この冬、長崎を食べに行こう!【前編】
フグも長崎の夜景も堪能
冬の味覚のひとつ・フグの中でも王者と称されるトラフグ。その養殖生産量においてトップを誇る長崎なら、“高級魚”もぐんと身近に感じられる。良質の漁場、豊富な魚種に恵まれた地で美味なるフィッシュ・ツーリズムを体験してきました。
まずはフグの名店でフグ尽くし
フグの産地と聞いて、思い浮かべるのはどこだろう? 意外と知られていないが、トラフグ養殖生産量の全国1位は長崎。シェアは実に5割以上を誇る。ならば、フグを満喫するにはご当地を訪れるのが正解というわけだ。
真っ先に予約を入れたいのが、創業97年のフグ料理専門店「新富」。扱うのは長崎市・県産のトラフグ、それも1kg超えクラスのみだ。「さばいてから一日寝かせることで、旨みを引き出しています」と主人の堤新一さんは語る。その持ち味を最もストレートに楽しめるのがフグ刺し。厚めに引いた身はプリプリと心地よい歯応えがあり、噛み締めるほどに上品でいて饒舌な旨みが膨らむ。焼き、唐揚げなど調理法ごとに味わいもさまざま。また、食すのが身だけではないのがフグの奥深いところ。白子や皮、ヒレに至るまで無駄にはしない品々に、先人の知恵が詰まっている。コースの最後を飾るのはフグちり。旨みが溶け込んだ出汁を、〆の雑炊で一滴たりとも余さず味わい尽くしたい。フグ自体は年中提供可能だが、鍋がことのほか美味しく感じられる冬場が特に人気。東京などではまず考えられないリーズナブルさも魅力で、予約客のほとんどが県外から、という日も多いそう。記念日に毎年訪れる人もいるとか。肩ひじ張らない温かな雰囲気の中、高級魚フグを丸ごと堪能できる至福。再訪を誓わずにいられない名店なのだ。
フグの醍醐味は、オーソドックスな料理のみに終わらない。たとえば、夜景の名所・稲佐山の中腹に位置するラグジュアリーホテル。こちらの鮨ダイニング「天空」では、寿司を中心とした洒脱な会席料理に定評があり、フグざんまいのコースも展開する。繊細な先付けにはじまり、滋味深い椀物、そしてもちろん創意に富んだ寿司の数々まで。最高の食材と緻密な技巧、優美な盛りつけが融合した品々は、美味しいサプライズに満ちている。ふと皿から顔を上げれば、眼下に広がるきらびやかな長崎港の夜景。心に刻まれるひとときになりそうだ。
市内きっての繁華街・銅座でも、フグは馴染み深い存在。「割烹 こじま」では、フグ刺しなどの定番メニューに加え、ご主人の出身地・島原の郷土料理「がね炊き」もお見逃しなく。骨付きのフグの身にニンニクや梅干しなどを加えて甘辛く煮付けた、力強い味わいがたまらない。フグ料理と合わせて楽しみたいのがヒレ酒だが、こちらではなんと冷酒バージョンも用意。日本酒にヒレを漬け込み、冷蔵庫で1週間寝かせた琥珀色の美酒は、はじめて体験する馥郁たる風味にノックアウトされる。
ひと口にフグ料理といっても、アレンジは驚くほど表情豊か。そのクオリティの高さは、間違いなく産地ならではだろう。
確かな素材と技術で魅せる
長崎でも稀少なフグ料理専門店
「新富」
3代目を継ぐ主人が、「長崎のフグの灯を消したくない。お腹いっぱいフグを楽しんでもらえたら」と腕を振るう。全8品のフグ会席コース5500円のほか、フグフルコース11000円も。70〜80年前から大切に使い続けているという、特注の有田焼も必見。
新富
住所|長崎県長崎市古町46 ランスイ第一ビル1F
Tel|095-822-7955
営業時間|11:30〜14:00(L.O.)、17:30〜22:00(L.O.21:00)
定休日|不定休
長崎港と市街地を一望しながら、非日常の寿司コースを
ガーデンテラス長崎ホテル&リゾート
鮨ダイニング「天空」
隈研吾氏がデザインを手掛けた、全室オーシャンビューのリゾートホテル内にある。五島など長崎近海産の魚介を、洗練された江戸前寿司に仕立てる。この時季はカジキやアラ(クエ)、ヒラメのほか、稀少な釣りアマダイが入ることも。寿司を中心とした会席コース8800円〜。
鮨ダイニング 天空
住所|長崎県長崎市秋月町2-3
Tel|095-864-7717
営業時間|11:00〜15:00(L.O.14:00)、17:00〜22:00(L.O.21:00)
定休日|なし
珍しい郷土料理も体験できる
懐深い割烹でゆったり
割烹「こじま」
1993年に思案橋そばで開業し、1996年に現在の場所に移転。カウンターから座敷まで備え、幅広いシーンに心強い。1.5㎏超えのフグを使用するフグ料理は、フグ刺し2200円、ふぐちり3300円などリーズナブル。ほかにも地魚を生かした多彩なお品書が揃う。
割烹 こじま
住所|長崎県長崎市銅座町14-14
Tel|095-827-1696
営業時間|11:30〜14:00、17:00〜22:00(L.O.21:00)
定休日|なし
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text: Aya Honjyo photo: Azusa Shigenobu 協力=一般社団法人長崎国際観光コンベンション協会(DMO NAGASAKI)
Discover Japan 2022年2月号「美味しい魚の基本」