第66代「一条天皇」
|20人の天皇で読み解く日本史
126代目の天皇が誕生した2019年。今も昔も日本の歴史は天皇がつくってきたといっても過言ではありません。天皇に焦点を当ると、これまでとは違う日本の姿が見えてくるはず。今回は、摂関政治の最盛期を支えた一条天皇を紹介します。
第66代 一条天皇(いちじょうてんのう)
生没年|980–1011年
在位|986(7歳)–1011(32歳)年
父| 円融(えんゆう)天皇
母| 藤原詮子(ふじわらのせんし)
妻| 藤原定子(ふじわらのていし)、藤原彰子(ふじわらのしょうし)
貴族文化の最盛期は
摂関政治でもあった
一条天皇の治世は、王朝文化が最も華やかだった。皇后・定子の女官の一人に、『枕草子』を書いた清少納言がいることは、よく知られている。また、中宮・彰子の女官には『源氏物語』を書いた紫式部がいた。一条天皇自らも詩歌や器楽など芸術全般に優れた人物だった。これは、天皇が政治に携わらない時代であることも意味する。王朝文化の最盛期は、摂関政治の最盛期でもあるのだ。
一条天皇は7歳で即位したことから、祖父で右大臣の藤原兼家が摂政となり、政治を進める。11歳で元服し、兼家の孫である定子が入内、後に皇后となる。兼家が死去すると、後継者争いが勃発。藤原道長が娘の彰子を入内させ、力を掌握するようになる。
一条天皇の崩御後に見つかったメモには、「王が道理にかなう政治を試みると、邪悪な臣下が国を乱れさせる」などと書かれていたという。藤原家に翻弄された天皇をはじめ、この時代の天皇の本心がうかがえる。
Point1
貴族文化の最盛期
多くの芸術作品が生まれる
一条天皇の時代は教養あふれる女房(女官)たちが集まり『源氏物語』、『枕草子』など多くの文学作品が誕生。日本独自の美をもつ貴族文化の最盛期となる。一条天皇自身も芸術センスに優れていた。『後拾遺和歌集』には、一条天皇が定子の葬送の際につくった歌が収載されている。
Point2
猫が好き過ぎて愛猫に位を授けていた?
愛猫家で知られる一条天皇。猫に「命婦のおとど」という名前をつけ、位まで授けていたという。清少納言『枕草子』には、命婦のおとどに飛びかかった犬の翁丸に対し、一条天皇が「翁丸を捕らえて犬島へ流せ」と怒り、実際に翁丸が犬島に流されたというエピソードが残る。
Point3
天皇の一存で改元できる時代
平安時代は天皇の一存で改元できた時代。天皇が即位するときはもちろん、慶事、天災、疫病の流行などのタイミングで改元に踏み切った。一条も在位中7回改元している。
〈天皇ゆかりの地〉
天皇や貴族から庶民に至るまで
悩みや苦しみを取り払った陰陽師
「晴明神社」
平安時代中期の天文学者である安倍晴明を祀る神社。晴明は天文暦学の道を深く極め、霊術を身につけており、天文陰陽師博士として活躍。星の動きなどで宮殿の異変や吉凶を言い当てたことから、朝廷から信頼されていた。6代の天皇の側近として仕え、一条天皇の時代に死去。一条天皇の命により、晴明の屋敷跡に社殿が建てられた。
晴明神社
住所|京都府京都市上京区晴明町806
Tel|075-441-6460
www.seimeijinja.jp
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supervision: Hirofumi Yamamoto text: Akiko Yamamoto, Mimi Murota illustration: Minoru Tanibata
Discover Japan2019年6月号「天皇と元号から日本再入門」