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《水木しげるの妖怪 百鬼夜行展》
この夏、妖怪でひんやり。
1|妖怪図鑑 厳選16体

2022.8.1
<small>《水木しげるの妖怪 百鬼夜行展》</small><br> この夏、妖怪でひんやり。<br>1|妖怪図鑑 厳選16体

今夏、東京・六本木の展望台「東京シティビュー」に妖怪が大集結! 2022年7月8日(金)~9月4日(日)にかけて「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展」が開催。壮大な景色とともに、水木しげる氏の妖怪世界を存分に楽しめる。
まずは河童や砂かけ婆、座敷童子、アマビエなど、百鬼夜行展に集う16体の妖怪を図鑑形式でご紹介!

百鬼夜行展に集う妖怪を紹介!

895点の妖怪画を収録する水木しげる氏の著書『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』(講談社)の解説内容をもとに、16体の妖怪を「ご利益をもたらす妖怪」、「人を襲う妖怪」、「何もしない妖怪」、「悲哀に満ちた妖怪」、「知名度の高い妖怪」、「タヌキが化けた妖怪」、「水木氏が出合った妖怪」の7種に分けて紹介しよう。

百鬼夜行とは?
鬼をはじめ、さまざまな化け物が夜中に群れ、もしくは列をなして歩き回ること。その様子を描いた絵巻を『百鬼夜行絵巻』といい、京都・大徳寺真珠庵に伝わる絵巻が現存最古のものとされる。

〈ご利益をもたらす妖怪〉
コロナ禍で有名に!疫病退散の妖怪
「アマビエ」

江戸時代の肥後(現在の熊本)で、海中に毎夜、光るものが出現。役人が確認しに行くと、人魚のような姿で髪の毛が長く、顔に鳥のようなくちばしをもつ妖怪が現れた。自ら「アマビエ」と名乗ったその妖怪は、豊作を予言した上で、疫病が流行したら自身の写し絵を人々に見せるように伝えた。

〈人を襲う妖怪〉
100貫の重さで人を襲う!?
「児啼爺(こなきじじい)」

山奥から聞こえる泣き声を不思議に思って近づくと赤ん坊がおり、抱き上げるとしがみついて離れない。逃げようと思っても赤ん坊はどんどん重くなり、100貫(約375kg)もの重さに。抱き上げた者は動けなくなり、最後には命を落とす。「ごぎゃ啼き」とも呼ばれ、泣くと地震が起こるとも伝わる。

油断禁物!見掛けたら逃げるべし
「一反木綿(いったんもめん)」

夕闇に紛れ、どこからともなく飛んでくる一反(約10m)ほどの白い布。風にあおられて飛ぶ洗濯物のようだが、すーっと人間に近づくと、首に巻き付いたり、顔面を覆ったりして息の根を止める恐ろしい妖怪。鹿児島・大隅地方に現れ、権現山(ごんげんやま)付近では特に子どもたちから怖がられていたという。

首なし馬に乗る百鬼夜行の番人
「夜行さん(やぎょうさん)」

さまざまな妖怪が出歩く百鬼夜行日に、首なし馬に乗って現れるひとつ目の鬼。人間が出合ってしまうと蹴り殺されるが、草履を頭の上にのせ、地に伏していれば許されるという。徳島では、節分の夜に現れると伝わるほか、「夜行さん」が乗る首なし馬が独立した妖怪として現れる地方もある。

〈見た目は怖いけど何もしない妖怪〉
口が開いている間はよいことが起きない!?
「赤舌(あかした)」

名前の赤は淦(あか/船底にたまった水)、閼伽(あか/仏教で仏に供える水)に通じる。舌は禍(わざわい)の根、口は禍の門(かど)ともいい、赤が水を意味するならば、舌(口)は水門にあたる。つまり「赤舌」は禍をもたらす神で、禍の元である口が開いている限りは、凶事が続くことになる。

幻想的な海の妖怪
「しらみゆうれん」

どこからともなく突然、海面に現れる白いそうめんのようなもので、青光りしながらあっという間に巨大になり、舟の周りをすごいスピードで回る。人間に危害を及ぼすことはなく、ぐるぐると回った後はどこへともなく消えてしまう。水木氏は戦時中、南方の海で同じように光る白いものに遭遇したという。

