TRADITION

有田焼、丹波焼、萩焼…日本の焼き物図鑑【後編】
うつわの基礎知識

2020.11.30
有田焼、丹波焼、萩焼…日本の焼き物図鑑【後編】<br><small>うつわの基礎知識</small>

日本各地で愛されるその地域特有の焼物。その一つひとつに個性があり、知れば知るほどその魅力に引き込まれていきます。ここでは、代表的な焼物を図鑑形式で前後編記事にてご紹介します。

≪前編を読む

 

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典雅さに酔う伝統文化の集大成
京焼(きょうやき)/京都府

江戸初期に優れたろくろの技と卓越した感性で、色絵陶器の名作を残した野々村仁清。琳派の意匠を絵付けで投影させた尾形乾山。その後も奥田頴川や青木木米らの名工や前衛的な陶芸家集団「走泥社」など、無名の陶工というよりも芸術家を輩出してきた。

歴史|起源は平安以前。江戸初期からの古清水がいまに通じる
土|天草や信楽、伊賀、瀬戸などから取り寄せた原料を使用
技法|端正なかたちは巧みなろくろ技術。作家ごとに個性豊か
釉薬|絵付けを引き立たせる白濁釉や白化粧が特徴
人間国宝|石黒宗麿(1893〜1968)、清水卯一(1926〜2004)

清らかな純白が目にしみる
出石焼(いずしやき)/兵庫県

雪のように白く清楚な出石焼。江戸時代に地元で大量に白磁の原石が発見されたことから、有田の陶工を招いて技術を体得したのがそのはじまりだ。染付けなどはほとんどせず、精緻を極めたレリーフや透かし彫りで純白の美しさを引き立たせる。

歴史|江戸天明期の伊豆屋弥左衛門による開窯がはじまり
土|柿谷石、谷山石など焼成後の素地白色度が高い陶石
技法|流し込み成形、押型成形、ろくろ成形が基本
釉薬|長石・陶石・石灰石などを原料とした透明釉と結晶釉

古都の薫りを奈良絵に忍ばせて
赤膚焼(あかはだやき)/奈良県

茶人・小堀遠州が好んだ遠州七窯のひとつで、大和郡山藩の御用窯として繁栄。乳白色の釉の柔らかな風合いと、お伽草子などを題材にした奈良絵の愛らしさで知られる。風景、人物、鹿など奈良絵を描いた茶碗は素朴な筆遣いと鮮やかな色彩にも心和む。

歴史|創始は古代。桃山に確立し江戸後期に郡山藩主が再興
土|場所ごとに土が変わるため土や焼き方に定義がない
技法|奈良絵は江戸末期の名工、奥田木白がはじめたとされる
釉薬|奥田木白が開発したグレーがかった「赤膚釉」が特徴

土味と窯変が奏でる素朴な美
備前焼(びぜんやき)/岡山県

土と炎から生まれる豪放な備前焼は桃山の茶人にもてはやされ、茶陶の名器が多数生まれた。明治〜昭和初期には低迷したが、金重陶陽が陶土・窯の構造・窯詰め・焼成法の創意工夫に努め、古備前の手法を再現。備前焼を再び隆盛へと導いた。

歴史|平安にはじまり室町にろくろを導入。桃山に茶陶で繁栄
土|鉄分を多く含み粒子の細かい粘土「田土」が基本
技法|すべてを炎にゆだねるため窯詰め作業に時間をかける
釉薬|釉薬は使わず、赤褐色の筋模様「緋襷」などの窯変が命
人間国宝|金重陶陽(1896〜1967)、藤原 啓(1899〜1983)、山本陶秀(1906〜1994)、藤原 雄(1932〜2001)、伊勢崎 淳(1936〜)

民藝派を感動させた庶民の雑器
丹波焼(たんばやき)/兵庫県

六古窯で最も自然釉が美しいといわれた穴窯の焼き締め陶、登り窯での施釉陶に大別され、現在の丹波焼は後者の系譜。多彩な釉薬が生まれ、松薪の灰が釉薬と溶け合い窯変する灰かぶりも特色。民藝運動で発掘されるまで世間に広く知られてはいなかった。

歴史|平安末期に開窯。登り窯での施釉陶は江戸中期から
土|三田市の四ッ辻粘土と弁天黒土をブレンドして陶土に
技法|古丹波は紐づくり。施釉陶は丹波特有の左回り蹴ろくろ
釉薬|朱色の赤土部釉、黒褐色の灰ダラ釉などを独自に開発

茶人を魅了した奥深き釉肌の変化
萩焼(はぎやき)/山口県

萩藩の御用窯としてはじまり、茶陶を中心に焼き続けて発展。登り窯の比較的低い温度で焼かれ、柔らかい印象に。貫入を通して茶が染み込んで色や肌合いが変化する「茶慣れ」が特色。この変化を「萩の七化け」と称し、茶人たちが風情を楽しんできた。

歴史|慶長年間に藩主の毛利輝元の命で朝鮮人陶工が築窯
土|吸水性に富む大道土に金峯土や見島土などを配合
技法|装飾はヘラ目など簡素。高台のかたちでも変化をつける
釉薬|ぽってり厚い白萩釉、素地色が生きる枇杷色釉が主流
人間国宝|三輪休和(1895〜1981)、十一代三輪休雪(1910〜2012)

