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Discover Japan Lab.大解剖!③
『輪島キリモト 輪島塗』

2019.12.25
Discover Japan Lab.大解剖!③ <br class=“none” /><b>『輪島キリモト  輪島塗』</b><br class=“none” />
伊達冠石の台座に輪島の技術が生かされた漆塗天板がのる。これらの融合によって象徴的なテーブルが完成した

11月22日、渋谷PARCOの1階にショップ「Discover Japan Lab.」が誕生。ニッポンのモノづくりをリサーチし再発見する、店舗の全容をお届け。今回は、伝統の輪島塗の技術を継承しながらも、現代の生活に馴染むうつわや家具をつくる「輪島キリモト」。Discover Japan Lab.の天板に見られるその哲学を紹介する。

輪島キリモト
代表 桐本泰一さん

大学でプロダクトデザインを専攻。卒業後はオフィスプランニングに携わった後、輪島に帰郷。家業の朴木地業の弟子修業を経て、漆器造形デザインや家具、建築内装などの創作をはじめる

“伝承文化”ではなく“伝統文化”をつくる

右から、3代目・久太郎が1911(明治44)年に製作した夜食膳。伝統の輪島塗の技法で仕上げた「すぎ椀(中)」(1万7600円)。金属製のカトラリーも使えるよう、輪島地の粉(珪藻土)を混ぜた漆で仕上げた「おわん(大)」。(1万7600円)筋をつけることでモダンな装いにした「千すじやま椀(ねず)」(1万6500円)

地模様のある麻布の微妙な凹凸が光を反射し、見る角度によって違った表情を生み出す。柔らかくも凛とした強さが感じられるテーブルトップ——。これが、輪島キリモトがDiscover Japan Lab.のために仕上げてくれた天板だ。

石川県輪島市で200年以上、木と漆の仕事にかかわってきた桐本家は、代表の桐本泰一さんで7代目を数える。「4代目までは漆器製造販売をしており、私の祖父にあたる5代目の久幸が1929(昭和4)年に朴木地屋・桐本木工所に転業しました」と家系図を示しながら、泰一さんが教えてくれる。朴木地とは、輪島塗では4つに分かれている木地師の職種のひとつで、猫足や片口、銚子など複雑なかたちを得意とする専門職だ。

輪島塗の伝統を引き継ぎながら、泰一さんが大切にしているのは、”木と漆が現代の暮らしに溶け込むものづくり”。大学でプロダクトデザインを専攻した泰一さんは「デザインは人をホッとさせる、気持ちよくさせることだと学び、電流が走ったんです」と話す。「漆を使ったデザインで人を和ませることはできないか。この想いが原点になりました」と振り返る。

卒業後に勤めたオフィスプランニングの会社では、オフィス家具は無機質なものが多く、商業空間に漆の姿がないことを実感。20代半ばで輪島に帰郷して師の修業を積んだ後は、父・俊兵衛が建てた大型家具もつくることができる工房で、家具や建築内装などの創作も手掛けるようになった。

輪島キリモトでは「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に輪島塗として定義されている技法では下地塗り(中身)にしか混ぜない輪島地の粉を、商品によって中塗りや上塗り(外身)にも使う。泰一さんは「表面に近い部分で再度地の粉を使うことで、金属のナイフやスプーンを使っても傷がつきにくくなります」と説明する。Discover Japan Lab.の天板にも、オリジナルの麻布を張り、漆、地の粉などを塗り込むことで、天板としての強さを生み出す独自の「漆布みせ仕上げ」の技法が施されている。

泰一さんは言う。「輪島塗のいわゆる『定義』からは外れるのかもしれませんが、昔ながらのままにつくる『伝承』に対して、時代に合わせて変化も可能なのが『伝統』なのだと考えています。私は、伝統工芸としての輪島塗を継いでいきたいと思います」。

今回、天板に採用した素材。モダンな色合いは、超微粒子のチタニウムの粉を混ぜてつくった白漆をベースに、黒漆を混ぜ合わせグレーのグラデーションを生み出している
輪島キリモトで使っている「布着せ」の布は、寒冷紗や麻布。布地や和紙の表情を生かした漆仕上げをするため、麻布は滋賀県の工房でオリジナルのものを編んでもらっている
大型の家具もつくれるようにと天井を高くした工房の1階には、木材を加工する大型機械が並ぶ。2階は木地仕上げと漆作業を行う部屋がある。製作の様子や木地サンプルの見学も可(要予約)

輪島キリモト 輪島工房
住所:石川県輪島市杉平町成坪32
Tel :0768-22-0842
www.kirimoto.net
※要予約

1972(昭和47)年まで工房として使っていた場所を、ギャラリーと店舗に改装。一般の人が触れる機会の少ない漆を塗る前の「木地」も販売する。桐本木工所の原点「木と漆」が感じられる場所だ

輪島キリモト 本町店
住所:石川県輪島市河井町1-172
Tel :0768-22-7494
営業時間:8:30〜12:00、土・日曜、祝日〜15:00
定休日:水曜

文=本間朋子 写真=鈴木規仁

2019年12月号特集「人生を変えるモノ選び。」

《Discover Japan Lab.大解剖!》
1|Discover Japan Lab.大解剖!①
2|Discover Japan Lab.大解剖!②『大蔵山スタジオ 伊達冠石』
3|Discover Japan Lab.大解剖!③『輪島キリモト 輪島塗』

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