ホップとは何だ?ビールの基礎知識③
日本酒やワインのように嗜好性が高いビールは、醸造背景やビアスタイルなど、ポイントを知っていることでよりいっそう楽しめる。今回、ビールをさまざまな角度から紐解き、3回に分けて紹介する第3回目。味の特徴をつかんで運命の一本を見つけよう!
ホップって何?
ホップとはいわば、苦みとアロマをつかさどるハーブのこと。セイヨウカラハナソウの雌株にできる毬花で、冷涼な環境に適し、日本では岩手県の遠野市などで栽培されている。
ホップの歴史は古く、12世紀にはヨーロッパで使用されていたという。その後、ホップが歴史の表舞台に立つのは18世紀。高い防腐効果が認められるホップには、赤道を2回越えて船で輸送する必要があったインディア・ペールエール(以下IPA)に大量に使用された。IPAとは、当時、インドに居住した英国人のために造られたビールで、輸送中の劣化を防ぐためにホップはもちろん、殺菌効果を考えアルコール度数も高めに設定されていた。今日のビールで人気のスタイルであるIPAの味わいが、刺激的な苦みと高いアルコール度数で構成されるのは、このような歴史があるため。ホップの歴史をひも解くと、ビールの歴史が見えてくるのだ。
押さえるべきはこの3つ!《ホップの種類》
ホップの種類は主に3つ。苦みの演出に強いもの、華やかなアロマをもたらすものなど特徴が分かれる。煮沸の初期に投入し強めのビタリングを狙う場合や、最後にサッと入れて香りをまとわせる場合など、ホップ投入のタイミングも味わいのデザインに重要だ。
①ファインアロマホップ
苦みと香りが穏やかなホップ。ビールを優美な味わいに仕上げることができる。有名な品種は「ザーツ」。ピルスナーなどのラガータイプのビールで多数使用されている。
②アロマホップ
香りづけに使用される。中でも「カスケード」は、ビールにシトラス感をもたらすことで知られる。カスケードのおかげで米国のクラフトビールが生まれ、発展したとも。
③ビターホップ
苦みづけに適したホップ。α酸の数値が高い「ナゲット」は、はっきりとした苦みと深みのある香りをもたらす。
ビールへの影響が異なる!《ホップのカタチ》
ホップは、摘み取られたまま使用される場合と、加工して保存性を高めたペレットを使う場合がある。一般的に収穫されたばかりのものは、新鮮で香りが高い。ペレットはみずみずしさは失われるが、使い勝手はよい。形状を選択するのも醸造家の腕の見せどころだ。
①ペレット
一度ホップを粉末にしてから円筒状に加工したもの。保存が利き、運搬性も高いので一年中使用できる。フレッシュホップに比べ、香り成分は少なくなっている。
②ホールホップ
ホップの形状はそのままに、香りを保ちながらドライにしたもの。ペレットとフレッシュホップの中間的存在。収穫時に近い状態なので好んで愛用するブルワリーも多い。
③フレッシュホップ
採れたてのホップのこと。青々しい香りを放ち、この上なくフレッシュ。しかし水分量が多いため劣化しやすく、すぐに使用するか冷結しないとアロマを保つことができない。
文=瀬名清可(Weekend.) 写真=山北 茜、野中弥真人 イラスト=makomo
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