大物の里で息づく柔らかな土味
大谷焼(おおたにやき)/徳島県

阿波特産の藍染めで使う藍甕など、大物を得意として発展してきた大谷焼。二人がかりの作業で寝転びながら足で蹴ってろくろを回す「寝ろくろ」という独自の技法が伝わる。いまは食器などの小物類が主流。土味を生かした焼き締めの酒器で一献傾けたい。

歴史|江戸後期、豊後の職人が赤土で焼いた焼物がはじまり
土|地元産で鉄分の多い萩原粘土や讃岐粘土などが主原料
技法|大型の甕は寝ろくろで。登り窯の大きさは日本一とも
釉薬|石灰、土灰、長石などを調合した釉薬を浸しかけ、流しかけ

日本最初の磁器が繰り広げた様式美
有田焼(ありたやき)/佐賀県

時代とともに変化してきた有田焼の様式美。「初期伊万里様式」は中国的な絵柄を描く染付け。「柿右衛門様式」は「濁手」という素地の余白を生かす絵画的な色絵。17世紀末には「金襴手様式」が登場。17世紀後半以降、藩窯の技「鍋島様式」が確立した。

歴史|1616年に朝鮮陶工・李参平が陶石を発見し白磁を焼成
土|泉山磁石場で採れる陶石が主。現在は天草産の陶石も
技法|柿右衛門様式、金襴手様式など色絵のほか装飾が多彩
釉薬|石灰釉、柞灰釉、青磁釉など。均一な質感に施釉する
人間国宝|十三代 今泉今右衛門(1926〜2001)、十四代 酒井田柿右衛門(1934〜2013)、井上萬ニ(1929〜)

茶の心を日常に溶け込ませる
上野焼(あがのやき)/福岡県

茶道の奥義を極めた小倉藩主・細川忠興の御用窯がそのはじまり。落ち着いた風情の中に茶陶の気品が漂う。イラストは藁灰釉と飴釉をかけ分けたもので、色の重なった部分が漂うように放射を描く。偶然の産物ともいえる釉の変化が見どころだ。

歴史|茶人として名高い細川忠興が李朝陶工に築窯させた
土|地元、上野の地で産出される良質の粘土
技法|茶陶らしく軽量で薄づくり。絵付けは基本的に用いない
釉薬|緑青釉の青が魅力。鉄釉、藁白釉など多彩な釉を用いる

精緻な絵付けに見る先人の技と心
三川内焼(みかわちやき)/長崎県

透けるように薄い白磁に、青の濃淡だけで描かれた精緻な絵。朝廷や将軍家への献上品として、また南蛮貿易で王侯貴族に愛された。中国の子どもが遊ぶ唐子絵などこの地だけに伝承された文様が数あり、つたやあざみなど草花を描いた古平戸絵もその一種。

歴史|朝鮮の陶工により、平戸藩の御用窯として開窯
土|熊本県天草で採れる天草陶石を使用
技法|白磁に呉須で描く染付け。透かし彫りの技巧も特徴
釉薬|ガラスのような透明感を生む釉薬を全体に施す

侘び茶の世界にもかなう素朴な美
唐津焼(からつやき)/佐賀県

朝鮮人陶工から伝えられた技術で脚光を浴び茶人に愛されたが、一時衰退。昭和30年代、代々献上唐津を制作する陶家の十二代中里太郎右衛門(中里無庵)が古唐津の発掘調査に取り組む。絵唐津・斑唐津・叩き唐津などの技術で唐津焼に活気を取り戻した。

歴史|桃山時代、朝鮮人陶工の技を導入した古唐津が全盛期
土|砂目は粗く堅い土で鉄分を含むため焼成色は黒褐色に
技法|絵唐津、朝鮮唐津、斑唐津、三島唐津など多様な技法
釉薬|土灰釉を基本に藁灰釉や鉄釉、長石釉など
人間国宝|十二代 中里太郎右衛門 中里無庵(1895〜 1985)、十三代 中里太郎右衛門

芸術品の白もんと日用品の黒もん
薩摩焼(さつまやき)/鹿児島県

薩摩各地で独自の発展を遂げ、堅野系、龍門司系など異なる作風の系統がある。伝統的な薩摩焼は白もん(白薩摩)と黒もん(黒薩摩)に大別。白もんは象牙色の肌に優美な上絵、精巧な透彫り。黒もんは漆黒の光沢をもち、剛健で素朴な用の美を秘めている。

歴史|藩主が連れ帰った朝鮮陶工が開窯し御用窯として発展
土|白薩摩は白土が主。黒薩摩は鉄分の多い土を数種混合
技法|金襴手など華やかな色絵薩摩など多様な陶技が発展
釉薬|釉は多彩で黒薩摩は黒釉や蕎麦釉など数種かけ分けも

≪前編を読む

edit: Miyo Yoshinaga illustration: Tomoyuki Aida
Discover Japan 2020年12月 特集「うつわ作家50」


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