笑い方がかわいい化け物
「傘化け(かさばけ)」

日本人は古来、100年を超えた道具には魂が宿り、人の心を惑わす付喪神(つくもがみ)になると考えた。ひとつ目で一本足、傘の姿をした「傘化け」もそのひとつ。舌を出して笑うと伝わる。水木氏は著書で、大風の日に人間を空に舞い上げる、鳥取・溝口の幽霊傘についても触れている。

〈知名度の高い妖怪〉
全国に生息! 言わずと知れた水の妖怪
「河童(かっぱ)」

地域によって名前が違ったり、甲羅の有無など姿に違いがあったりする。相撲好き、馬を川に引きずり込むいたずらは、全国的に共通する特徴。人間の尻子玉(想像上の内臓)を抜く悪い「河童」もおり、中部・関西では、川遊びに行く子どもに、仏壇の供え物のお下がりを食べさせて河童払いをするという。

近畿地方の神社では要注意
「砂かけ婆(すなかけばばあ)」

神社近くの人影のない森に潜み、通りかかる人に砂をかけて怖がらせる。姿を見た者はいない。出没するのは奈良や兵庫など、近畿地方に集中しているという。水木氏は著書で、神社でのお宮参りの帰り道、誰もいない藪の中から砂を浴びせられたという、京都市在住の読者のエピソードを紹介している。

いなくなると家が没落!?
「座敷童子(ざしきわらし)」

東北地方の家屋内に現れる、子どもの姿をした妖怪。上等から下等までさまざまな種類がいる。座敷童子のいる家は栄えると伝わるが、姿を見せることはめったにない。姿を現すのは立ち去るときともいわれ、見知らぬ子どもを家の中で見たと思ったら、あっという間に貧乏になったという話が多く残る。

〈悲哀に満ちた妖怪〉
後頭部にも口がある罪深い女の末路
「二口女(ふたくちおんな)」

下総(現在の千葉北部~茨城南西部)で昔、夫の先妻の子を餓死させた女が後頭部を負傷。傷口は唇のかたちに、飛び出た骨は歯になり、やがて口になった。その口は「謝れ、謝れ」とつぶやき、食べ物を与えないと痛んで苦しめるという。後ろの口で食べるときには、蛇に姿を変えた髪の先を箸代わりにする。

履物を粗末に扱うと…?
「化け草履(ばけぞうり)」

古来、100年を超えた道具には魂が宿って付喪神(つくもがみ)になると考えられてきた。化け草履もそのひとつ。履物を粗末にする家で毎晩、不気味な声が聞こえてくる。家人が正体を確かめようと、戸の隙間からのぞくと、いつも履物を投げ捨てている物置の隅に、化け草履が入っていったという。

〈タヌキが化けた妖怪〉
見るたびに姿を変える巨人
「大入道(おおにゅうどう)」

巨大な人のかたちをした化け物のうち、男のように見えるもの。2mほどから山より大きなものまで姿かたちはさまざま。地域によっては、タヌキのほかキツネやカワウソ、イタチが化けたものともされる。大きいものでは、滋賀の明神湖から現れ、伊吹山まで移動した「大入道」が知られている。

インパクト大!顔だけの巨大な妖怪
「大かむろ(おおかむろ)」

風の強い夜、雨戸のあたりで物音がする。何かと思って家人が障子を開けてみると、戸口いっぱいの巨大な顔が目の前に現れる。身体がなく、顔のみという独特の姿をした妖怪「大かむろ」は、タヌキが化けたものとされる。人間を驚かすことが目的であって悪意はなく、直接的な危害は加えない。

〈水木氏が出合った妖怪〉
行く手を阻む巨大な壁
「塗壁(ぬりかべ)」

夜道を歩いていたら突然、前に進めなくなる。それは「塗壁」のせいかもしれない。水木氏は、出征先の南方のジャングルでこの妖怪に遭遇。前が真っ暗になり、左右に回り込んでも進めない。だがひと休みすると、進むことができたという。著書では、気が動転したときに現れる妖怪のようだとしている。

水木氏が幼少期に遭遇した妖怪
「べとべとさん」

夜道を歩く人間の後ろを、“べとっ、べとっ”という足音を立ててついてくる妖怪。そんなときは道の端に寄り、「べとべとさん、先へお越し」と言えば足音がしなくなる。水木氏は小学生の頃「べとべとさん」に遭遇したが、近所の“のんのんばあ”から教えてもらったこの対処法でやり過ごしたという。

 


日本人にとって妖怪とは?
 
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text: Miyu Narita illustration:©mizukipro
2022年8月「美味しい夏へ出掛けよう!」

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