古代より受け継がれる、
伊勢神宮の行事
伊勢神宮で行われるお祭りの数は、年間約1500にも及びます。それらは一体どのような意味を持つのか? 國學院大學・茂木貞純先生にうかがいました。
監修者
國學院大學・茂木貞純さん
神道文化学部教授。専門は神道祭祀学、戦後神道史。古宮神社(埼玉県熊谷市)宮司。
古来継承されたお祭りの数々
伊勢神宮で行われているお祭りは、五穀豊穣、国家安泰、日本の平安などを祈願して、古代以来、天皇が行ってきたもの。伊勢神宮では年間1500以上のお祭りが行われているのだが、伊勢神宮には内宮と、外宮のほか、大小125にも上る宮社があり、それぞれが一年の間に決められたお祭りを行っている。わかりやすいのは朝夕、神さまにお食事を差し上げるお祭り。これだけで365日×朝夕2回行われる。
数あるお祭りの中でも、特に重要なのは三節祭と呼ばれる神嘗祭(かんなめさい)と年2回の月次祭(つきなみさい)。とりわけ大事なのは神嘗祭(かんなめさい)で、これはお米づくりと密接にかかわっている。ニニギノミコトが地上に降りるとき、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が自分が育てていた稲を託し、地上で米づくりをはじめるようにしたとされている。つまり、米は神さまからの授かり物。そして国が栄える=五穀豊穣であり、そのために祈りを捧げることが、国の代表たる天皇の一番大切な仕事だった。
お米づくりは月の「神田下種祭(しんでんげしゅさい)」からはじまり、苗を田に植えはじめる「神田御田植初(しんでんおたうえはじめ)」、雨風の被害に遭わないように祈る「風日祈祭(かざひのみさい)」があり、収穫を迎えた月に
神嘗祭が行われる。お米は命をつないでくれる大変ありがたいもの。それを授けてくれた神さまへのお礼は、国民代表である天皇にとって、何よりも大事な行事として、伊勢神宮で行われているのだ。
1年間の主な恒例祭典と行事一覧
1月
1日 歳旦祭|新年のお祝い
3日 元始祭|皇統のはじめをお祝い
11日 一月十一日御饌|神々に神饌を奉り、五丈殿で舞楽を奉納
2月
11日 建国記念祭|国のはじめをお祝いし発展をお祈り
17~23日 祈年祭|五穀豊穣をお祈りし、大御饌の儀と奉幣の儀が行われる
23日 天長祭|天皇のお誕生日をお祝い申し上げる祭り
3月
春分の日 御園祭|神嘗祭付属の祭りで、野菜、果物などの豊作をお祈りする
4月
上旬 神田下種祭|神嘗祭付属の祭りで、諸祭典にお供えするご料米の稲種を神田に蒔く祭り
28~30日 春の神楽祭|内宮神苑の野外特設舞台で舞楽を一般公開
5月
1日 神御衣奉織始祭|神御衣祭に付属する祭り。和妙(にぎたえ)と荒妙(あらたえ)を奉職するにあたって行われる
13日 神御衣奉織鎮謝祭|神御衣が無事に織り上がったことを感謝
14日 風日祈祭|御幣・御蓑、御笠を奉り風雨の災害なく五穀豊穣をお祈りする
上旬 神田御田植初|お田植えを行う
6月
1日 御酒殿祭|ご料酒がうるわしく醸造されるようお祈りする
15日 御卜|祭典に奉仕する神職が、奉仕直前に神の御心にかなうかどうかをうかがう
15~25日 月次祭|由貴大御饌を2回たてまつり、正午に奉幣の儀が行われる。諸宮社でも祭りが行われる
30日 大祓|大祭の前月末日の清めの神事
8月
4日 風日祈祭|御幣をたてまつり、風雨の順調、五穀豊穣をお祈りする
9月
上旬 抜穂祭|神嘗祭付属の祭りで、ご料米の稲穂を抜き奉る祭り
22~24日 秋の神楽祭|4月と同じ
中秋 神宮観月祭|歌の披講と舞楽が行われる
10月
1日 御酒殿祭|6月と同じ
1日 神御衣奉織始祭|5月と同じ
5日 御塩殿祭|諸祭典にお供えする御塩がうるわしく奉製されるようにお祈りし、塩業に従事する人の守護をお祈りする
13日 神御衣奉織鎮謝祭|5月と同じ
14日 神御衣祭|5月と同じ
15日 御卜|6月と同じ
15~25日 神嘗祭|その年の新穀を大御神に奉り、ご神徳に感謝申し上げる最も由緒深い祭り
11月
23~29日 新嘗祭|新穀を陛下御自ら神々にたてまつられ、またお召し上がりになる大儀が宮中で行われるに際して、神宮へは勅使を遣わされ奉幣の儀が行われる。それに先だって神饌をたてまつり、大御饌の儀を行う
12月
1日 御酒殿祭|6月と同じ
15日 御卜|6月と同じ
15~25日 月次祭|6月と同じ
31日 大祓|6月と同じ
毎日
日別朝夕大御饌祭
伊勢神宮
住所|三重県伊勢市宇治館町1
Tel|0596-24-1111(神宮司庁)
text=Ichiko Minatoya,Takehiro Nambu photo=Harumi Obama,Ko Miyaji,Haruo Nakano,Tsutomu Watanabe illustration=matya、A2WORKS
2017年 別冊「伊勢神宮と出雲大社」