銀座《スタア・バー》の岸 久が語る、
世界のバーを変えたNINJA ICE®とは?
前編|氷と向き合い続けたその原点に迫る
氷は、バーにおける「もうひとつの主役」だ。その可能性を世界へ示してきたのが、「スタア・バー」を率いるバーテンダー、岸 久さんである。氷は脇役といった常識を覆し、日本のみならず世界のバーに新たな価値観をもたらした。磨き抜かれた一杯を追求する彼は、いま自ら天然氷づくりにも挑んでいる。日本のバー文化を変えてきた、氷の哲学に迫る。
バーの主役は氷!
世界を魅了するNINJA ICE®

クリスタルのような圧倒的な透明度ゆえ、グラスに液体を注ぐと氷と液体の境界線が見えなくなり、忍者の隠れ身の術のように消えてしまう現象からこう呼ばれる。
氷と向き合い続けた、
その原点とは?
「氷は鮨店におけるシャリのような存在」と表現し、40年ほど前から氷の可能性に着目してきた岸 久さん。まさに、氷の第一人者である。

だが、原点は意外なほど切実だった。岸さんが銀座でバーテンダーとして修業をはじめた23歳の頃、バーは限られた人だけが訪れる特別な社交場だった。高価な酒が並び、一流の接客が求められる世界。その中で岸さんは、「自分にしかできないもてなし」を必死に探していたという。
「50代、60代の社長や先生と呼ばれるお客さまが多く、若い僕をかわいがってくれました。でも当然、力不足でチャンスに応えられない。人柄やサービス以外に、お客さまに喜んでいただけるものを探していました。そこで目をつけたのが氷だったのです」

当時、バーで使われる氷は、純氷を砕いたカチワリが一般的だった。岸さんは、もっと踏み込んだ高いクオリティの氷を求めた。
「氷にはもっと可能性があるんじゃないかと思ったんです。いいお酒を使って、さらに氷を替えることで、もっと違う味わいや美味しさを出せるのではないかと」
まだバーテンダーの世界においても、誰も本気で注目していなかった氷に、岸さんは可能性を見出した。アイスピックで成形するのが当たり前だった時代に、包丁で氷を自在に切り出し、角度や大きさを整え、グラスとの相性を追い込んでいく。そうした試行錯誤の先に生まれたのが、2000年に開業した銀座「スタア・バー」で使うグラスをきっかけに生まれた、多面体にカットされた独自の「ブリリアントアイス」だった。
このブリリアントアイスは業界に衝撃を与えた。透明な氷がグラスの中で光を受け、宝石のように輝く。だが、岸さんにとって重要だったのは見た目だけではない。
「氷はかたちが重要なのではなく、グラスの中で果たす機能が大事なんです」
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text: Yumiko Numa photo: Satoshi Inokuchi
2026年7月号「納涼、しましょ。」



































