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ととのえ親方”松尾大さん編
《私たち、発酵で健康になりました》
“味噌汁で身体をリセットし、ととのえる”

2021.7.13
ととのえ親方”松尾大さん編<br>《私たち、発酵で健康になりました》<br>“味噌汁で身体をリセットし、ととのえる”

古来より、日本の食文化の中心にある発酵食品。全国各地でさまざまな特色を放ち、そのバリエーションや文化としての根付きかたを見ても、日本は発酵の国と言っても過言ではありません。そんな発酵食品の魅力をご紹介します。

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松尾 大(まつお・だい)
1976年、北海道生まれ。福祉施設やフィットネスクラブを経営しながら、世界各地のサウナを渡り歩くプロサウナー。サウナブームの火つけ役の一人として知られ、サウナに関する執筆、メディア出演、サウナ室のプロデュースなどを手掛ける、通称「ととのえ親方」

身体をニュートラルな状態に
元気とは気を元に戻すこと

家でごはんを食べるときは、必ず味噌汁を飲むという松尾大さん。Tシャツとサウナハットは、2017年に立ち上げたサウナーによるサウナーのための専門ブランド「TTNE PRO SAUNNER」のオリジナル商品だ

「仕事に追われたり、外食が続いたりして、体調がいまひとつ……と感じるときには、食事を味噌汁とおにぎりだけにして、味噌汁で身体をリセットしています」

こう話すのは、サウナブームの火つけ役でプロサウナーの松尾大さん。住まいのある札幌を訪れる経営者や著名人をサウナへと案内し、心身をととのう状態に導いてきたことから、“ととのえ親方”の愛称で知られている。

いまやサウナ用語の枠を越えて広く使われている「ととのう」だが、元はサウナで得られる深いリラックス状態や、すっきりとした感覚のことを指す。「ととのう感覚は、解放感、多幸感、恍惚感、そして再起動(リブート)などといった言葉で表現されます。しかし、実は、サウナは心身をパワーアップするためのものではないんです。なんらかの理由でマイナスに傾いていた身体や心を元に戻す、ニュートラルな状態にもっていくのがサウナです」と松尾さんは解説する。

そんな松尾さんが、サウナのほかに取り入れている「ととのう」方法が味噌汁を飲むことなのだ。

東京をはじめとし、日本全国や海外を仕事で飛び回る松尾さんは、外食が続くことも多い。そんなとき、自宅に帰って妻がつくった味噌汁を食べると、お腹がととのった状態に戻るという。「クリームスープやトムヤムクンも美味しいですが、味噌汁ほど胃腸に負担感がなく、疲れないスープはありません。どんな具材と合わせても包み込んでくれる懐の深さも魅力です」。

サウナー歴20年以上の松尾さんがさまざまな方法を試してみた結果、より「ととのう」状態をつくるサウナの入り方がある。全体を10だとすると、サウナ4、水風呂1、休憩5の割合で繰り返すのがベストだそう。そのポイントは休憩だ。サウナや水風呂では、心身が活動的になる交感神経が優位の状態となるが、休憩時には穏やかさをもたらす副交感神経が前面に立つ。つまり休憩しないと、心身はずっと活動的な状態だ。松尾さんは「たまにサウナと水風呂だけを行ったり来たりしている方がいますが、もったいないです。元気とは『気を元にする』と書きます。ぜひサウナ→水風呂→休憩で、ニュートラルな心身の状態を手に入れてください」と笑顔でアドバイスする。

“ととのう”ためには、発酵もサウナも「寝かせる」ことが大事なのだろう。

サウナや発酵食品の力で
「美味しく発酵」した人に

もろみ味噌とチーズがお気に入りの酒のつまみ。料理を盛ったうつわは、備前焼作家の伊勢崎紳さんの指南を受けて、松尾さんがつくった作品だ

松尾さんの本拠地である北海道は、発酵食品の宝庫だ。味噌や醤油、酢、みりん、日本酒など日本を代表する発酵食品のほか、欧米など本場の産地に負けない味わいの北海道産チーズやワインもつくられている。

「このチーズは僕のお気に入りです。北海道産の生乳を100%使って、イタリア人のチーズ職人がつくっているのですが、近頃人気が高まっている北海道のワインと合わせると、永遠に食べ続けられちゃいます(笑)」

チーズをカットしながらこう話す松尾さんが、プロサウナーとしての活動をはじめたのは2016年のこと。サウナ発祥の地であるフィンランドなど北欧のサウナをめぐる旅をきっかけに、日本のサウナの魅力や課題に気づいたという。

いままでに世界40カ国へのサウナ旅を続けるほか、’17年にはサウナーのための専門ブランドを立ち上げ、’19年2月にはサウナ好きな友人医師らと「日本サウナ学会」を設立。サウナの効能を科学的に解き明かす活動にも取り組んできた。さらに、近年は北海道内外のホテルや旅館に、サウナを取り入れるプロデュース事業も手掛ける。

「これまでどちらかというと、おじさんのイメージが強かったサウナのイメージをチェンジしたくて活動してきました。おかげさまでこの5年間で、サウナでととのえることで頭のひらめきや斬新な発想が得られ、マインドフルネスな思考にもつながることが広まってきたと思います」と振り返る。

家にいるときは毎日飲んでいる味噌汁。好きな具材は豆腐、わかめ、油揚げだ。酒の〆にそうめんを入れたソーメン味噌汁を食べることも

そんな松尾さんは「発酵と腐敗の違いは、微生物が人間にとってよい方向に働くか、悪い影響を与えるか、だけで紙一重なのがおもしろい」と考えている。たとえば、キュウリをぬか床で寝かせたら発酵の力で美味しい漬け物になるけれど、その辺に放置したら腐ってカビが生えてしまう──。

「これって人間も同じだと思います。人の文句ばかり言ったり、うまくいかないことを人のせいにしたり……、思考が“腐りかけている”ことがありますよね。そんなときこそ、自分をニュートラルな状態にリセットすることが必要です。サウナや発酵食品の力を借りて心身をととのえることで、美味しく“発酵した人”になりたいですね」と明るく語る松尾さん。

前向きなオーラに満ちているのは、きっと上手にととのえているからに違いない。

ととのえ親方の健康を支える
発酵食のレパートリー

①北海道穣(みのり)味噌(福山醸造)
②澤屋まつもと 守破離 山田錦(松本酒造)
③上㐂元純米吟醸 Jokigen Napa Valley カルフォルニアワイン樽(酒田酒造)
④グラナ・ディ・エゾ GRANA DI EZO(ファットリアビオ北海道)
⑤もろみ味噌で食べるキュウリとセロリ/鰹節、醤油、クリームチーズを和えたゴーヤ

text: Yukie Masumoto  photo: Kiyono Hattori
Discover Japan 2021年7月号「ととのう発酵。」


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