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徳島県神山町に約20年ぶりの高専誕生!
未来の起業家を育成する
「神山まるごと高専」【Part 2】

2023.3.28
<small>徳島県神山町に約20年ぶりの高専誕生!</small><br>未来の起業家を育成する<br>「神山まるごと高専」【Part 2】

類を見ない教育理念の高専で、実際に学べることとは? 具体的なカリキュラム、そして将来の可能性について、神山まるごと高専専門学校事務局長の松坂孝紀さんにうかがった。

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神山まるごと高専専門学校 事務局長
松坂孝紀さん

東京都出身。人材教育企業の関連会社で、数多くの組織変革プロジェクトを推進。2021年10月、事務局長就任にあたり家族で神山町に移住。野菜のお裾分けなど、地域の温かさに触れながら暮らしている

館内はガラス張りを多用した構造で閉塞感がなく、木の温もりも心地いい。床面積はおよそ2000㎡でオフィスからは、神山町の名物である枝垂れ桜が一望できる

多角的な学びを通して
新しい価値を生む人材へ

高専の修業年限は5年間。テクノロジー、デザイン、そして起業家精神がカリキュラムの三本柱となる。このうち、モノをつくる力を育むのがテクノロジーとデザイン。テクノロジーの科目では、プログラミングをはじめ電子工学、AⅠなどを体得し、数字にも強くなることを目指す。デザインの科目で養われるのは、自分のつくりたいモノをかたちにしてアウトプットする力。デッサンやウェブデザイン、建築や映像などの素養も幅広く吸収していく。言葉の教育に力を注いでいる点もユニーク。「SFプロトタイピング」という授業では、自分でSFのストーリーをつくってプレゼンテーションを行う。言語化の能力を高めながらイマジネーションを養う、興味深い試みだ。そして、新設校らしいチャレンジに満ちているのが起業家精神の科目。コミュニケーション力や課題解決力を高め、社会とかかわる力を身につける。
 
「高専は昔から課題解決型学習を取り入れていて、教育機関としてのポテンシャルが非常に高い。さらに大学受験という分断がなく、5年間ギュッと圧縮して社会に出るための学問に集中できる。ここでしか得られない学びを通して、のびのびと成長してほしい」と事務局長の松坂孝紀さんは語る。
 
授業以外にも学びの場は尽きない。課外活動と聞くと部活動をイメージするが、「神山まるごと高専」に現状、部活動は設置されていない。文化祭や体育祭、修学旅行といった、従来の学校では当たり前だった行事の予定もない。学生が希望するなら、自分たちで起案し、どうすれば実現できるか考え、資金を集めて実行することが期待されている。さらに、学校以外での経験も大きな柱に。町の人々と何かコラボレーションしたり新しいプロジェクトを立ち上げる。そんなことを自然とやりたくなる気風がこの町にはある。校名の「まるごと」は、学びの多彩さを表すとともに、神山の地がすべてキャンパスという思いも込められているのだ。
 
学費の実質無償化も大きなトピックだ。私立で最新設備での教育、しかも全寮制となると経済的負担が大きく、裕福な家の子どもだけの学校になってしまう。そこでスカラーシップパートナーなる制度をつくり、参画企業から拠出された基金を運用。その運用益を学費に充てるという仕組みだ。長期契約に基づく寄付スキームも併せて構築し、安定的な奨学金給付を目指す。
 
想定する卒業後の進路は、就職と大学への編入が3割ずつ、そして4割が起業。起業の選択肢が当たり前という視点で学生生活を送る「神山まるごと高専」にとって、決して非現実的なイメージではない。これまでにないコトを起こし、未来をつくる人材育成の取り組みが、いよいよスタートする。

正解のない時代を生き抜く力を身につける

<神山まるごと高専 学生卒業後の想定進路>
就職 30%
大学編入 30%
起業 40%

在学中から社会との接点が多いため、従来型の就活というよりスカウトや紹介スタイルでの就職が想定される。大学編入希望の場合は、海外留学も含めて個別の希望に合わせサポート。新卒で起業するという選択肢も、ここなら当たり前

読了ライン

神山町の杉材などを生かした、ナチュラルな風合いの大講義室。あえてデスクを設けず、起業家講師らともフランクな交流ができる場とした

 

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text: Aya Honjo photo: Ryusuke Honda
Discover Japan 2023年3月号「移住のチカラ!/移住マニュアル2023」

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