FOOD

《連載第1回》「SIIDA®」×日本の出汁文化
日本の風土が生み出す
鰹出汁の美味しさの秘密

2025.7.24 PR
<small>《連載第1回》「SIIDA®」×日本の出汁文化</small><br>日本の風土が生み出す<br>鰹出汁の美味しさの秘密

日本人にとって出汁って何だろう。そのことにずっと向き合ってきた企業が「味の素㈱」だ。家庭で手軽に鰹出汁を味わえる「ほんだし®」が生まれてから50余年を経て、2024年の秋、新たな出汁ブランド「SIIDA®」(シーダ)が誕生した。その開発の要だという静岡県焼津市の鰹節工場を、陶芸家のアセビマコトさんとともに訪れた。

アセビマコト
1964年、北海道生まれ。多摩美術大学を卒業後、1994年にうつわの制作を開始。1997年、横浜市石川町に築窯する。2001年、鎌倉に移転し、現在に至る。白マットの洋食器など、ゆるいフォルムとあたたかみのある表情のうつわが特徴。

小川幸広
「㈱柳屋本店」工場長。就職して以来、鰹節づくり一筋。焙乾ばいかんに不可欠な薪の調達も手掛け、急造庫と呼ばれる焙乾室で若手の人材を育てながら日々鰹節をつくっている。

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出汁の可能性を広げる、
新たなプロジェクトが誕生!

㈱柳屋本店の鰹節工場にて。中央がアセビマコトさん、右側が工場長の小川幸広さんと、研究開発部長の鈴木基裕さん。左側が味の素㈱SIIDA®開発チームの村瀬健哉さん、立山和美さん

SIIDA®(シーダ)は、出汁(DASHI)の二文字を逆さにして読んだ音である。そこには、日本人の食生活には当たり前すぎる出汁を、違う角度から見直してみたらどうなるだろう、という想いが込められている。

SIIDA®開発チームの間では、何より「日本の食文化である鰹節や出汁の魅力を、若い人たちに体感してもらいたい」という想いが強かったそうだ。そのために、鰹出汁の本命である鰹節の特徴を際立たせ、香りも味わいも異なる3種類の出汁パックをつくった。焚き火のように力強い風味の「焚(HUN)」、世界にひとつだけの焙乾ばいかん装置で燻したスモーキーな香りの「燻(KUN)」、発酵が生むまろやかなうま味の「酵(KOU)」。ただ美味しい出汁というだけではなく、特徴をはっきりと打ち出し、これまで出汁に親しんできた人にとっても新体験となるようなものを。

より多くの人に届け、との想いで声を掛けたのが、陶芸家のアセビさんだ。日常の食卓をやさしく包み込む、あたたかみのあるうつわを生み出すアセビさんに、SIIDA®に合ううつわの制作を依頼。鎌倉の工房ではどんぶり鉢とおちょこを試作中だという。どんぶり鉢!アセビさんのうつわでSIIDA®の出汁茶漬けやうどんを食べたら、さぞ美味しいだろうなと想像する。

急造庫で焙乾した鰹節(荒節)。ここから表面を削り、カビ付けして仕上げる枯節がマイルドで奥深い香りなのに対し、荒節は薪の香りをしっかり感じる燻香が特徴

さて、そもそも、鰹節に香りや味の違いがあるのだろうか?そんな疑問を胸に、鰹節メーカーの老舗「㈱柳屋本店」の工場を訪ねた。㈱柳屋本店は1868(明治元)年の創業。味の素㈱がほんだし®を発売してからはほんだし®に使われる鰹節を製造し、ともに出汁文化を広めてきた。

鰹節の香りは、煮た鰹を煙で燻して乾燥させる「焙乾」に大きく左右される。㈱柳屋本店が創業以来続けているのが、5階建てほどの高さの建物がまるごと乾燥機になったような急造庫で焙乾する方法。地下で大量の薪を燃やし、1〜5階にせいろにのせた煮鰹を重ね、上がってくる熱と煙で燻製していくというもの。1日5〜6時間薪を燃やし、煮鰹が乾燥するにしたがって場所を上に移していき、10〜20日かけて鰹節を仕上げていく。完成したものは「荒節」と呼ばれる。

「燻香を強くするために、うちは薪をたくさん使います。いい鰹節をつくるには、いい鰹だけではなく、いい薪も必要なんです」と小川さんは言う。そう、鰹節は、海と山の恵みがあってこそ生まれるのだ。

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美味しい出汁は
海と山の恵みから生まれる

鰹節づくりの一大拠点である静岡県焼津市の海

かつて、あるフランス人の料理人が言っていた。
「フランスでは、コンソメにしてもフォンドボーにしても、料理のベースとなるスープをとるのに多くの時間を費やします。それに対して日本の出汁は手軽だけれど味わい深い。それは、鰹節や昆布といった出汁素材が素晴らしいからです」

なるほど。素材があって、短時間で出汁をとれるのは、出汁素材が乾燥・発酵・熟成と手間と時間を費やしてできているからなのだ。そもそも周りを海に囲まれた日本には、出汁の原料となる鰹や昆布がごく身近にあった。そして出汁を手軽にとれるというところから、日本の食文化は発展してきた。

焼津港は、東洋一の遠洋漁業基地。船から下ろされた鰹は冷凍倉庫に保管され、セリにかけられる

現在、日本で鰹節の原料として使われる鰹の多くは、中西部太平洋など遠洋で漁獲されたものだ。鰹節には脂が少ない個体が適している。700〜1000tクラスのまき網船で1カ月〜1カ月半かけて漁をし、水揚げ後は船上で急速冷凍し、母港に戻ってくる。

㈱柳屋本店は専用の冷凍倉庫を持つ。セリで落とした鰹はそこでいったん保管し、必要な量をそのつど工場へ

焙乾に用いる薪はコナラやクヌギといった広葉樹。これらは30〜40年ほどで伐採すると、切り口からいくつものひこばえ(若い芽)を出す。そして30年もすれば再び立派な木に育つ。日本人はこうして森の恵みをいただきながら、山の手入れをし、山と深くかかわってきた。

㈱柳屋本店では長野県、山梨県、富山県など日本各地から、山でしっかり乾燥させた良質な薪を調達。林業との関係を大切にしている

さまざまな理由でこれらの薪の入手が難しくなっている昨今、小川さんは薪をつくる職人のもとに足を運び、日本の食文化にとっての薪の重要性を説き、貴重な薪を分けてもらっているという。その情熱に頭が下がる。

焼津の工場にストックされた薪。1日で7tほど使うという

㈱柳屋本店の鰹節づくりのこだわりは、大きく3つあると小川さんは言う。ひとつは、原料である鰹は脂分が少ない良質な鰹を使うこと。もうひとつは、鰹節づくりに適した薪を惜しみなく使い、燻香を大切にすること。さらに、それらを使命をもって行い、自分たちが培ってきた技術を若き職人に伝えていくことだと。

味の素㈱が贈る新しい出汁ブランドSIIDA®の根幹となる鰹節づくり。次回の「職人編」は、前半・後半にわたり、焼津の鰹節工場で荒節ができるまでの一部始終をお届けしよう。

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text: Yukie Masumoto photo: Maiko Fukui

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