日本人の心のふるさと
《伊勢神宮》の森の秘密
ご神木のお祭り【後編】
2000年以上も続く悠久の歴史を誇る伊勢神宮。20年に一度の式年遷宮により、常に新しくみずみずしい姿を誇り、神宮を抱くように広がる豊かな森では大切に継承されてきた木々が育まれている。最後は、式年遷宮の重要な祭事のひとつである「ご神木のお祭り」をご紹介。
9年の歳月をかけ、33のお祭りと行事が行われる式年遷宮。「社殿建築のお祭り」、「神遷しのお祭り」と並ぶ重要な柱が「ご神木のお祭り」。神聖な木にまつわるさまざまな祭事は、神宮の歴史とともに連綿と受け継がれてきたものだ。遷宮に欠かせない木や森に畏敬の念を抱きつつ、粛々と行われる神秘的な営みを知っておきたい。
山口祭
新宮の御用材を伐り出すにあたり、御杣山の入り口に坐す神に伐採と搬出の安全を祈る。御杣山の場所は変遷しても、この祭は現在でもお膝元である神路山・高倉山の山麓で行われる
御杣始祭(みそまはじめさい)
御用材を木曽の御杣山で正式に伐りはじめるお祭り。ご神体をお納めする御器を奉製するための檜“御樋代木”を、山中で左右に並ぶ2本選び、古式の作法「三ツ緒伐り」で伐り倒す
御樋代木奉曳式(みひしろぎほうえいしき)
檜の大木を斧で伐り倒す「御杣始祭」の後、切り株に梢を挿して立てる“鳥総(とぶさ)立て”が行われる。再生の願いと木への感謝を表すもので、万葉集にも登場する古からの習わし
御杣山で伐採された御樋代のための御用材を、内宮と外宮の両宮域内の五丈殿前に曳き入れる儀式。伊勢に到着した御用材は、内宮・外宮とも古式のままに神域へ曳き入れられる
御船代祭(みふなしろさい)
御樋代をお納めする御器「御船代」の御用材となる檜を伐採するお祭り。内宮と外宮の宮域内に設けられた宮山祭場で、木曽の御杣山で木が伐り出される時間に合わせて営まれる
読了ライン
前回「第62回神宮式年遷宮」のご神木のお祭り
2005(平成17)年5月 山口祭
2005(平成17)年5月 木本祭
2005(平成17)年6月 御杣始祭
2005(平成17)年6月 裏木曽御用材伐採式
2005(平成17)年6月 御樋代木奉曳式
2005(平成17)年9月 御船代祭
2006(平成18)年4月 御木曳初式
2006(平成18)年4月 木造始祭
2006(平成18)年5〜7月 御木曳行事(第一次)
2006(平成18)年5月 仮御樋代木伐採式
2007(平成19)年5〜7月 御木曳行事(第二次)
※次期式年遷宮は2025(令和7)年から、山口祭をはじまりに9年の歳月をかけて行われる予定
text: Aya Honjo photo: Mariko Taya
写真提供=神宮司庁
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」