《エレゾ エスプリ》
究極のジビエ料理の美味しさの理由
北海道の食肉料理人集団が手掛ける
命を学ぶジビエオーベルジュ ③
2022年10月、食肉料理人集団「エレゾ」が手掛けるオーベルジュ「エレゾ エスプリ」が北海道・豊頃町にオープンした。エゾシカやヒグマなどのジビエや、生産する三元豚や黒軍鶏などを素材に、至極のジビエ料理を提供。その美味しさとともに、エレゾの哲学を伝えている。
今回は、独自の仕組みを構築することで究極のジビエ料理を提供するエレゾの理念を体現する4つの部門を紹介。
美味しさの理由は “100%の追求”にありました
エレゾでは「料理人の考え」がすべての起点となっている。料理の美味しさやゲストの笑顔、そこから逆算し、独自のフードチェーンを構築した。つまり、狩猟や家畜の生産を行う「生産狩猟部門」、肉の旨み、香り、質感を最高レベルまで磨き上げる「枝肉熟成流通部門」、ウデ、モモ、内臓といった低需要部位を活用し、上質な加工製品へ昇華させる「シャルキュトリ製造部門」、オーベルジュ「エレゾ エスプリ」やビストロスタイルのレストラン「エレゾ ゲート」(東京・虎ノ門)のような直営店を運営する「レストラン部門」という4部門構成は、なるべくしてなった一貫生産管理体制といえよう。
「命に携わる以上、その命に感謝し、責任をもつ。だからどの部門でも100点を目指し、100点を積み重ねていくんです。命から料理までを清らかな一直線で結ぶように」
そう佐々木さんが話すように、獲物を仕留める段階から100点を目指す。そのためエレゾでは、ハンターに3つの条件を課している。「①首か頭を打ち抜くこと」。胴体を損傷すると血が回り、最良の食材にならないからだ。「②1時間半以内に、処理を行うエレゾのラボへ搬入すること」。これは迅速に血抜きや内臓の処理を行うことで、鮮度を保つため。「③動物に応じ、狩猟する月齢を定める」。月齢の指定は最良の肉質を求めた結果である。
「肉の味わいは品種、餌、環境で決まります。〝美味しい〟にはその根拠となる背景があるのです。十勝地方ではエゾシカ、ヒグマ、キジバトなどが捕れますが、山なのか平地なのか、どこに生息しているかによって、餌も筋繊維の発達具合も変わる。だから味わいに個性が生まれるんです」
家畜も、ジビエの考えを内包したスタイルで育てる。たとえば豚は山間傾斜地に放牧。筋繊維は旨みとなるため、傾斜を利用して筋肉をつけるのだ。さらに豚は栄養価の高い餌を与え、半年ほどで出荷するのが一般的だが、エレゾでは北海道十勝産の加熱した野菜や牧草を餌とし、1年半かけてゆっくり成長させる。そうすることで、風味豊かな旨みと、軟らかさの中に歯応えのある肉質をつくり出す。
「豊頃町は港町ですから、海風を受けた牧草はミネラルが豊富。牧草を食べる動物にもいい影響を与えています」
line
ジビエの余韻に浸るためのヴィラ
≫次の記事を読む
1 2 3 4
text: Nao Ohmori photo: Atsusi Yamahira
Discover Japan 2023年10月号「私を癒す15の旅。」