FOOD

かに吉 <かによし 鳥取>
カニの概念を変えた松葉ガニフルコース

2020.8.14
かに吉 <かによし 鳥取><br>カニの概念を変えた松葉ガニフルコース
魂炊(たますい)
浜田さんが最も感銘を受けた〆の一品。「松葉蟹の出汁を吸ったお米と、卵の半熟の部分、固くなった部分をミルフィーユ状に重ねて提供されます。こんな雑炊ははじめてです」

日本各地で出合う美味しい食べ物。美食を求めて旅に出る人も多いのではないでしょうか。食通の方々にわざわざ食べに行きたい名店を紹介してもらう《ローカル美食旅》。今回は「星のや東京」の料理長・浜田統之さんに鳥取の美味しいお店を伺いました。

浜田統之(はまだ・のりゆき)
鳥取県生まれ。2013年、世界最高峰の料理コンクール「ボキューズ・ドール」で日本人初の総合3位、魚部門で世界1位受賞。「星のや東京」で打ち出す「Nipponキュイジーヌ」で食カルチャーの新境地を切り開いている

私は鳥取県で生まれ、周りは県の名産品であるカニの工場ばかりの場所で育ちました。ですので、地元のカニに関してある程度知っているつもりでしたが、数年前から「かに吉」という名前を聞くようになって。それもトップシェフたちや「星のや東京」のお客さま、美食家と呼ばれる方々がこぞって訪れ、口を揃えて「かに吉を体験したら、ほかでカニを食べられない」と絶賛している。その違いを知りたくて2020年2月に行きました。

松葉ガニのフルコースのスペシャルをいただいたのですが、カニの概念が変わりましたね。まずなにより、鮮度がすごい。何杯食べたかわかりませんが、カニ特有の臭いがまったくしない手に衝撃を受けました。あの臭いは腐敗臭なので、それだけで最上級の素材ということがわかったのですが、ご主人の山田達也さんにうかがったら、予約の時間から逆算して、昼に出て翌朝に帰ってくるカニ漁船で捕れた中から選りすぐっている、と。それはどれだけ流通が発達しても、かに吉の立地でしかできない。もうカニが見たことないくらい輝いているんです。

コースは、カニ味噌や姿造り、焼きガニ、カニすき、雑炊など、最初から最後まで松葉ガニだけで、正直、カニだけだと飽きるかもしれないと思っていましたが、ペロリと食べられましたね。それは素材のよさもさることながら、味の表現のバリエーションも素晴らしかったからです。たとえばカニ味噌でも北海道のルイベのように凍らしていたり、サンドイッチに挟んだものが出たり。同じボイルしたものでも、すぐ食べるものと少し冷えた状態、完全に冷え切った状態で味や香り、テクスチャーの感じ方の違いを表現していたり、一つひとつが理にかなっていて、すべてが「美味しい」というベクトルに向かっている。

わかりやすくいえば高級寿司店のカニバージョン。こだわっている寿司は、同じシャリとネタというスタイルなのに一つひとつが全然違って、飽きずに食べられるのと同じです。私が好きな言葉に「Less is More」(少ないほうが豊かである)という言葉があるのですが、かに吉はそれを実践されています。他を完全に削ぎ落としてカニだけを突き詰めているからこそ、誰もが思いつかない領域の料理が生まれている。そこに共感を覚えましたし、勉強にもなりました。最近では一番「やられたな」と思える店でしたね。冬以外はメニューがガラっと変わる“なつ吉”になって、その時期に食べられる干しカレイが美味しいと聞いたので次は夏に訪れたいです。

松葉蟹 焼き蟹
濃厚なカニ味噌を乗せた焼き蟹。「山田さんはもちろん、お母さんの包丁の入れ方や火入れのタイミングなど、技術がとにかくすごい。カニを知り尽くしていないとできません」

私は、そういった「そこにしかない素材」を生かしきる店や食材を目的にする旅しか行かないですね。食材ありきのシンプルな料理は本質に近いのと、ふたつの意味で「残る」と考えています。それは、食べたときの記憶と後世に残るということ。たとえば静岡にある「てんぷら成生」のように地方でしかできないことを実践している店にものすごく魅力を感じます。

食の情報は、シェフ仲間や業界の方から聞くことが多いですが、こだわっている店に行くと、お客さまも情報感度が高い方が多いので、たとえば寿司店のカウンターで同席したときに、誰も知らないようなお店を教えてもらったりすることもありますよ。

今回は時間の都合で行けなかったのですが、かに吉の近くで、信頼できる人たちからよく聞くのが「四川担担麺 蒼雲」や「まつやホルモン店」。立ち寄りや宿泊では、皆生温泉(かいけおんせん)がおすすめです。目の前に海が広がる温泉街で、幼少期によく行ってました。あと「ののこめし」もぜひ食べてほしいですね。これは油揚げの中に生米や生野菜を詰めて出汁で炊き上げた郷土料理で、鳥取のソウルフードです。

知られざる食を中心に鳥取を旅すると、新しい発見があると思います。

かに吉
冬は仲買人でもある店主が厳選した最高級のカニを、春〜秋は日本海の幸が堪能できる。2万5000円〜。(税・サ別)
住所|鳥取県鳥取市末広温泉町271
Tel|0857-22-7738
営業時間|17:00〜22:00(完全予約制)
定休日|不定休

四川担担麺 蒼雲
奥深い辛みが艶めく中太麺に絡んだ本格的な四川担担麺が、ミシュランガイド2019でミシュランプレートに選定。
住所|鳥取県鳥取市上魚町7-1
Tel|0857-30-6554
営業時間|11:30〜14:00(L.O.)、17:30〜20:00(L.O.)、土〜火曜は昼のみ
定休日|水曜

皆生温泉旅館組合
日本海に面し、温泉と海水浴が同時に楽しめる国内有数の温泉郷。環境省の『日本の水浴場88選』にも選ばれた。
住所|鳥取県米子市皆生温泉3-1-1
Tel|0859-34-2888

まつやホルモン店
ぷりぷりのホルモン入りの鉄板焼きそばを味噌ダレで食べるローカルグルメ「ホルモンそば」(770円)が絶品。
住所|鳥取県鳥取市吉方温泉4-432
Tel|0857-23-3050
営業時間|11:30〜13:15(L.O.)、17:00〜21:00(L.O.)
定休日|日曜、祝日、火曜の昼(※祝日は営業の場合あり)

こめや産業
特製の油あげの中に、地元で厳選した米と野菜を詰めて丁寧に炊き上げた「いただき(ののこめし)」を販売。
住所|鳥取県境港市外江町3175-4
Tel|0859-42-6620

1泊2日のおすすめルートを紹介!

1日目
羽田空港
↓ 飛行機 75 min.
鳥取空港
↓ バス 30 min.
四川担担麺 蒼雲
↓ 徒歩 15 min.
かに吉

2日目
まつやホルモン店
↓ 電車 120 min.
皆生温泉
↓ 車 30 min.
こめや産業
↓ 車 15 min.
米子鬼太郎空港

text: Ryosuke Fujitani illustration: Honoka Yoshimoto
2020年7・8月号 特集「この夏、どこ行く?ニッポンの旅計画108」


≫ニッポンのカニ図鑑

≫中心地から30分で自然豊かなワーケーションスポットも!すべてが近い鳥取へ!

≫山口県の“うまい”を堪能する旅。第1回|海の幸編

鳥取のオススメ記事

関連するテーマの人気記事