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印度カリー子にとって朝スパイスのチカラは
身体を目覚めさせ、元気をくれる
エッセイ《読む朝食》

2023.6.11
印度カリー子にとって朝スパイスのチカラは<br>身体を目覚めさせ、元気をくれる<br><small>エッセイ《読む朝食》</small>

朝ごはんとの向き合い方や内容は人それぞれ。《私の定番、忘れられないあの味》をテーマにしたエッセイを4名の方に寄稿いただきました。 今回は、印度カリー子さんが「朝スパイスのチカラ」について語ります。

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印度カリー子(いんどかりーこ)
スパイス料理研究家兼タレント。2021年、東京大学大学院農学生命科学研究科修了。JAPAN MENSA会員。「スパイスカレーをおうちでもっと手軽に」をモットーに、初心者のためのオリジナルスパイスセットの開発・販売をするほか、レシピ本執筆、大手企業と商品開発・マーケティング、コンサルティングなど幅広く活動。著書累計発行部数は38万部超(2023年3月現在)、全16作

私はスパイス料理研究家です。スパイスキットやカレーなどの製品開発から販売まで行っている事業をやりつつ、カレーやスパイスに関するレシピ本をこれまで16冊出版しています。日々、新しいレシピを書くことが習慣となっていて、スパイス漬けの毎日です。
 
毎食のごはんも大体スパイスが入っています。毎回カレーだけを食べているわけではなく、皆さんが普段食べているような食事、たとえば、ハンバーグや野菜炒め、ナポリタンなどにもスパイスを入れて食べています。スパイスを入れることで、料理にアクセントがついて美味しくなったり食べ飽きにくくなったりします。
 
そんな中で一番スパイスをとるのにオススメなのは朝。朝スパイスをとると、元気になります。
 
朝起きたては体温が低く、胃や腸が動いていない状態です。血圧も低く、脳も活発に動いていません。身体を目覚めさせ元気に一日をスタートさせるためには、朝ごはんでしっかりエンジンをかけることが大切で、朝ごはんにより一日のパフォーマンスが左右されるといっても過言ではありません。
 
スパイスには血行や代謝を促すもの、消化液の分泌を促すものなどがあります。朝にスパイスをとるとそれまで寝ていた脳や消化器が動き出し、スムーズに体温が上がります。特にスパイスたっぷりのカレーを食べると、いつもより活発に活動ができたり、朝からクリアな思考ができたり、身体も動かしやすくなります。また体温が上がると私はアレルギー症状が若干和らぐ傾向にあるため、花粉症の時期は朝にカレーを食べることが多くなります。
 
身体へのよさ以外にも、心にもよいスパイスがあります。ピリッとした刺激のあるチリペッパーなどは食べると脳が幸せホルモンを出してくれるので、朝なんとなくうつっぽい日も、カレーを食べれば元気がわき、今日も一日頑張ろうという気持ちにしてくれます。私は2年前まで大学院で学生をしていましたが、元気の出ない朝はカレーで活力を入れていて、カレーを食べれば通学の満員電車も力強く耐えることができました(笑)。
 
午前中になんだかうつっぽいかも、朝の階段がしんどい、通勤時に気力がなく帰りたくなってしまうという人は、試しに朝ごはんにカレーを食べてみては。たくさん食べる必要はないので、前日につくり置きしておいて、いつものご飯茶碗に少しかけて食べるところからおすすめします。
 
ほかにも朝カレーにはいいことがたくさんあるのですが、正直なところ、最近は超元気に頑張りたい日だけ、朝カレーを食べるようにしています。それは最近仕事で昼や夜にカレーを食べることも多く、ずっとカレーだけを食べていると味覚が鈍ってきてしまうためです。それでも外でアクティブに動くロケのときや、絶対にうまく決めたい仕事が控えているときなどは朝からカレーを食べて、気持ちを上げて最高のパフォーマンスで仕事をこなすようにしています。
  
朝カレーを食べない日は、だいたいスパイス料理で朝ごはんを用意します。用意するといっても、せいぜい、前日までにつくっておいたものを温めたり、既存の何かにかけたりするくらいのスパイス料理です。朝はだいたい時間がないので、凝ったスパイス料理を一からつくるということはほとんどありません。
 
たとえば、私がよく朝に食べているのはグラノーラ。オーツ麦にシナモンやカルダモンなどのスパイスを混ぜてこんがり焼き、好きなドライフルーツやナッツなどと一緒に合わせておきます。それを、牛乳やハチミツヨーグルトと合わせたりして食べます。バナナやリンゴなどの果物を合わせるときもあります。寒い朝は甘い香りのシナモンを香らせたグラノーラをホットミルクと食べることが多いですが、暑い朝は爽やかなカルダモンを香らせたグラノーラを冷たい牛乳と食べることが多いです。グラノーラは焼いた後、日持ちがするので、つくるときはいつもたくさんつくります。まとめて5食分くらいつくっておけば、平日朝はぐっと楽ができます。シナモンなどのスパイスは抗酸化作用もあるため、美容や健康を意識しだすととりたくなるスパイスのひとつ。毎日摂取したいので、カレーやグラノーラ以外にも、ジャムパンやフレンチトーストなどにも気軽にかけて食べています。
 
ほかにも、私のかけるだけのスパイス料理の代表といえば、卵かけご飯に五香粉。五香粉はもともと中国・台湾料理に使われるスパイスミックスで、八角、クローブ、シナモン、フェンネル、ナツメグなどのスパイスを5つ混ぜ合わせたものです。いろいろな製品を食べ比べた末に、ついに自分で調合し出して、いまではオリジナルブレンドの五香粉を愛用しています。配合の割合は、大好きなスターアニスがほとんどを占めていて、ほかのスパイスは少し香らせる程度。そして五香粉をつくるときに、必ずスパイスと塩を一緒にミルにかけて細かい粉末状にします。五香粉塩ですね。こうしておくと使い勝手がよく、生卵にかけるときはいつもより少し少なめに醤油を垂らして、五香粉塩を振りかけます。生卵以外にも納豆ご飯、塩ラーメン、焼きそば、きのこの天ぷらなどによく振りかけて食べています。
 
ちょっと余裕のある朝には、スパイスを一緒に焼いたホットサンドやシナモンロールなどを朝から焼いたりもします。そこにマサラチャイなどを合わせれば完璧。朝ご飯だけでも楽しめるスパイス料理は本当にたくさんあります。
 
スパイスは何かに振りかけるだけでもスパイス料理になるのがオイシイところ。おしゃれに見せかけてズボラを助ける魔法でもあります。
 
スパイスで迎える朝ごはんは美味しくて、身体と心によくて、ひと振りで脱マンネリ。こいつを知ってしまったからにはもうやめられません。まだまだこれからも美味しいスパイス朝ごはんを新規開拓していこうと思います。

カンタン・スパイス朝ごはん
「至福のグラノーラ シナモン&黒糖バナナ(※)」に、牛乳(冬はホットミルクで)をかけたり、「フロム蔵王」の極ヨーグルトと「Manuka Health」のマヌカハニーをかけて食べるのもお気に入りです。休日の朝は「マサラチャイ(※)」を淹れたりも。
 
印度カリー子のスパイスショップで販売中

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上田優紀にとっての山の朝食
 
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illustration: Ayako Kubo
Discover Japan 2023年5月号「ニッポンの朝食」

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