熊本・甲佐町《パレット》
水とともにある暮らしを守る
交流観光への挑戦
|九州観光まちづくりAWARD2026 金賞(にぎわいづくり部門)
JR九州が手掛ける「九州観光まちづくりAWARD」が2026年も開催。過去最多の100組を超えるエントリーの中から、にぎわいづくり部門で金賞を受賞したのは「パレット」。川とともに育まれてきた町は、人口の減少や高齢化の課題に直面。立ち上がったのは、地元事業者。観光で人と仕事を呼び込み、地域の暮らしを未来へつなぐ挑戦がはじまっている。
line
地元の事業者が手を組み
人と仕事が循環する町に
町の中央を一級河川・緑川が流れる熊本県甲佐町。武将・加藤清正による治水工事によって豊かな水田が広がり、川とともに暮らしを育んできた。しかし近年は人口が1万人を下回り、高齢化率は約4割。地域を支えてきた商店や事業者も、人口減少という課題に直面していた。

この危機に立ち上がったのが、2018年に地元出身者らで設立した一般社団法人「パレット」だ。メンバーはガス会社やサッシ会社など、それぞれに本業をもつ事業者たち。町の一世帯一世帯が顧客である彼らにとって、人口減少は自らの仕事の未来に直結する深刻な問題だ。

解決に向けた取り組みのひとつが、400年の歴史があり、町の象徴でもある「甲佐町やな場」の再生だ。コロナ禍で休業した事業者から引き継ぎ、2022年に営業を再開。川にまたがる唯一無二の建物で鮎を味わえる店は、かつての賑わいを取り戻した。


さらに、日帰りでは経済効果が限られることから、泊まる理由づくりにも着眼。全国で分散型宿泊施設を展開する「NIPPONIA」と連携し、甲佐町で60年ぶりとなる宿が誕生した。さらに町や商工会、医療機関、銀行などとも協働し、空き家や歴史的遺産を活用しながら、レストランやキャンプ場、ローカルマガジンの発行など多彩な取り組みを展開。町に人と仕事が循環する仕組みを築いていった。

line
甲佐町の人口増に向けた
“つながる”まちづくりをスタート

目指すのは「観光地づくり」ではなく、「暮らしを守るための地域づくり」。宿泊客が地域行事に参加し、「来年も来ます」と約束を交わすなど、人と人との関係づくりも大切にしている。東京の広告代理店を経て、家業のガス会社を継ぐパレットの米原賢一さんは、「住んでみたい、あの人にまた会いたい、この町にかかわりたいと思う人を増やし、暮らしを守る方法を模索しています」と話す。

観光をきっかけに、人を町に呼び、泊まって、歩いて、店を利用し、地域の人と出会う。その結果、人と仕事、お金が町をめぐり、地域の事業が継続していく。伝統技術ディレクター・立川裕大さんは、「“幸せの生態系”をつくっていると強く感じました。川をまたいだ唯一無二の建築を生かすとよりいっそうすごいことになるのでは」と挑戦の背中を押す。
line


≫次の記事を読む
一般社団法人パレット
Mail|palette.kosa@gmail.com
https://palette-kosa.com
甲佐町やな場
住所|熊本県上益城郡甲佐町豊内19-1
Tel|096-234-0125
営業時間|11:00〜16:00(L.O.15:00)、17:00〜21:00(L.O.19:00)※夜のみ完全予約制
NIPPONIA 甲佐疏水の郷
住所|熊本県上益城郡甲佐町岩下82
Tel|096-234-8871
客室数|3室(全2棟)
IN|14:00 OUT|10:00
https://nipponiakosa.jp
01|「九州観光まちづくりAWARD2026」、結果発表!
02|佐賀・唐津市「ON THE CLIFF 宗 秀明」
03|宮崎・日南市「PAAK DESIGN」
04|福岡・大川市「庄分酢」
05|鹿児島・薩摩川内市「原田米店」
06|熊本・甲佐町「パレット」
07|宮崎・日向市「美々津プラザ」
08|最終ノミネート者の皆さん
09|「九州観光まちづくりAWARD2026」を振り返ろう
text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
2026年10月号「感性の刺激する場所へ。/九州」



































