FOOD

香川県観音寺市
白栄堂の「観音寺」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》

2023.7.28
香川県観音寺市<br>白栄堂の「観音寺」<br><small>《福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は、香川県観音寺市・白栄堂の特製の黄身あんと洋風生地を合わせた焼菓子「観音寺」を紹介します。

福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。12年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

敷き紙と菓子の包み紙は和田邦坊の作。 観音寺の10個入り箱と栞。1300円。

「常々なぜか香川県には、民藝的な要素を感じるお菓子が多いと思っていたのですが、その理由が最近氷解しました。香川には明治から平成を生きた和田邦坊という、民藝の意義を取り入れた才人が、マルチクリエイターとして存在したのでした。

邦坊を特集した香川の地方誌『IKUNAS』によれば、地元では「香川のデザインをつくった男」として尊敬されているのだそう。また邦坊は1965(昭和40)年に開館した「讃岐民芸館」の初代館長に就任していますが、本館は讃岐の風土にこだわった独自のスタイルとなっていて、柳宗悦の民藝運動とは一線を画しているのが特徴です。

「白栄堂」は昭和30年代から邦坊と協働して、銘菓を世に出しました。「観音寺」もそのひとつ。包装資材から焼印に至るまで邦坊の美意識で統一された逸品です。特製の黄身あんと洋風生地を合わせた焼菓子は、やさしい風味で口に含むとほろりと解け、コーヒーにもよく合います。店内には、邦坊が手掛けた仕事の数々が展示されていて、見どころとなっています。

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箱の蓋も邦坊のデザイン。独特の色彩感覚で目を引く

白栄堂 柳町本店
住所|香川県観音寺市観音寺町甲1125-7
Tel|0875-25-3888
営業時間|9:00〜18:00
定休日|木曜
https://hakueido.jp

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
Discover Japan 2023年8月号「夏の聖地めぐり。」

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