FOOD

ロバート・キャンベルさん編
《私たち、発酵で健康になりました》
“日本は発酵の国だと再認識させられる”

2021.7.13
ロバート・キャンベルさん編<br>《私たち、発酵で健康になりました》<br>“日本は発酵の国だと再認識させられる”

古来より、日本の食文化の中心にある発酵食品。全国各地でさまざまな特色を放ち、そのバリエーションや文化としての根付きかたを見ても、日本は発酵の国と言っても過言ではありません。そんな発酵食品の魅力をご紹介します。

ロバート・キャンベル
ニューヨーク市生まれ。早稲田大学特命教授。早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)顧問。国文学研究資料館前館長。日本文学研究者。専門は近世・近代日本文学。テレビでのMCやコメンテーター、新聞雑誌連載、書評など多岐にわたり活躍中

年齢とともに発酵食品を
積極的に取り入れるように

今晩は何を食べようかと考え、パートナーとともに買い物をして、料理をするのが楽しいとキャンベルさん。この4月にスタートしたYouTubeチャンネル「キャンベルの四の五のYOUチャンネル」では、彼の家ご飯を紹介する回も好評

食べるものが健康に直結する。歳を重ねるごとにそう思うようになったとロバート キャンベルさん。時間をかけて発酵・熟成させた基本調味料をはじめ、チーズ、納豆、ユズコショウ、かんずりなど、キッチンには少しずつ発酵食品が増えていき、いまではあまり意識せずともほぼ毎回の食事に取り入れていると言う。「おかげで胃腸の調子がとてもいいですね。私の肌はすごく正直で、直近3〜4日の食の履歴が肌に現れるのですが、外食が続くと肌がどんよりしてくるのです。そんなときに、普段食べている発酵食品が健康を支えていることを実感します」

料理上手でもあるキャンベルさん。朝食は3種類ほどの旬の果物にヨーグルトをかけたものと、豆乳と季節の野菜でつくるスムージーが定番で、このぺースは20年ほど変わらない。夜、和食の日は昆布と鰹節で出汁を取り、丁寧に味噌汁をつくる。納豆も好きで、汁物に入れることも多い。「発酵食品といえば、調味料は料理の味を調えるのに欠かせませんが、逆に、途中で垂らしたりつけたりすることで完成された味をいったん壊し、変えていくのも楽しいですよ。チーズとマッシュルームのオムレツに、終盤でかんずりを少し、とか」

酒は蒸留酒よりも、原料を酵母でアルコール発酵させた醸造酒を好む。最近は日本酒のスパークリングや熟成酒が気に入っているそうだ。「いろいろなご縁もあって、日本酒は福井の黒龍が好きです。新たなチャレンジでESHIKOTOというブランドを立ち上げられ、そのスパークリングが美味しくてびっくりしました。シャンパーニュと同じ製法で造られています」

コロナ禍に突入した昨年の春先、キャンベルさんはこのトンネルが抜けたときの自分の姿を想像し、運動の質や量を大きく変えた。目標を立ててパーソナルトレーナーをつけ、近くの緑道で10㎞ほどのランやスピードウォーキングを続けている。「汗を流して帰ってきて、よく冷えた甘酒を飲むと生き返ります。麹がつくるやわらかな甘さがありながら、さらっとしてキレがいい。この一杯で結構疲労が回復します」。その甘酒とは、福岡の白糸酒造が造る「しらいとのあまざけ」。佐賀との県境を走る脊振山系の清らかな水と麹を合わせ、まる一昼夜じっくりと糖化させたもので、白い麹がきれいに残っているのが特徴だ。

日本の食文化の中心は
発酵だと思う

昨年の初夏に、黒龍酒造の日本酒でキャンベルさんが仕込んだ梅酒。「黒龍の梅酒がとても美味しくて。それにはかないませんが、そろそろ飲み頃ですね」

ニューヨーク市で生まれ、母親と、アイルランド系移民の祖父母の間で幼少期を過ごしたキャンベルさん。地元教会の付属小学校に通い、日曜日の教会のミサで神父の助手を務めたことで、早くもワインの味を知ることに。後に母が再婚して新しい家族ができ、パリで暮らしたり妹が生まれたりと世界が広がった。グルマンな継父の影響もあり、料理の楽しさに目覚めたのもこの頃。キッチンでは積極的に自分好みの味を求めるようになり、チーズにはじまり、インド料理のラッシー、韓国料理のキムチなど、味わいに深みのある発酵食品に開眼した。

日本に来てまず感じたのが、発酵食品の地域色が豊かだということ。「味噌ひとつ、酒ひとつとっても地域によって全然味が違うのですから、ますます日本の発酵商品に魅せられました。発酵とは、麹菌や酵母といった微生物の働きにより食物が美味しく変化し、栄養価や保存性を高めるわけですが、日本は世界に例がないぐらいそれら微生物の種類が豊富で、多彩な味をつくり出している。食の文化という意味で食文化という言い方をしますが、日本では、その中心にあるのは間違いなく発酵食品だと思います」

食事の途中に加えて「味変え」する発酵食品が増加中。さまざまな縁で生産者とつながったり、実際に伝統のある生産地を訪ねたりしたものが多い

キャンベルさんが専門とする18〜19世紀の日本文学においても、日本は発酵の国だと再認識させられる記録が残されていると言う。「いま私たちが発酵食品と呼んでいるものは、当時ももちろん日常で食べていますが、戦争での籠城や、といった平時ではないときほど必要とされていました。江戸時代は享保・天明・天保の三大飢饉が知られていますね。それぞれの時代で、飢饉をどう生き抜くかというサバイバルマニュアルのような記録があるのですが、そこにはもれなく、発酵や砂糖漬け、塩漬けなど、漬けるという処理により、食物がもっている栄養素を保存可能なかたちにして引き立たせる知恵が記されています。厳しい社会の中でお互いを助け合う知識が共有されているのです」

醤油、味噌、酢に代表される発酵調味料、それらがベースとなる醤油漬け、味噌漬け、酢漬けといった保存食は、まさに困難を乗り越えてきた日本人が築き上げた食文化である。キャンベルさんの発酵食品好きにおいて、「まぁ、それは後付けですけどね。もともと日本酒が好きだというだけです」と笑った顔が、とってもチャーミングだった。

キャンベルさんが常備している発酵食品

①日本酒で漬けた自家製梅酒
②IWA 5(白岩)
③杉樽二段仕込「極醸」(協栄岡野)
④しらいとのあまざけ(白糸酒造)
⑤ESHIKOTO AWA 2018(黒龍酒造)
⑥千鳥酢(村山造酢)
⑦小岩井 生乳100%ヨーグルト(小岩井乳業)
⑧ハードチーズ(モンレジ)
⑨シェーブルチーズ(モンレジ)
⑩有機納豆「日本の農(みのり)」(登喜和食品)
⑪生胡椒のしょうゆ漬(マルツ食品)
⑫青柚子胡椒(茅乃舎)
⑬吟醸生かんずり 6年仕込み ミニ(かんずり)
⑭キムチ(妻家房)

text: Yukie Masumoto  photo: Kiyono Hattori
Discover Japan 2021年7月号「ととのう発酵。」


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