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熊本・南小国の林業と暮らしに
耳を傾ける「Foreque」の挑戦。

2026.4.10
熊本・南小国の林業と暮らしに<br>耳を傾ける「Foreque」の挑戦。

美しい里山の原風景が広がる熊本・南小国町。2025年12月、人口約3600人の小さな農村に、新たな一棟貸しの宿「竹の熊 正倉」が誕生。日本の林業が抱える課題の解決と地域創生のため挑戦する「Foreque」の取り組みに迫る。

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「何をではなく、なぜつくるのか?
これからも問い続けていきます」

2025年12月に新たに誕生した「竹の熊 正倉」

穴井俊輔さんは、プロダクトや場をつくるとき、「なぜそれをつくるか」という目的意識を大切にしていると続ける。
「『何をつくるか』ではなく、『なぜいま、これをつくる必要があるのか』を常に家族やスタッフと議論しています。そこで出てくる共通認識は、私たちが守りたいものは、人と自然が密接につながった南小国の風景であり、小国杉の魅力を通じて発信することで、歴史や文化とともに未来に紡いでいきたい、という想いなのです」

小国杉の無垢材を贅沢に使用したFILの「MASS Series」。世界三大デザイン賞のひとつ「iFデザインアワード」を受賞。プロダクトデザインは木下陽介氏+野口優輔氏が率いるCANUCH Inc.

たとえば、世界的なデザイン賞を受賞し、国内外のホテルで採用されているFILのチェア「MASS Series」。
「阿蘇山の頂上に皆で登ったとき、通り抜けた風の気持ちよさや、山頂から見た軽快な風景を重厚な木と繊細なフレームのコントラストで表現しました。また、うつわのシリーズ『FIL PORCELAIN』は、小国杉の灰釉を使用し、阿蘇独特のカルデラブルーを想起させる淡い色合いを取り入れています」

ローカルには
人を惹きつける力が満ちている

建築家・下川徹氏が設計を手がけた「喫茶 竹の熊」。水庭を中心とし、高床式の板の間、回廊、喫茶室がそれを取り囲むように配置。南小国の林業、農業、観光の魅力が集約されている。小国杉の丸太を使用したテーブルや籐の家具もオリジナル
写真=吉澤健太

そのアプローチは、山や森だけではない。2023年のオープン以来、観光地ではない南小国に世界中から3万人が訪れるきっかけをつくった「喫茶 竹の熊」は、この地の水の物語がテーマだという。
「我々がきれいに手入れをする山からミネラル豊富な水が湧き、田畑を潤して、米や野菜を育む。そして筑後川から海へと流れ、海の恵みへとつながり、また雨として注がれることで美しい草原が生まれる。1000年続くその営みを建築に落とし込みました」

空と稲穂を映し出す風光明媚な水庭は、メダカや金魚が生息し、鴨が遊びにくるビオトープ。照明を一切入れていないので、時間や季節によって変化する情景を体感しながらドリンクが楽しめる。屋根には約6万6000枚の小国杉の板が使用されている
写真=吉澤健太
新嘗祭は年を重ねるごとに参加者が増え、地元で定着している。穴井さんと小国杉のプロジェクトを行う九州大学の研究室が設計を手掛けた小国杉を使用した特製テントも建てられた

毎年11月には五穀豊穣や収穫を神さまに感謝する新嘗祭を開催し、地元の無形文化財である神楽も奉納。自然への敬意を日常として表現し、地域に根づいた信仰や精神を次世代に伝えている。

さらに、穴井さんが「いま一番力を注ぎたい」と熱く語るのが木育だ。自治体と協働し、保育園、小中学校21クラスの子どもたちが、山での間伐体験やデジタル技術を駆使した段階的なワークショップなどを通して山とかかわるカリキュラムをつくっている。

パリの「Miya Shinma PARFUMS」とコラボし、阿蘇山の溶岩石に小国杉のフレグランスをまとわせた「Pot-Pourri Susano 素戔嗚」やソイワックスを使用した3種類のキャンドル「Aroma Candle」など小国杉の魅力を体感できる作品を展開

そういった独自の取り組みが、地域創生につながり、南小国町に新たな価値を生み出しているのだ。
「『地方にイノベーションを起こすためには、新しいものを取り入れないといけない』という視点も一理あるかもしれない。でもその前に、まず地域と真摯に向き合い、情熱をもって伝統や文化を色濃く残していくことが、持続的な地域活性化や課題解決につながると確信しています」

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01|一棟貸しの宿《竹の熊 正倉》
02|林業と暮らしに耳を傾ける「Foreque」の挑戦

text: Ryosuke Fujitani photo: Yoshikazu Shiraki, Isamu yamamoto

2026年2月号「地域を変える企業」

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