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《みんなの複合文化市庭 うだつ上がる》
築150年の古民家を改装し、豊かな暮らしの風景をつくる。

2021.9.7
《みんなの複合文化市庭 うだつ上がる》<br><small>築150年の古民家を改装し、豊かな暮らしの風景をつくる。</small>

徳島県美馬市脇町にある、江戸中期~昭和初期の建築が立ち並ぶ重要伝統的建造物群保存地区「うだつの町並み」。この場所に建つ「うだつ上がる」は、築150年の古民家を改装し、建築設計事務所・雑貨店・古着屋・書店・カフェなどがの機能を備えた複合施設だ。

立ち上げたのは、施設内に事務所を設ける「TTA+A高橋利明建築設計事務所」。代表を務める高橋利明さんは、設計の仕事を生業としながら、雑貨店店主や地域を盛り上げる。同施設では、多様な生き方や暮らし方を営む人々が集い、訪れ、使い手・伝え手・作り手それぞれが混じり合いながら、新たな気づきや文化を生み出していく。“うだつの上がる循環”を拡げていく「複合文化市庭 (いちば)うだつ上がる」とは……。

高橋利明(たかはし・としあき)
大阪府出身。新居建築研究所(徳島県)勤務を経て、2011年「TTA+A 高橋利明建築設計事務所」を徳島県にて開設。2015年『暮らしにそっとデザインをそえる』をコンセプトとした週末限定ストア「WEEKEND TAKAHASHI STORE」を展開。 2016年、福井県のクリエイティブユニットTSUGIとあたらしい買い物のカタチ「Lifescape」を共同展開。 2017年、TSUGIと徳島県阿波市のブランディング化を目指すプロジェクト「あわアワ~」を始動。同年、瀬戸内経済文化圏(徳島県代表)として参加。2018年、クラウドファンディングMOTION GALLERYのローカルパートナーとして四国を担う。2020年、みんなの複合文化市庭「うだつ上がる」オープン。2021年、うだつ上がる内にgraf awaのショールームがオープン。エリアマネージャー兼デザイナーとして参加。

“うだつが上がる” とは?

江戸時代、脇城の城下町として発展した脇町。船で藍を運ぶ集積地として古くから栄え、本瓦葺き(ほんかわらぶき)で漆喰塗りの「うだつ」が多く見られることから「うだつの町並み」と呼ばれてきた。現在は国の重要伝統的建造物群保存地区であり、江戸の情緒が漂う町並みを堪能できるのも魅力だ。

また「うだつ」とは、古い日本家屋において隣家との境目に立てられた、小屋根付きの袖壁のこと。当初は防火目的で造られていたが、徐々に装飾としての意味合いが強くなり、うだつ自体が裕福さの象徴とされ、商売で成功している裕福な家ほど「うだつ」が豪華になる傾向があった。

Cafe polestar

「うだつ上がる」を運営する高橋さんは大阪出身。建築の修行として徳島へ移住後、2001年に独立し、「豊かな暮らしの風景をつくる」をコンセプトに建築家として活躍する一方、雑貨店などを展開してきた。

はじめて設計したのは徳島県上勝町にある敷地の北側に上勝の山々がそびえているのが魅力のカフェ「Cafe polestar」。。中に入ると長いテーブルと、奥に延びていくテラスがまるで窓の向こうの自然に飛び込んでいくような設計にしたそうだ。

Lifescape

そして、同じく徳島県内にあるレンコン畑の広がる農業地域に建つ「HOUSE IN OASA」や、徳島市の築50年の二軒長屋をリノベーションした「雑貨と喫茶 nagaya.」。2015年には、「暮らしにそっとデザインをそえる」をコンセプトにした、週末限定の雑貨店「WEEKEND TAKAHASHI STORE」をスタート。2016年には、福井県で住宅完成見学会とポップアップストアを合体させた、新しい買い物のかたち「Lifescape」を開催するなど、徳島を拠点に幅広く活動してきた。

地域の魅力をひとつの素材としてとらえた、その場所でしか成立しない建築を手掛けている。誰もが「心地よい」と思える環境・気候・風土を生かしながら、そこに暮らす方の気持ちに寄りそう設計をモットーとし、新しい木造スタイルを提案する高橋さん。そんな高橋さんの新たな取り組み「うだつ上がる」を紹介しよう。

