サウナ師匠と、ととのえ親方が語る2019サウナ予想
いまなぜサウナがブームに?
“サウナシュラン”の立ち上げなど、サウナブームを先導してきた、”ととのえ親方”こと松尾大さんと、”サウナ師匠”こと秋山大輔さん。昨今のサウナブームを振り返り、今後の動向を予想してもらった、《仕掛け人が語る2019サウナ予想》の前編。
松尾:最近のサウナブームのきっかけをつくったのは、タナカカツキさんの漫画『サ道』です。サウナに入って水風呂に入って、その後に休憩を挟んで心地よくなることを“ととのう”と表現し、瞬く間に若者の間に広がりました。その後、“サウナー”という言葉や、『サウナの教科書』などの指南書が出版されたことも、ブームを後押ししたと思います。僕たちも、どちらかといえばおじさんの印象が強かったサウナのイメチェンを図るべく、活動をはじめました。
秋山:松尾さんと意気投合したのは、二人で北海道のサウナに入ったことがきっかけ。このとき、サウナには人間関係を深める効果があると実感しました。一般的に、温泉はゆっくりと時間をかけて入りますよね。サウナの場合、サウナで温まった後に水風呂に入ると、お互いにすっきりします。シャキッとした状態で会話が弾むんです。それに、職業や年齢も関係なく親交を深められるのも重要。お互いの業種もわからないまま、ツイッターなどから交流しているサウナーは多いですよ。
松尾:仕事に追われている人ほど、サウナに入るメリットが大きいと感じます。事実、経営者の方は日常的にサウナに入っている人が多いですし、建築家やシェフといったクリエイターの方々にも普及してきました。いままでは、暑苦しいだけといったマイナスなイメージしかなかったと思うんです。ところが、ととのえることで頭の閃きや斬新な発想を得ることができるのです。マインドフルネス的な考えを高める上でも、効果があることがわかってきました。
秋山:一方で、サウナの上手な利用方法を知らない人って多いのです。僕たちは“プロサウナー”ですから、サウナに入ったことがない人に指南しています。温泉だって、造詣が深い人と一緒に行くといろんな知識が身につきますよね。サウナの新しい楽しみ方を提示していきたいと思っています。
松尾:サウナシュランなどの活動をはじめるきっかけになったのが、秋山さんとの北欧旅行です。フィンランドをはじめ、北欧のサウナを回り、気づかなかった日本のサウナの魅力や、改善すべき点などが見えてきました。
秋山:フィンランドには約360万カ所もサウナがあるんですよ。フィンランド人にとって、サウナは人生において重要な儀式の場。なんと、結婚式を挙げる前に、相手の両親と一緒に入って親交を深めたりするんですよ。“幸せな国”世界1位のフィンランドの幸福度は、サウナの効果でつくられたといっても過言ではありません。
松尾:ところが、日本のサウナには幸福とはほど遠い、“我慢比べ”のイメージがあります。現に、僕らに対して「何十分入れるんですか」と聞く人は多いですよ(笑)。日本人はサウナをオーブントースターのようなものと考えているのかもしれません。フィンランドのように、適度な湿度のあるサウナが少ないのです。
秋山:フィンランド人から、日本のサウナは制約が多くて自由じゃないと言われたときはショックでした。とはいえ、日本のサウナは清潔で、レストランもあるし、施設全体がテーマパークのように完成度が高い。一日過ごせる環境が整っていますが、サウナ室や水風呂の出来がまだまだ。湿度という観点が抜けているせいか、入った後に肌がピリピリしてしまうケースが多く、女性やお子さんの間で避けられていました。そこで、サウナシュランでは、カップルや家族連れにもおすすめのサウナを紹介しています。
文=山内貴範 写真=服部希代野
2019年2月号 特集「この冬、心ほどける温泉へ」