのビールを見つけたら即購入がおすすめ。
 
沖縄にもたくさんのクラフトビール醸造所があるが、沖縄の恵みを存分に感じられるのはCliff Beerならでは。文化に根差したコミュニケーションが、ここにある。

かなさんWHITE(ホワイトエール)
沖縄の小麦、島麦かなさんの畑で麦わら帽子をかぶった女の子のラベル。フルーティでスパイスが利いた味。常温でまったり飲みたい美味しさ
 
価格|759円 
内容量|330㎖ 
アルコール度数|5.5% 
原材料|大麦麦芽(英国産)、小麦麦芽、小麦、カーブチー、オーツ麦、オレンジピール、ホップ、コリアンダーシード、ディルシード

PINEAPPLE GEEK(フルーツIPA)
パイナップルのプールに、パイナップルの浮き輪で浮かんでパイナップルジ
ュースを飲んでいるラベル。爽やかさとほどよい苦みがマッチ
 
価格|781円 
内容量|330㎖ 
アルコール度数|6.0% 
原材料|麦芽(英国産)、パイナップル、ホップ

WHISTLEY WILD(フレンチセゾン)
女の子がレモングラスで草笛を吹いている。レストラン「傳饗(でんきゅう)」の上江田崇シェフとのコラボ。ハーブが香るさっぱり爽やかな口当たり
 
価格|781円 
内容量|330㎖ 
アルコール度数|5.5% 
原材料|麦芽(ドイツ産)、レモングラス、ミント、ホップ

DOSY COYOTE(カラキIPA)
時空を超えて沖縄にやってきたアメリカのコヨーテが、カラキに酔いしれてドージー=うつらうつら。カラキ(沖縄シナモン)の優しい味わい
 
価格|759円 
内容量|330㎖ 
アルコール度数|6.0% 
原材料|麦芽(ドイツ、英国産)、ホップ、カラキ(沖縄シナモン)

UNCLE MANGO(ヴァイツェン)
シャンソン歌手のハスキーミャーオが、石垣島の叔父さんから送られてきたマンゴーがうれしくて歌っている。爽やかでフルーティな味わい
 
価格|792円 
内容量|330㎖ 
アルコール度数|5.0% 
原材料|麦芽(ドイツ産)、マンゴー(沖縄産)、オーツ麦、ホップ

文豪(ビターチョコレートスタウト)
耽美主義の作家は女性よりもバラを愛しているがゆえ、バラのために選んだ女性へ花を贈ろうとしているラベル。甘そうで甘くない黒ビール
 
価格|748円 
内容量|330㎖ 
アルコール度数|6.5% 
原材料|麦芽(英国産・ドイツ産)、ホップ、ココア

Passion Wizard(サワーエール)
楽しそうな山パ農園の福井さんがラベルに登場。コリアンダーシードがアクセントになったパッションフルーツの香りが爽やかなビール
 
価格|792円 
内容量|330㎖ 
アルコール度数|5.5% 
原材料|麦芽(ドイツ産)、パッションフルーツ、ホップ、塩、コリアンダーシード

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Cliff Beer
住所|沖縄県沖縄市比屋根6-18-1
Tel|098-953-7237
営業時間|12:00〜19:00 
定休日|月〜水曜、日曜
※ほか不定休、営業時間変更あり。詳しくはSNSを確認
https://cliffbeer.stores.jp

text: Kiyomi Gon photo: Tsunetaka Shimabukuro
Discover Japan 2023年7月号「感性を刺激するホテル/ローカルが愛する沖縄」

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