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渋谷パルコ《鈴木環のプロダクト》
ピジョンカップと干支のフェーブ展
思わず手に取りたくなる愛らしいフォルムデザイン

2025.12.13
渋谷パルコ《鈴木環のプロダクト》<br>ピジョンカップと干支のフェーブ展<br><small>思わず手に取りたくなる愛らしいフォルムデザイン</small>

一瞬にして、見る人の心をギュッとつかんでしまうピジョンカップとフェーブが、2025年も渋谷にやってくる。東京・渋谷パルコにて12月20日(土)~12月21日(日)の2日間、「鈴木 環 ピジョンカップと干支のフェーブ展」が開催される。鈴木環さんが作るプロダクトの愛らしいかたち、ホーローのようなつやっぽさがある白は、どのようにして生まれるのか。

※本展作品のオンライン販売はございません、店頭販売のみのお取り扱いです。

※個展開催期間中の入店について、一部時間帯に整理券が必要です。詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)、または公式オンラインショップをご確認ください。

鈴木さんが引き出す「粉引」の魅力

両手で包みたくなるフォルム
やや外側に反った繊細な口縁は中国の天目茶碗を、ボディのカーブは朝鮮半島の高麗青磁を参考にしたという。歳月を重ねる中でそのフォルムは少しずつ変化し、より高台がすぼまったスタイルになった

両手で包んだとき、鳩を抱いたように見える表情から名づけられた「ピジョンカップ」。福岡のうつわの店で開かれたカフェオレボウル展がきっかけで、気づけば30年はつくり続けているという鈴木環さんの代表作だ。

焼物の手法としては、素地全体に化粧土(白泥)を施し、その上に透明釉をかける「粉引」。でも土ものの質感を前面に出し、使い込むごとに貫入が染まってどんどん「育っていく」ことを愉しむ一般的な粉引のうつわとは、ずいぶん趣が異なる。

 「焼物は、釉垂れや柄杓の跡、貫入などの偶然性をよしとします。でも、僕はそれが苦手なんです。白いカップの貫入に、使ってすぐに茶渋がついちゃったら興ざめしてしまうなと……」

陶芸の里である笠間や益子にほど近い地で育ち、20代で伝統的な焼物をしっかり学んだ鈴木さん。でも惹かれるのはブリキのジョウロやラーメンのプラカップといった安っぽい工業製品。車や自転車は1960~1970年代のフランス車がたまらなく好きだそうだ。

「当時のフランス車をひと言で言えば、丸っこいんです。塗装が厚くていいかげんなところも大好き。僕の焼物にもそのニュアンスが出ているかもしれません」

これまでの経験が均一な作陶を支える
素地は瀬戸の土を用い、ひとつずつろく挽く。カップを左手に、ドロドロの化粧土が入った柄杓を右手に持ってかける。土が流れ落ちるスピードと呼吸を自在に調整できるのは長年の経験から

「高台に黒い指跡がついていたり、かすかなムラがあったりするのがいい。化粧土はいくつも試し、しばらくフランスのカオリン(原料)を使っていましたが、いまはニュージーランドのカオリン。より青みがかり、無機質なLEDのような白が気に入っています」

一点ずつろくろを挽いて成形し、化粧土は柄杓で流しかけるため、完成したピジョンカップはどれも微妙に表情が異なる。揺らぎがあったりゆがんだりすることで、工業製品をつくっているつもりでも手仕事の温もりが宿ると鈴木さん。

一点一点異なるかたちを味わう
ピジョンカップなどのうつわと同じ土、同じ製法でひとつずつ手づくりするフェーブ。化粧土も柄杓で一点ずつ丁寧にかけていく。翼をもつユニコーンの姿や表情がどれも違っていとおしい

ピジョンカップに加え、あまりにも人気で制作が追いつかないというのが干支のフェーブだ。フェーブはフランスで1月に食べる伝統菓子ガレット・デ・ロワに忍ばせる陶器製のミニチュアのこと。フェーブ入りのピースを食べると幸運に恵まれるとされる。

 「宮城県多賀城市の洋菓子店の依頼がきっかけです。もともと動物をつくるのが大好きで、馴染みはないけど愛嬌のある、たとえば深海魚みたいなものに惹かれます。あれこれつくっていたら干支のフェーブの人気が出て、毎年夏から少しずつつくっています」

12月の個展のためにユニコーンのフェーブも制作中。2026年の干支である午もお楽しみに。

 

暮らしに温かく寄り添う、鈴木 環のプロダクト
作品ラインアップ

価格|3520円 サイズ|Φ100×H96㎜ 重量|258g

ピジョン(白)L
化粧土をかける際の指跡や、素地の黒が透けて見える部分も白の美しさを際立たせる。カフェオレをたっぷり、また花器としても。

価格|2310円 サイズ|Φ63×H60㎜ 重量|81g

ピジョン(白)プチ
今回のラインアップで一番小さいサイズ。日本酒を愉しむ酒器として、珍味を盛るうつわとして。アクセサリー置きにもちょうどいい。

価格|3630円 サイズ|Φ97×H90㎜ 重量|214g

Mow ピジョン
丑年に向けてつくった牛のフェーブが誕生のきっかけ。まだらをつけた途端、カップを超えた存在感があるものになると鈴木さん。

価格|1540円 サイズ|W55×D43×H30㎜ 重量|17g 

フェーブ ユニコーン翼付き 黒
白いうつわと同じ土で成形。黒い呉須で色を塗り、透明な釉薬をかけて焼成する。つるっとした白とは違う、鋳物のような質感が出る。

価格|1万3200円 サイズ|W38×D125×H80㎜ 重量|271g

カバの燭台
カバ好きが高じた遊び心たっぷりの燭台。工事現場をイメージし、ヘルメットは、ひもも手撚り。針どめにはピンクの羽付きのカバが。

価格|1万2100円 サイズ|本体Φ85×H225(注ぎ口60㎜)、蓋Φ85×H30㎜ 重量|本体406g、蓋109g

ポット
ブリキのジョウロを思わせるフォルムが印象的なティーポット。ステンレスをたたいて自作するという持ち手がさらに味わい深い。

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鈴木 環 ピジョンカップと干支のフェーブ展
会期|12月20日(土)~21日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※個展開催期間中、整理券による入場規制あり。 
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
※本展作品のオンライン販売はございません、店頭販売のみのお取り扱いです。

text: Yukie Masumoto photo: Shiho Akiyama
2026年1月号「世界を魅了するローカルな酒」

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