熊本のまちを新たに彩る《マドカイ》
町屋の雰囲気を残した、無人店舗サービス。
熊本県熊本市のデザイン事務所・白青社が手がける無人店舗サービス「マドカイ」は、空き店舗のショーウィンドウとECサイトを連動させ、リアルとオンラインをハイブリッド化することで、安価かつ効果的に商店街の賑わい創出を可能にする優れたサービスデザインを提供している。
白青社
熊本市にある、小さなディベロッパーを自称するデザイン事務所。企画・店舗デザイン・WEBデザイン・グラフィックデザインを全て内製で行うことが可能なため、商業計画に必要な全てを統一された世界観で実行することができる事が最大の強み。また、福岡市大名エリアでの商業施設専門ディベロッパー業務経験者も在籍していることから、まちづくり(エリア開発)の視点(実行ノウハウ)をもったエリアマネジメント・店舗開発・ブランディングが可能。
無人でありながらまちの賑わいを取り戻す。
熊本市・新町古町界隈の歴史的街並みを活かし歴史的建造物を利活用する熊本市実証実験「五感散歩」プロジェクトの一環として相談を受けたのが始まり。
「小さなデザインが集まる町」をコンセプトに、使われなくなった建物を利活用し、オンラインでの購買活動につなげることで、まちの発展に寄与する無人店舗をわずか1~2坪の面積で実現させた。これにより歴史的建物や奥に人が住んでいる建物などを、無人でありながらまちの賑わいを取り戻せる店舗として再生させる事が可能となる。
町屋の店先を活用した無人店舗
「マドカイ」
マドカイは、わずか奥行き90cmほどのディスプレイ特化型物販店をデザイン・施工し商品をディスプレイし、実際に商品を見ながら携帯カメラでQRコードを取り込むとオンラインショッピングができる新しい物販店舗。商品ページを開くと、動画や写真で使用例を確認することができる。その後は通常のオンラインショップと同じ決済手続きを完了させるだけとなっている。
まちとの調和を意識しつつ、ブランドの世界観を表現することに予算を振り切ることが可能で、施工費用も”いわゆる”普通の店舗に比べると比較にならないほど安いのも無人店舗「マドカイ」特徴。
デザインは、かつて炭漆喰壁の通りだった歴史的背景を意識。夜間は、まちの街灯の役割を果たすよう、人を魅了する照明を演出。照明は、タイマー管理にて照明のON /OFFを行い、まちに迷惑がかからないよう配慮している。
また、2021年度グッドデザイン賞を受賞。
<実験結果>
旧電気店をリノベーションした
手仕事の品を集めた工芸店「ヤマノテ」
ヤマノテは熊本県・山鹿(やまが)に生まれた地元で作られた「手のもの」と、旅先で出会った心惹かれる手仕事の品を集めている。工房「山鹿灯籠 中村制作所」も併設し、国の伝統工芸品指定の和紙工芸・山鹿灯籠を取り入れた暮らしの提案も行なっている。
店舗デザインは、歴史=炭漆喰をイメージし、グレーの壁色、職人=左官仕上げの模様壁、街灯=窓枠が夜になると浮かび上がるような照明を演出。
旧理髪店をリノベーションした、
創業140年以上の歴史ある老舗書店「長崎次郎書店」
長崎次郎書店は明治7年創業の熊本最古級の書店。かの文豪・森鷗外が『小倉日記』のなかで「書肆の主人長崎次郎を訪ふ」と記すなど、そのエピソードの数々は想像力を豊かに掻き立て、建物は建築家・保岡勝也の設計によるもので、『国登録有形文化財』に指定され、新町古町界隈のランドマーク。
建物は、かつて理髪店だったお店をリノベーション。店舗デザインは、あえてファサードには手を入れずにレトロな雰囲気を生かしている。
マドカイは実験後も中のお店を変えながら今も継続稼働中。
新町・古町の古き良き建物に溶け込む、無人店舗「マドカイ」で新感覚のお買い物を楽しんでみはいかが。
マドカイ
https://hakuseisha.jp/madkai-lp
《SDGs視点で読み解く》
空き家を活かして
持続可能なまちへと変化する熊本
人間、地球及び繁栄のための行動計画として、持続可能な開発目標として国際的に採択されたSDGs。17の目標のうちゴール11の「住み続けられるまちづくりを」を詳しく見てみると、熊本県は全国で16番目に「空き家率」が多いまちで、適切な管理が行われていない空き家が増えてしまうことで防災や衛生、景観などの観点から地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすことが懸念されていました。使われなくなった建物を利活用するマドカイのモデルは、まさに空き家問題を解決に導き、地方創生にもつながる素晴らしいアイデアですね!
熊本県では、平成28年度から、空き家の改修に補助金を交付する「熊本県空き家活用促進モデル事業」を実施しており、2021年度も継続中です。空き家を活かして持続可能なまちへと変化する熊本にこれからも注目です。