FOOD

ユネスコ食文化創造都市を目指す!
大分県臼杵市の「SDGsな取り組み」
番外編|いまに伝わる「質素倹約の心」とは

2021.8.20 PR
<small>ユネスコ食文化創造都市を目指す!</small><br>大分県臼杵市の「SDGsな取り組み」<br><small>番外編|いまに伝わる「質素倹約の心」とは</small>

大分県臼杵市には、江戸時代から続く郷土料理がある。それらは臼杵の人々の質素倹約の精神を象徴する。そもそもSDGsの発想が受け継がれてきた地だ。

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ローカルフードが日本の食をより豊かに!?

良質な水と温暖な気候、豊かな海に恵まれた臼杵は、独自の食文化が発展してきた。江戸時代初期から味噌・醤油の醸造業が起こり、末期には酒造りもはじまった。戦国時代に臼杵城を築いた大友宗麟はキリシタン大名としても知られるが、食においても南蛮文化を積極的に導入。臼杵の郷土料理「黄飯(おうはん)」は、宣教師らが持ち込んだパエリアが起源だともいわれている。

左)黄飯。クチナシの実で色づけしたご飯。江戸時代の飢饉のときに、赤飯の代わりとして食された。
中央)きらすまめし。臼杵の方言で「きらす」はおから、「まめし」はまぶす、の意。魚の中落ちや刺身の切れ端におからをまぶし、かさ増しした倹約料理。
右)かやく。豆腐や野菜、エソの身を炒め、煮込んだ、けんちん汁のようなもの。黄飯と一対で供されるものだった

臼杵には黄飯だけでなく、中落ちや、残りものの刺身をおからでまぶした「きらすまめし」、野菜など身近な素材のネタで豪華に見せる「茶台寿司」といった郷土料理がある。それらは江戸時代後期に起きた天保の大飢饉により生まれ、質素倹約に努めた臼杵の人々が代々受け継いできたもの。いまも食事処やスーパーの総菜コーナーで、市民に広く親しまれている。

このような背景の下、臼杵市は現在、ユネスコ創造都市ネットワークの食文化分野での加盟を目指したプロジェクトを実施している。食の多様性・持続性を高める取り組みは、SDGsが掲げる目標と合致し、持続可能な都市づくりにつながるためだ。伝統をつなぎ、未来の食の在り方を模索するローカルの姿には、日本の食をより豊かにするヒントが詰まっている。

新たな取り組みも続々!
SDGsなまち・臼杵

江戸時代から続く味噌醤油店でいただく
臼杵の郷土料理

1861年創業の「フンドーキン醤油」が営む食事処。一番人気はみそ汁御膳「花野」(1500円、要予約)。きらすまめしは生おからに、ショウガ、小ネギ、マグロの漬けを合わせ、カボスをしぼっていただく。餅米を加えた黄飯は根菜たっぷりのかやくとともに。ほかにシイタケ出汁の甘いタレのゴマ豆腐など、臼杵の味を堪能できる。

小手川商店
住所|大分県臼杵市臼杵浜町1
Tel|0972-62-3333
営業時間|11:00〜14:00、物販8:30〜17:00
定休日|なし

実は完熟も美味!
「黄カボス」に注目

カボスの発祥地とされる臼杵。グリーンの実が一般的だが、完熟して黄色くなると果汁が増えて、酸味もまろやかに。地元ではこの黄カボスを昔から好んで使ってきた。「かぼす工房」では、黄カボスの魅力を広めるべく、果汁を搾った「きかぼん」(864円)、黄カボスピール「黄柑棒」(200円)など手づくりの加工品を販売。

かぼす工房
住所|大分県臼杵市臼杵627
Tel|0972-63-5487
営業時間|10:00〜16:00
定休日|火曜

創業400年以上!
九州一の老舗味噌醤油店

1600年創業、12代目が暖簾をつなぐ。店で毎日手づくりする麹と、主に大分県産の素材でつくる味噌・醤油がベースの加工品や、みそソフトクリームなど、若い人たちが手に取りやすい品がたくさん。そのネーミングや商品カードのコメントにユーモアが光る。味噌は1㎏510円。生の米麹は1g1円30銭。

カニ醤油
住所|大分県臼杵市臼杵218
Tel|0972-63-1177
営業時間|9:00〜17:00
定休日|火曜

「久家本店」の酒粕を餌にした
「臼杵酔いブリ」この秋デビュー予定

日本酒と焼酎を造る「久家本店」。今年の造りから酒米や麦、芋などの原料を、すべて大分県産に切り替える。そして酒粕の有効利用も計画中。「臼杵海産」と協力し、臼杵産酒米「若水」を100%使用した特別純米・無濾過生原酒「USUKI」(720㎖1650円)の酒粕を、養殖ブリの餌に活用するという。

満寿屋
住所|大分県臼杵市大字臼杵413
Tel|0972-64-7122
営業時間|11:00〜16:30
定休日|月・火・水曜

有機ショウガ使用
モダンになった臼杵煎餅

小麦粉の煎餅にショウガ蜜をはけで塗って仕上げる臼杵煎餅。「後藤製菓」は創業100年を機に、SDGsを視野に入れ新たなスタートを切った。ショウガは地元産の有機ショウガに。これまで廃棄していた搾りかすはパウダー化し原料に再活用。モダンになった臼杵煎餅「百寿ひとひら」は、生姜、かぼす、きなこ味があり、各10枚入り810円。

後藤製菓
住所|大分県臼杵市深田118
Tel|0972-65-3555
営業時間|9:00〜16:30
定休日|なし

給食には「給食畑の野菜」を使用!

臼杵市では、小中学校での食育にも力を入れている。学校給食センターでは、野菜の50%は地元産で賄うことを目標に、可能な限り顔が見える野菜を使用している。それを可能にするのが、市内の50軒ほどの生産者の畑の一角で育つ「給食畑の野菜」だ。もともとは市が生産者たちに、孫や子どもが食べる野菜を給食用につくってほしい、と依頼したのがはじまり。子どもたちに配られる毎月の配膳表には、野菜ごとの生産者が紹介されている。

ユネスコ食文化創造都市を目指す!
大分県臼杵市がまちを挙げて取り組む「有機農業」とは?
前編 後編
番外編|いまに伝わる「質素倹約」の心

text: Yukie Masumoto   photo: Maiko Fukui
2021年9月号「SDGsのヒント、実はニッポン再発見でした。」


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