世界に轟くものづくり県の原点とは？
第1回｜暮らしをつなぐ、愛知県の伝統的工芸品。
受け継がれてきた技術を用い、主に手づくりで原材料にもこだわった品目に与えられる「経済産業大臣指定伝統的工芸品」。愛知県では15品目が登録されています。伝統を守り続けるとともに、新しい挑戦に取り組む産地をめぐる本連載。まずは愛知県の“ものづくり”の原点に迫ります。
愛知の環境が生んだ“ものづくり”
愛知県は、日本で最も製造業が盛んな県である。製造品の年間出荷額は48兆円を超え、42年連続で日本1位を誇る。また、製造業に携わる従業者は86万人を超えており、これも全国1位だ（経済産業省「2019年工業統計調査」）。
そんな愛知県では、最先端の工業製品だけでなく、古くから受け継がれてきた伝統工芸品の生産がいまも盛んで、15品目が「経済産業大臣指定伝統的工芸品」に指定されている。奈良時代から江戸時代にかけて興った、これらの“ものづくり”の隆盛には、人々の努力や創意工夫に加え、歴史や風土を含めた愛知県という環境そのものが必要不可欠な要因だったといえるだろう。
かつては尾張と三河のふたつの国に分かれていた愛知県。県西部の尾張国は徳川御三家の筆頭・尾張藩が治め、東部の三河国は三河吉田藩、岡崎藩、田原藩などの小藩が置かれていた。いずれも領地を流れる木曽川や矢作川などの大きな河川を活用することで、山間部から良質な木材を容易に入手可能だったため、「名古屋仏壇」や「三河仏壇」、「名古屋桐箪笥」などの木工産業が発達した。また、良質な粘土や石が採れることから、尾張では「常滑焼」や「赤津焼」、「瀬戸染付焼」などの窯業が、三河では「三州鬼瓦工芸品」や「岡崎石工品」が興った。
交通の大動脈だった東海道の存在も発展に大きく寄与した。尾張・三河の2国には9つの宿場が設けられ、人や物資、情報が行き交うことで、さまざまな文化が生み出された。「名古屋友禅」、「尾張七宝」など、街道を通じて技術が伝わり、旅人によってその名が全国へと広まった工芸品も多い。
さらに、藩の政治・経済政策によって生まれた工芸品もある。「名古屋黒紋付染」や「名古屋節句飾」の鯉のぼりは藩内の幟旗製造が起源であり、「有松・鳴海絞」は藩の特産品として保護され発展した。「尾張仏具」や「豊橋筆」は、困窮する下級武士の経済対策として藩が製造を奨励したことから現在まで残る一大産業となった。
風土や歴史、そして人々の知恵と研鑽によって育まれてきた伝統的工芸品こそ、自動車産業を筆頭に生産用機械や鉄鋼、航空機、ロボットといった最先端の分野でも日本を牽引する、愛知県の“ものづくり”の原点なのだ。
愛知県の伝統工芸についてもっと詳しく知りたい方はこちら
http://jibasangyo.pref.aichi.jp/
伝統的工芸品が一堂に会する全国大会が開催予定！
全国の伝統的工芸品の製作体験や、展示販売会などを予定。ぜひ足を運んでみてください。
第38回伝統的工芸品月間国民会議全国大会
開催期間｜11月26日（金）〜29日（月）
会場｜愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」ほか
問｜愛知県経済産業局産業部産業振興課
Tel｜052-954-6341
暮らしをつなぐ、伝統的工芸品。
１｜“ものづくり”県の原点とは
２｜“ものづくり”県の礎を築いた15の伝統的工芸品 – 前編
３｜“ものづくり”県の礎を築いた15の伝統的工芸品 – 後編
４｜暮らしの中に息づく温故知新の“ものづくり”
photo: Atsushi Yamahira, Akane Yamakita, Kiyono Hattori text: Arika Inc.（Yasunori Niiya, Yuki Sawai, Makiko Shiraki, Kaori Nagano） illustration: On Yamamoto
2021年3月号「ワーケーションが生き方を変える？地域を変える？」
≫シンプルなフォルムが映し出す色の小宇宙「岩崎龍二のうつわ」というアート