ヒト・モノ・仕事・文化が行き交う
“みんなの複合文化市庭”

1階には設計事務所をはじめ、書店、古着屋、カフェなどを展開。マイクロシアターも導入して、映画を見ることができる空間も

「うだつ上がる」は、徳島の観光スポットである「うだつの町並み」の中にあり、施設内には、書店やカフェ、古着屋、雑貨など、さまざまなジャンルのお店が展開。

雑貨店の商品は高橋さんが店主として自らセレクト。そのほかの店主は別で、さまざまな人が施設のスペースで自分の好きなことを通して、スモールスタートできる仕組みをつくり、運営している。

高橋さん 「うだつ上がる」を構えている脇町は、徳島の観光地となっています。建築家として、約450mもある重要伝統的建造物群保存地区や、その歴史に敬意を払いながら、地元の方や観光で訪れる方たちから、喜ばれる場所にしたいと想いが込められています。

本|Phil books
Phil booksは本をツールとして、人やコト、場所を紡いでいけたらいいなと思いからはじめた。現在は「うだつ上がる」内で小さな本屋を開いている。個人的好みでセレクトした新刊・古本・ZINEなど取り扱っている。
https://www.instagram.com/philbooks/

古着|used vintage gotoju
レギュラーからヴィンテージ古着、デザイナーズアーカイブに、はては90年代タレントショップグッズまで、“徳島にこんな古着屋が1軒くらいあってもいいんじゃない”とはじめた、カオスカルチャー古着店。
https://www.instagram.com/used_vintage_gotoju/
※本屋と古着屋は店主は兼業のため、休みの日のみ開店。

昼:喫茶間借り
夜:うだつあがらNight!!

昼:喫茶間借り/夜:うだつあがらNight!!
うだつ上がるに併設するシェアキッチン。誰かの「やってみたい」を応援する場所へ。現在では、地元の生産者や県外の飲食店、ふらっと店に立ち寄った人がこの場所を使用している。その人たちの大好きが、誰かにとっての大好きに繋がればという想いが込められている。地方だからないのではなく地方でも体験できる場所を目指しているそうだ。

建築家の目線でデザインやセレクトした雑貨や家具の販売も。また、2階にはコワーキングスペースができ、誰でも利用できる。ほかにも、ギャラリーやイベントで活用できるスペースも用意

暮らしの道具・家具|WEEKEND TAKAHASHI STORE
高橋さんが運営する『暮らしにそっとデザインをそえる』をコンセプトとしたライフスタイルストア。店主独自の視点で選んだ、暮らしの道具から家具までを販売する。
https://www.instagram.com/weekend_takahashi_store/

UDATSUAGARU GALLERY
うだつ上がる2階に併設するギャラリー。地元の方から、県外のアーティスト・クリエイターなど、誰もが使え、この場所に住みながら、多種多様な文化やデザインに実際に触れることで、暮らしの視野を拡げることを目指している。

graf awa
設計業務を主とする徳島オフィス「graf awa」を構える大阪発のクリエイティブユニット『graf』。graf awaオープンから3年が経ち、徳島県美馬市にある複合施設「-みんなの複合文化市庭-うだつ上がる」内2階にオフィスを移転、grafオリジナルの家具やプロダクトを扱うショールームが2021年9月1日(水)にオープン。

今回のオフィス、ショールームの設立は、graf代表の服部滋樹がディレクターを務める『瀬戸内経済文化圏』の活動がきっかけ。今後、高橋利明さんとともにこれからの徳島、 四国で新しい循環を生み、つながりを大切にしながら、次の時代へと進んでいく。
https://www.instagram.com/graf.awa/

かつては藍染めで栄えた伝統的建造物が建ち並ぶ、徳島県・脇町。土地や景色と向き合いながら新たな集いの場所を生み出すうだつの町並みを訪れてみてはいかがだろうか。

みんなの複合文化市庭 うだつ上がる
住所|徳島県美馬市脇町大字脇町156
電話|050-3433-8218
営業時間|11:00〜17:00
定休日|火・水曜、不定休
https://www.instagram.com/udatsu_agaru/

高橋利明建築設計事務所
http://takahashi-aa.net/

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