Discover Japan Lab.大解剖!③
『輪島キリモト 輪島塗』
11月22日、渋谷PARCOの1階にショップ「Discover Japan Lab.」が誕生。ニッポンのモノづくりをリサーチし再発見する、店舗の全容をお届け。今回は、伝統の輪島塗の技術を継承しながらも、現代の生活に馴染むうつわや家具をつくる「輪島キリモト」。Discover Japan Lab.の天板に見られるその哲学を紹介する。
代表 桐本泰一さん
大学でプロダクトデザインを専攻。卒業後はオフィスプランニングに携わった後、輪島に帰郷。家業の朴木地業の弟子修業を経て、漆器造形デザインや家具、建築内装などの創作をはじめる
“伝承文化”ではなく“伝統文化”をつくる
地模様のある麻布の微妙な凹凸が光を反射し、見る角度によって違った表情を生み出す。柔らかくも凛とした強さが感じられるテーブルトップ——。これが、輪島キリモトがDiscover Japan Lab.のために仕上げてくれた天板だ。
石川県輪島市で200年以上、木と漆の仕事にかかわってきた桐本家は、代表の桐本泰一さんで7代目を数える。「4代目までは漆器製造販売をしており、私の祖父にあたる5代目の久幸が1929(昭和4)年に朴木地屋・桐本木工所に転業しました」と家系図を示しながら、泰一さんが教えてくれる。朴木地とは、輪島塗では4つに分かれている木地師の職種のひとつで、猫足や片口、銚子など複雑なかたちを得意とする専門職だ。
輪島塗の伝統を引き継ぎながら、泰一さんが大切にしているのは、”木と漆が現代の暮らしに溶け込むものづくり”。大学でプロダクトデザインを専攻した泰一さんは「デザインは人をホッとさせる、気持ちよくさせることだと学び、電流が走ったんです」と話す。「漆を使ったデザインで人を和ませることはできないか。この想いが原点になりました」と振り返る。
卒業後に勤めたオフィスプランニングの会社では、オフィス家具は無機質なものが多く、商業空間に漆の姿がないことを実感。20代半ばで輪島に帰郷して師の修業を積んだ後は、父・俊兵衛が建てた大型家具もつくることができる工房で、家具や建築内装などの創作も手掛けるようになった。
輪島キリモトでは「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に輪島塗として定義されている技法では下地塗り(中身)にしか混ぜない輪島地の粉を、商品によって中塗りや上塗り(外身)にも使う。泰一さんは「表面に近い部分で再度地の粉を使うことで、金属のナイフやスプーンを使っても傷がつきにくくなります」と説明する。Discover Japan Lab.の天板にも、オリジナルの麻布を張り、漆、地の粉などを塗り込むことで、天板としての強さを生み出す独自の「漆布みせ仕上げ」の技法が施されている。
泰一さんは言う。「輪島塗のいわゆる『定義』からは外れるのかもしれませんが、昔ながらのままにつくる『伝承』に対して、時代に合わせて変化も可能なのが『伝統』なのだと考えています。私は、伝統工芸としての輪島塗を継いでいきたいと思います」。
文=本間朋子 写真=鈴木規仁
1|Discover Japan Lab.大解剖!①
2|Discover Japan Lab.大解剖!②『大蔵山スタジオ 伊達冠石』
3|Discover Japan Lab.大解剖!③『輪島キリモト 輪島塗』