星のや東京・浜田統之シェフ
春の食材に長崎で出合った!
古くから食材の宝庫として知られる長崎。春の味を求めて、「星のや東京」の料理長・浜田統之シェフと生産者を訪ねる旅に出掛けました。
星のや東京
浜田統之(はまだ・のりゆき)
軽井沢ホテルブレストンコートのメインダイニング「ブレストンコート ユカワタン」でシェフを務め、2013年に世界最高峰のフランス料理コンクール「ボキューズ・ドール」で日本人初の3位、魚部門1位を獲得。2016年より「星のや東京」料理長に就任。
異国文化を取り入れ育まれた
長崎の美食文化とは
東シナ海、そして対馬海峡に面し、日本一の数を誇る島々、半島から形成される長崎県。日本と大陸の交流拠点として、また鎖国時代は海外に開かれた唯一の窓口として、異国の文化を受け入れながら独自の文化を生み出してきた。豊かな自然環境、歴史的背景、国際都市に暮らす人々の食へのこだわりが、長崎の美食文化を育んできたのだろう。
そんな食材の宝庫である長崎を旅したのは、国際料理コンクール「ボキューズ・ドール」で日本人初の世界3位、魚料理で1位を獲得した浜田統之さん。「星のや東京」で、未利用魚を使ったメイン料理や、発酵を取り入れた「Nipponキュイジーヌ」を提供している。長く軽井沢で土地の食材を最大限に生かしたフレンチをつくっていたことから、食材が育まれる現場でメニューのアイデアを考えることが多いという。
「豊かな土で育つ野菜の畑に行けば、その周りにはイノシシが生息していて、山には山椒といった野草が自然に生えています。それを知って土地のものを組み合わせれば、自然とひと皿が完成します。現地に足を運んで生産者に会い、自分の目で確かめるのは腕を磨く意味でも大切だと考えています」
長崎ではミネラルたっぷりの牧草で育つ和牛の肥育農家などを訪ねた。海岸線に広がる急斜面の耕地では、ジャガイモやタマネギが太陽の光をたっぷりと浴びて育つ様子も目にした。
「長崎は山も海もあり食材に事欠かないところ。川から栄養豊富な水が海へと流れ込むのでプランクトンが多く、魚は種類も味も抜群です。それは、山や森の恵みが豊かな海につながっている証し。徹底した土づくりや在来種野菜に取り組む農家さんも多いそうなので、今後も注目していきたいですね」
大自然と地の利、伝統に育まれた長崎の逸品
長崎和牛
生まれも育ちも長崎の極上黒毛和牛を育てる小川牧場。和牛の血統、雲仙の湧き水や良質な餌で長期肥育を行うなど、飼育方法に強いこだわりを見せる。品評会での受賞も多数。小川さんの肉は、系列の「焼肉おがわ」で食べられる。通販も可能。
焼肉おがわ
住所|長崎県諫早市松里町1285-1
Tel|0957-28-2939
ごんあじ
ごんあじとは、五島灘で捕れた250g以上のマアジ。海上いけすで餌を与えずに10日前後「活かし込み」することでストレスを軽減させている。丸みを帯び、腹から尾ひれにかけて黄金に輝いているのが特徴で、ほどよくのった脂がじんわり広がる。
長崎市新三重漁業協同組合
住所|長崎県長崎市三重町348-7
Tel|095-850-2121
ビワ
長崎県が生産量日本一を誇るビワ。いち早く2月下旬から出荷される山口さんのビワは、美しさと上品な甘みに定評がある。ビワは収穫後追熟はせず、完熟したものだけを収穫する果物のため、収穫のタイミング別に袋を色分けしているのだとか。
長崎西彼農業協同組合
住所|長崎県諫早市多良見町舟津638-1
Tel|0957-47-5580
からすみ
1675(延宝3)年創業。初代の高野勇助が中国伝来のサワラの卵巣のカラスミを食べ、ボラで試作したのが現在のカラスミのはじまり。天日干しし、2時間ごとに表裏を入れ替えて美しいべっこう色に仕上げるなど、一子相伝の手づくりを守る。
高野屋
住所|長崎県長崎市築町1-16
Tel|0120-556-607
3月中旬から登場!
長崎食材を使った春のコース
「星のや東京」では、3月中旬から登場するコース料理に長崎食材を使ったメインディッシュを用意。顔の見える食材を大切にする浜田シェフが、長崎の山海の幸で描く、春のひと皿をお楽しみに。状況によりメニューの内容や食材が一部変更になる場合あり。
星のや東京
住所|東京都千代田区大手町1-9-1
Tel|0570-073-066(星のや総合予約10:00〜18:00)
https://hoshinoya.com/
※春のコース1万8000円(税・サ別)。星のや東京ダイニングは宿泊者のみ利用可
長崎の食材はココでも買えます!
ちゃんぽんや五島うどん、カステラといった特産品をはじめ、東京では日本橋長崎館でしか取り扱いがない商品も多数販売。2月20日からオンラインショップもオープン。
日本橋長崎館
住所|東京都中央区日本橋2-1-3アーバンネット日本橋二丁目ビル1F
Tel|03-6262-5352
営業時間|10:30〜19:30
定休日|年末年始など
www.nagasakikan.jp
text: Akiko Yamamoto photo: Atsushi Yamahira
2021年4月号「テーマでめぐるニッポン」
≫五島の海の幸を存分に味わえる、ツウをうならせる美食の小宿「オーベルジュあかだま」