陶芸家・青木良太さんの
うつわと料理【前編】
年間1万5000種を超える釉薬研究を行い、「かつてない21世紀の陶芸伝統を生み出す」ことを使命とした陶芸家は、日々の食事を自作のうつわで楽しむ美食家でもあります。本企画では、小誌オンラインショップと連動し、青木良太さんの食卓を通して、うつわの使い方を前後編記事にてご紹介します。
青木 良太(あおき・りょうた)
1978年、富山県生まれ。金、銀、プラチナさらにはスワロフスキーなど、従来の陶芸では使われない素材を積極的に取り入れ、未知の作品を創造し続ける陶芸家。国内外の個展のほか、現代アートフェアにも参加。若い陶芸家を支える活動も行っている
うつわ選びは洋服を決めるセンスと同じ
青木良太さんの作品の特徴を挙げれば、触れる者の心を動かす美しさと力強さに満ちているということ。その唯一無二の陶器を生み出す覚悟について当人はこう話す。
「この世になかったものをつくるのが自分の宿命だから」
そんな青木さんが工房以外でしかるべき時間を割くのが日々の自炊だという。
「学生時代にバイトのし過ぎで体調を崩して以来、食べるものは自分でつくるようになったんです。陶芸家は身体が資本ですから」
その料理にも元来の研究癖がき、一流料理人にアドバイスを乞うほど入れ込んでいる。
「星のや東京の総料理長・浜田統之さんですね」
世界中のフランス料理人が挑むコンクール、「ボキューズ・ドール」の2013年大会で日本人初の世界3位。魚部門で世界1位を獲得したのが浜田さんの経歴だ。
「店のうつわをつくってほしいと依頼されてからの仲です。ただ、浜田さんの料理が衝撃過ぎて、ほかで感動できなくなっちゃった。食べなきゃよかったかも(笑)」。
漬け海鮮サラダ丼
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パスタ皿 7寸 ミルク
昼ご飯は毎日この漬け丼だそう。「夕方のスーパーで半額の刺身を買って、その晩に3日×2人分を仕込みます。臭みの取り方は浜田さんに教わりました」。丼物なのにパスタ皿を用いたのは?「周囲にリムがあるとキャンバスのように見えて、中央の食材が映えるでしょ。毎日食べるものこそ見た目をおしゃれにしたいと思ったので、このうつわにしました。ボウルより具がたくさんのるのもいいんです」。
材料
卵・玄米・刺身
ベビーリーフ
レシピ
1→卵を黄身と白身で分けて、白身をレンジで40秒温める
2→温めた白身を包丁で細かく砕いて、玄米と混ぜる
3→白身と玄米酢飯をつくる
4→刺身を調味料で漬ける(料理酒2、みりん1、醤油1)
5→ベビーリーフと合わせて盛りつけて完成
豚鍋
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アラジンの鍋 赤
アラジンの鍋はさまざまな料理で大活躍。オーブンでも直火でも使えるこの鍋は、4合までの米も炊けるそうで、電子ジャーを持たない青木さんは、ラップして冷凍保存するのを常にしているという。ちなみに赤のほかに金・銀・黄・黒・白を展開。いずれもそのままテーブルに出しても華やかなカラーが揃っている。「豚しゃぶは夜ご飯の定番。ヘルシーで簡単。脂身が少ない豚肉を選ぶのが健康のポイントです」。
材料
豚肉・白菜・キノコ類・大根・ネギ・ポン酢
レシピ
1→豚肉の脂身部分を取る
2→「アラジンの鍋」に水を入れて白菜とキノコを加える
3→大根おろしをしっかりと絞り、ネギとポン酢で和えておく
4→大根おろしを、しゃぶしゃぶした豚肉でくるんで食べる
豚肩肉のかたまり オーブン料理
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ボナペティ9プレート桜
「レストランより美味しくなる」と豪語したのが、豚肩肉のオーブン焼き。青木さんの得意料理だという。「手が込んでいるように見えて、実は簡単なんです。オーブンにかけている35分の間には掃除と洗濯ができちゃう」。盛り付けの皿は2枚重ねとした。「下に銀の皿を置くだけで高級感が増します。その上の皿は、季節で選ぶと楽しいですね。今回は春なので桜色をセレクトしてみました」。
材料
肩肉・ジャガイモ・タマネギ
パプリカ・舞茸・香草(ディル)
つくり方
1→肩肉に塩をまぶして、ひと晩寝かせる
3→「アラジンの鍋」に油を引いて、豚肩肉の表面に焼き目をつける
3→鍋に日本酒を指2本分入れて、野菜類、肩肉を入れて、水を加える
4→スティックコンソメを1本入れて、オーブンで120℃、35分加熱し完成
上の料理の残りでつくる カレー
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Bol Blanc 平鉢 7
豚肩肉のかたまりオーブン料理は3日間保存可能だが、「3日目ともなると飽きるので」と、青木さんはカレーにつくり直してしまう。「この料理にもアラジンの鍋が重宝します」。カレーを盛ったうつわには構造上の特徴がある。「真上からは平らに見えますが、側面と底面の接点に角がなく、ゆるやかに立ち上がっているんですね。これがスプーンで縁をすくうのに好都合。この構造、何より見た目がカッコいい」。
材料
カレーのルウ・卵・野菜
つくり方
1→オリーブオイルにバルサミコ酢、醤油を垂らしてドレッシングをつくる(サラダ用)
2→昨日残した材料が入ったアラジンの鍋に、水とカレーのルウを入れて煮込めば完成
text: Tonao Tamura
Discover Japan 2021年5月号「美味しいニッポントラベル」