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伊勢神宮の「建築」Q&Aで解説!

2020.10.21
伊勢神宮の「建築」Q&Aで解説!

伊勢神宮の内宮、外宮の御正殿は「唯一神明造(しんめいづくり」)と呼ばれ、日本古来の神社建築の様式で建てられています。Q&A形式で伊勢神宮の建築と、内宮の御正殿を参考にその特徴を解説します。

監修者
黒田龍二 先生
神社建築を主要テーマに、日本建築の歴史を実地・文献調査などから研究。出雲大社や纒向遺跡の復元設計も行う。著書に『纒向から伊勢・出雲へ』(学生社)

Q.外宮と内宮の違いは?

A.鰹木の本数などの細かな部分です。

外宮と内宮は特別な存在のため他の神明造と異なり、唯一神明造と呼ばれる。このふたつは神明造の中でもトップ2と考えるべき。ただ、上記でも述べたように、内宮と外宮の外観の違いは鰹木(かつおぎ)の本数や千木の先の切り口や風穴の数など細かな部分だけだ。

Q.“神明造”が見られるところは?

A.実は両国国技館でも見られます。

神明造は多くの神社で用いられる建築様式。国技館では場所中の土俵上に屋根をつるしているが、あれも神明造。ほかに身近な存在でいえば神棚。お伊勢さんから受けた神棚は神明造になっている。

内宮・正面図。特徴である「平入り」と呼ばれる形式。建物内への出入り口もよく見える。屋根は切妻造という萱葺き屋根
「鰹木(かつおぎ)」。屋根の上に置かれた鰹木の数が異なる。外宮は9本、内宮は10本ある

Q.“神明造”の特徴は?

A.屋根のかたちに特徴があります。

屋根が切妻(きりづま)造、出入口のある方向によって平入りと呼ばれるのが神明造の特徴。屋根の棟と平行になる面を「平」。直角方向の面を「妻」という。神明造では平の方向に建物への出入口があり、これを「平入り」と呼ぶ。また、掘立柱(ほったてばしら)と呼ばれ、柱を土の中に直接埋め込んで建てているのも神明造ならでは。奈良県桜井市で見つかった初期大和王権の王宮である纒向遺跡(まきむくいせき)において、ここで見つかったC棟と呼んでいる建物が、伊勢神宮と非常に似たつくり方をしている。この遺跡では王宮がふたつあると考えられていて、そのひとつではC棟は見つかっていない。伊勢神宮の御正殿は弥生時代の穀物倉が基になっているのでは……という考え方が一般的。だが、これは纒向遺跡が見つかる前の話であり、付け加えるなら王宮の中で宝物庫として完成してから、伊勢に移されたと考えられる。

Q.御正殿の材料は何?

A.価値のある素材が使われています。

シンプルな神明造である伊勢神宮の御正殿。わかりやすく説明すると「素朴なつくりの建物を、とても価値のある材料でつくっている」といえる。たとえば壁面より外に出ている棟持柱(むなもちばしら)に使われるのは木曽檜だがフシが見当たらない。この太さ、長さでフシのないものなんて値段のつけようがない。こんなに価値のある木を使えるのは国内でも伊勢神宮だけだろう。さらに萱葺(かやぶ)きの屋根に使う萱も、伊勢神宮の広大な萱の栽培場で育ったものだけと徹底している。平成25年に式年遷宮があり御正殿も新しく建て替えているが、式年遷宮のたびに装飾金具など細かな部分では常に変化をしている。特に昭和4(1929)年に行われた式年遷宮は日本の国力も充実し、より豪華な材料が使われたといわれている。掘立柱、棟持柱など古くからの建築様式を守り、二十年に一度新しくなっていることも忘れてはいけない。

内宮・側面図。妻側の壁の外側に立つ棟持柱は、神宮御正殿の象徴的な存在。その内側に10本の側柱がある
千木。屋根の端にあり2本が交差して屋根の上に突き出たものが千木。内宮は水平に切る内削ぎ、外宮は先端を垂直に切る外削ぎに
梁(はり)と桁(げた)。建物上部の大棟に対し平行方向にある木材が桁。梁は直角方向にある。梁が下、桁が上にくるのが外宮で内宮はその逆

伊勢神宮
住所|三重県伊勢市宇治館町1
Tel|0596-24-1111(神宮司庁)

text=Ichiko Minatoya,Takehiro Nambu photo=Harumi Obama,Ko Miyaji,Haruo Nakano,Tsutomu Watanabe illustration=matya、A2WORKS
2017年 別冊「伊勢神宮と出雲大社」


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