FOOD

はち巻岡田/小料理屋
《粋に呑みたい江戸の酒》

2023.2.3
はち巻岡田/小料理屋<br><small>《粋に呑みたい江戸の酒》</small>

昔もいまも、酒は浮世の憂いを払い、心をゆるめるためにもいいものだ。そして酒は粋に呑みたいもの。東京・下町には、江戸の流れをくむ呑み方がある。酒場に通うマッキー牧元さん、江戸料理家のうすいはなこさんが愛する粋な店とは。

≪前の記事を読む

東京人が愛する銀座の小料理屋

1916(大正5)年に現在の銀座5丁目で創業。初代は深川の船大工の家に生まれ、食料品店の番頭から料理の道へ。髪が落ちないようにと常にしていた「はち巻」が屋号に定着した。江戸料理とは都市を建設する職人たちが肉体労働の後に食べるもので、岡田の強い味つけが好まれた。関東大震災で被災するもいち早く再興し、戦後は焼け跡に小屋を建てて料理を振る舞ったこの店を、東京の文士や政治家、経済界の重鎮らがこよなく愛した。
 
「吉田健一や山口瞳が大好きでしたね。東京でも数少ない、江戸の味を継ぐ店のひとつです」とマッキーさん。「岡田に来たら、揚げしんじょは絶対に食べます」とはうすいさん。
 
「生の芝海老をたたいて、真ん中をくぼませて揚げたもの。ウスターソースと醤油が半々のところにからしを落として。それがまた粋なんです」。
 
なるべく初代の味を壊さないよう、昔ながらの料理を続けていると主人の岡田幸造さんは言う。新橋の料亭での修業を終えて厨房に入ったのが36年前。2代目である父の仕事を見ながら岡田の味を身につけていった。以来、派手さとは無縁の地に足のついた料理を変わらずに出し続けている。そこに寄り添う酒は、菊正宗の樽酒のみ。理由を聞けば、「初代からそうしているので」と迷いがない。
 
かつて山口瞳が「食べなければ冬が来ない」と言ったあんこう鍋は、初代から伝わる冬の看板料理だ。一般的な味噌仕立てではなく、醤油ベースのきりりとした江戸前の味わい。近年、あんこう鍋が終わる時期に東京しゃもを使った軍鶏鍋をはじめた。新しく加わった料理のひとつだが、間違いなく岡田の味になっている。

「毅然とした格がある。
それでいて気取ってないのが
岡田に通う理由です」
マッキー牧元

粟麩田楽 990円
豆腐や大根に甘い味噌だれを付ける田楽こそ江戸の味。熱々をほお張るとカリッと香ばしく、中はふわり。赤味噌の自家製だれで
あんこう鍋 4840円
身、肝、エラ、皮などあんこうの7つ道具がたっぷり入った滋味深い味わい。締めの雑炊は身体に染み入る。11月末〜3月末
お造り 2750円
身の引き方や大きさが実にほどよいとマッキーさん。「走り」ではなく、美味しさがきちんとのった「旬」の魚で
揚げしんじょ 2200円
江戸前といえば芝海老。その芝海老と少しのタマネギだけでつくる岡田の名物料理。芝海老の旨みがのる冬は特におすすめ
岡田茶わん 990円
初代がすっぽん鍋からヒントを得てつくった一品。鶏のスープにネギとショウガをたっぷり。ご飯にかけて締めにするお客も

酒お品書き
【ビール】
瓶(キリン、サッポロ) 
小瓶600円、大瓶900円
 
【日本酒】
菊正宗 樽酒 1合900円
 
【ほか】
焼酎やウイスキーもあり

読了ライン

はち巻岡田
住所|東京都中央区銀座3-7-21
Tel|03-3561-0357
営業時間|17:00〜21:00
定休日|日曜、祝日

 

神田まつや/蕎麦
 
≫次の記事を読む

 

《粋に呑みたい江戸の酒》
1|シンスケ 湯島/居酒屋【前編】【後編】
2|どぜう ひら井 本所吾妻橋/どじょう
3|はち巻岡田/小料理屋
4|神田まつや/蕎麦
5|桜なべ中江/桜なべ

text: Yukie Masumoto photo: Kenji Itano
Discover Japan 2023年1月号「酒と肴のほろ酔い旅へ」

東京のオススメ記事

関連するテーマの人気記事