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サーキュラーエコノミーのパイオニア!徳島県上勝町の歩みに見るごみ問題解決のヒント

2021.9.22
サーキュラーエコノミーのパイオニア!徳島県上勝町の歩みに見るごみ問題解決のヒント

2003年、日本の自治体で初のゼロ・ウェイスト宣言を行った徳島県上勝町。その取り組みはどのように進められたのか。目標年の2020年を経た現在の展望とあわせて、上勝町役場企画環境課の菅 翠さんに伺いました。

野焼きからZW(ゼロ・ウェイスト)宣言まで
町民と歩んだ道のり

いまやゼロ・ウェイスト運動を象徴する町として、世界から注目を集める上勝町。しかし「かつては20年以上にわたって、公然とごみの野焼きが行われていました」と菅さんは語る。やがて環境問題への意識が高まり、代替の処理施設として小型焼却炉が導入され、分別数も22に増加。「町内を地区分けし、知恵を出し合って課題を解決する取り組みがすでにありました。町の問題を自分ごととして考える習慣が根づいており、賛同が得られやすかった」。反発も少なくはなかったが、説明を重ねて根気強く理解を求めたという。法律の改正とともに焼却炉も閉鎖となり、現在のゴミステーションの原型がつくられた。高齢者など持ち込みが難しい町民には運搬支援を行い、誰も取り残さない仕組みに。「ゴミステーションは町民の皆さんのコミュニケーションの場にもなっています。強制でなく、楽しくゼロ・ウェイストにチャレンジしてもらえたら」と菅さん。「2020年までにごみの焼却・埋め立て処分をなくす」ことを目標としていた上勝町。達成は叶わなかったものの、リサイクル率は80%にまで引き上げた。

「あと20%は、消費者だけでは限界があります。今後は、再資源化しやすい商品づくりを啓蒙していきたいですね」。「ごみをどう処理するか」から「そもそもごみを生み出さない」へ。次なるステージ「新ゼロ・ウェイスト宣言」に向け、上勝町の挑戦は続く。

あらためて、上勝町とは?

人口|1488人(高齢化比率 53.10%)
世帯数|767世帯
総面積|109.63㎡(88.3%が山林、内80%が杉等の人工林。平地は1.8%)
主産業|農業、林業など
特産物|柑橘類など
名所|樫原の棚田(重要文化的景観)など

上勝を知るキーワード

葉っぱビジネス
1986年より、日本料理などを美しく彩る“つまもの”として山々にある青もみじなどの葉を販売。いまや年商は2億円規模に成長。

いろどり産業
葉っぱビジネスを通して高齢者の生きがいをサポート。農業体験イベントなどで上勝町をアピールし、移住・就農促進にも取り組む。

「グッドライフアワード」最優秀賞受賞
2018年、第6回目となる環境省主催のグッドライフアワードにて、ゼロ・ウェイストアカデミーの取り組みが最優秀賞を受賞。

参照:上勝町ホームページ『ゼロ・ウェイストタウン計画』

ゼロ・ウェイストが新たな地域ブランドも生んでいます!

BIG EYE COMPANY/HOTEL WHY
ゼロ・ウェイストセンターに併設された、消費生活を見つめ直す体験型ホテル。
https://why-kamikatsu.jp

上勝開拓団/グランピング
標高400mの庵ノ谷開拓村で、快適なグランピングが楽しめる。BBQや展望薪風呂も。
http://kaitakudan.net

パンゲア/ゼロキャンプ
自然豊かなフィールドで楽しみながらゼロ・ウェイストを体感できるキッズ・キャンプ。
www.k-pangaea.com/zerocamp

かみかつ茅葺き学校/昔暮らし体験
上勝町の一番奥地にある集落・八重地。復元した茅葺き古民家でさまざまな体験を提供。
https://kayabukischool.localinfo.jp

いろどり/KINOF
杉の間伐材でできた木の布を、タオルやスポンジなどに加工したファブリックブランド。

https://kinof.jp

RDND/INOWプログラム
ゲストと地元の人々が一緒に暮らし、出会いの機会を得られるホームステイプログラム。
https://inowkamikatsu.com

上勝町へのアクセス
車|徳島阿波おどり空港から車で約1時間5分(約50㎞)、
徳島市からは車で約45分(約37㎞)
バス|徳島阿波おどり空港から徳島駅までリムジンバスで約30分。
徳島駅から徳島バスと町営バスを乗り継いで約90分
※町営バスはフリー乗降制。
(停留所以外でも路線上であればどこでも乗降可能)

上勝町有償ボランティアタクシー(要予約)
運賃|130円~/㎞(小型・大型、昼夜により変動)、
迎車300円、待機100円/10分
会費|300円/回 ※1回限りの利用
参考価格|徳島駅~上勝町 約5200円
問い合わせ|一般社団法人ひだまり(Tel 090-7627-4455)

text: Aya Honjo photo: Natsuko Ishikawa
Discover Japan 2021年9月号「SDGsのヒント、実はニッポン再発見でした。」

SDGs視点で解説!
「自然エネルギー立県とくしま推進戦略」を実行する徳島県

2021年8月現在
解説協力:サステナブル・ラボ株式会社

人間、地球及び繁栄のための行動計画として、持続可能な開発目標として国際的に採択されたSDGs。17の目標のうちゴール12の「つくる責任、つかう責任」に関わる「エネルギー資本の地産地消の度合い」に注目すると、徳島県は全国4位。上勝町のゼロ・ウェイストの取り組みに加えて、徳島県全体においてはエネルギーという目に見えない資源の循環も促進されています。

地域が生み出したエネルギーを地域内で消費することは「エネルギーの地産地消」につながり、地域内での資金循環や新たな雇用の創出などによる経済の活性化が期待されます。

徳島県は2020年度の目標値として掲げていた「自然エネルギーによる電力自給率25%」を前倒しで達成するなど、着実に成果を上げています。さらに2030年までに「県内の自然エネルギーによる電力自給率50%」を目指す「自然エネルギー立県とくしま推進戦略」を実行中。今後も徳島県、そして上勝町の動きに注目です。

詳しいデータはこちら

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