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多拠点活動という、新しい移住のかたち

2017.2.8

ディスカバー・ジャパン最新号「積極的移住のススメ」に掲載中の、奈良・三重・和歌山との共同企画「紀伊半島で移住体験!」では、移住体験者として選ばれた3名のクリエイターが未来の自分像を探しに、各県への移住者たちのもとへと訪れました。ここでは誌面に盛り込めなかった、アナザーストーリーを随時更新。地方に住む人たちとの交流を経た先に彼らが見出した答えとは。

【移住体験した人】

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秋山まどかさん
コマーシャルフォトグラファー、「太陽と風の写真館」館長。1979年生まれ。奈良県出身。広告、雑誌、webなどで、主にポートレートを撮影する
http://taiyou-to-kaze.net

東京で写真家として活躍している秋山まどかさんの生まれ故郷は奈良県。一見すると移住先として奈良は選択肢に入りにくいですが、なぜ奈良への移住体験ツアーに参加したのでしょうか? 「両親の住む奈良県内で、別の場所に住むというのは親が寂しがってしまいますから、移住は正直難しい。しかし写真家という仕事に従事している私にとって、さまざまな土地で写真を撮ることこそが生業。そうしたさまざまな場所で写真を撮るには拠点がたくさんあるほうがいいと考えています」。移動しながら働くマルチハビテーションという意識をもつ秋山さんにとって、奈良に拠点をもつことは自然なことでした。とりわけ大事にしていたのが、そうした拠点で生まれる縁。「場をつくると、そこへさまざまな人が集まる。実家だとそうはいきません。奈良県東吉野にあるシェアオフィス『オフィスキャンプ東吉野』では私の仕事と関係するようなクリエイターが多く集まることから、私にとっては刺激を得られる場所になる」と考え移住体験に参加したのです。

_DSC1513 実際に移住体験者として奈良に訪れ、オフィスキャンプ東吉野の運営者である坂本大祐さん(写真中央)をはじめとする移住・先住者と親睦を深めた秋山さん。体験中に出会った一人でもあり、宇陀市でフリーランスの編集・ライターとして活躍する赤司研介さん(写真左)自身も、オフィスキャンプ東吉野を通じて広がった縁で仕事の幅が広がったと話します。「これこそ場所の力。人とのつながりが、豊かな生活と仕事を生み出しているのだと感じます」と秋山さん。
「もともとある場所を捨てるのではなく、新たな活動の範囲を広げるという考え方。地元の人の暮らしを知ることで、人生が豊かになるだけでなく、クリエイターとしての発想力やアイデアも生む気がします」と坂本さんも話します。実際に移住した坂本さんと赤司さんは、のんびりとした暮らしが素晴らしいと話すも、縁が広げた仕事のおかげから忙しい日々を送る毎日だと笑います。「だけど、ここでの暮らしは遊ぶ! と決めてオフを過ごすのではなく、仕事をしながら遊んでいる感覚でもある。オンとオフの境目がないことが、ストレスをためないことにもつながっているのだと思います」。

_DSC1736_DSC8870 クリエイターが集まる拠点として、また地元の人たちも気軽に集えるオフィスキャンプ東吉野。今回、移住体験先としてお世話になった「坂利製麺所」の坂口利勝さんも、こうした場所があることに驚き、そこから地元の人同士が新たな交流を生み出すことができると感動した様子です。秋山さんもそうした坂口さんの感情の動きを見て、自身が拠点をもつ土地とは別の場所を行き来することで、感情や情報の共有・伝聞ができるのではないかとの思いを強めた様子。「移住」ではなく、「多拠点」で活動するという選択は、今後地域の魅力を広めていく役割を担うとも考えられます。またそれはクリエイターのみならず、移住者がもたらす先住者との交流で生まれる地域の新しい力を予感させるものでもあるのでしょう。

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