TRADITION

古代より受け継がれる、
伊勢神宮の行事

2020.10.22
古代より受け継がれる、<br>伊勢神宮の行事

伊勢神宮で行われるお祭りの数は、年間約1500にも及びます。それらは一体どのような意味を持つのか? 國學院大學・茂木貞純先生にうかがいました。

監修者
國學院大學・茂木貞純さん
神道文化学部教授。専門は神道祭祀学、戦後神道史。古宮神社(埼玉県熊谷市)宮司。

古来継承されたお祭りの数々

神嘗祭では付属する祭りが多い。年中行事の中でも、とても大切なものだということがわかる

伊勢神宮で行われているお祭りは、五穀豊穣、国家安泰、日本の平安などを祈願して、古代以来、天皇が行ってきたもの。伊勢神宮では年間1500以上のお祭りが行われているのだが、伊勢神宮には内宮と、外宮のほか、大小125にも上る宮社があり、それぞれが一年の間に決められたお祭りを行っている。わかりやすいのは朝夕、神さまにお食事を差し上げるお祭り。これだけで365日×朝夕2回行われる。

数あるお祭りの中でも、特に重要なのは三節祭と呼ばれる神嘗祭(かんなめさい)と年2回の月次祭(つきなみさい)。とりわけ大事なのは神嘗祭(かんなめさい)で、これはお米づくりと密接にかかわっている。ニニギノミコトが地上に降りるとき、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が自分が育てていた稲を託し、地上で米づくりをはじめるようにしたとされている。つまり、米は神さまからの授かり物。そして国が栄える=五穀豊穣であり、そのために祈りを捧げることが、国の代表たる天皇の一番大切な仕事だった。

お米づくりは月の「神田下種祭(しんでんげしゅさい)」からはじまり、苗を田に植えはじめる「神田御田植初(しんでんおたうえはじめ)」、雨風の被害に遭わないように祈る「風日祈祭(かざひのみさい)」があり、収穫を迎えた月に

神嘗祭が行われる。お米は命をつないでくれる大変ありがたいもの。それを授けてくれた神さまへのお礼は、国民代表である天皇にとって、何よりも大事な行事として、伊勢神宮で行われているのだ。

最も重要なお祭り神嘗祭。一年の豊作を感謝し、新米を神に捧げる祭り。このとき神に捧げられる神饌にはお米以外にお米からつくられる白酒・黒酒、お餅、さらに海山の幸が並べられる

1年間の主な恒例祭典と行事一覧

1月
1日 歳旦祭|新年のお祝い
3日 元始祭|皇統のはじめをお祝い
11日 一月十一日御饌|神々に神饌を奉り、五丈殿で舞楽を奉納

2月
11日 建国記念祭|国のはじめをお祝いし発展をお祈り
17~23日 祈年祭|五穀豊穣をお祈りし、大御饌の儀と奉幣の儀が行われる
23日 天長祭|天皇のお誕生日をお祝い申し上げる祭り

3月
春分の日 御園祭|神嘗祭付属の祭りで、野菜、果物などの豊作をお祈りする

4月
上旬 神田下種祭|神嘗祭付属の祭りで、諸祭典にお供えするご料米の稲種を神田に蒔く祭り
28~30日 春の神楽祭|内宮神苑の野外特設舞台で舞楽を一般公開

5月
1日 神御衣奉織始祭|神御衣祭に付属する祭り。和妙(にぎたえ)と荒妙(あらたえ)を奉職するにあたって行われる
13日 神御衣奉織鎮謝祭|神御衣が無事に織り上がったことを感謝
14日 風日祈祭|御幣・御蓑、御笠を奉り風雨の災害なく五穀豊穣をお祈りする
上旬 神田御田植初|お田植えを行う

6月
1日 御酒殿祭|ご料酒がうるわしく醸造されるようお祈りする
15日 御卜|祭典に奉仕する神職が、奉仕直前に神の御心にかなうかどうかをうかがう
15~25日 月次祭|由貴大御饌を2回たてまつり、正午に奉幣の儀が行われる。諸宮社でも祭りが行われる
30日 大祓|大祭の前月末日の清めの神事

8月
4日 風日祈祭|御幣をたてまつり、風雨の順調、五穀豊穣をお祈りする

9月
上旬 抜穂祭|神嘗祭付属の祭りで、ご料米の稲穂を抜き奉る祭り
22~24日 秋の神楽祭|4月と同じ
中秋 神宮観月祭|歌の披講と舞楽が行われる

10月
1日 御酒殿祭|6月と同じ
1日 神御衣奉織始祭|5月と同じ
5日 御塩殿祭|諸祭典にお供えする御塩がうるわしく奉製されるようにお祈りし、塩業に従事する人の守護をお祈りする
13日 神御衣奉織鎮謝祭|5月と同じ
14日 神御衣祭|5月と同じ
15日 御卜|6月と同じ
15~25日 神嘗祭|その年の新穀を大御神に奉り、ご神徳に感謝申し上げる最も由緒深い祭り

11月
23~29日 新嘗祭|新穀を陛下御自ら神々にたてまつられ、またお召し上がりになる大儀が宮中で行われるに際して、神宮へは勅使を遣わされ奉幣の儀が行われる。それに先だって神饌をたてまつり、大御饌の儀を行う

12月
1日 御酒殿祭|6月と同じ
15日 御卜|6月と同じ
15~25日 月次祭|6月と同じ
31日 大祓|6月と同じ

毎日
日別朝夕大御饌祭

 

伊勢神宮
住所|三重県伊勢市宇治館町1
Tel|0596-24-1111(神宮司庁)

text=Ichiko Minatoya,Takehiro Nambu photo=Harumi Obama,Ko Miyaji,Haruo Nakano,Tsutomu Watanabe illustration=matya、A2WORKS
2017年 別冊「伊勢神宮と出雲大社」


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