羊蹄山を背にニセコ方面へ
キャンピングカーで美味しい北海道の旅へ

キッチンに冷蔵庫、ベッドを備えるキャンピングカー。普通免許で運転でき、仲間とワイワイ楽しみながら車中泊もOKとあれば、旅のツールとして申し分ない。夏から秋にかけての旅なら、道の駅に旬の食材があふれ、キャンプ場もよりどりみどりの北海道が最高だ。ドイツ人シェフのマーカス・ボスさんと美味しい北海道を旅する、全3回の《キャンピングカーで美味しい北海道の旅へ》の初回。

ドイツ生まれ。札幌を拠点にさまざまな食の活動を行う「MaY(メイ)」エグゼクティブシェフ。ヨーロッパ各地のミシュラン星付きレストランで修業を重ね、来日。北海道の美味しい素材と、その持ち味を引き出す料理を独自のスタイルで伝えている
北海道の食を楽しむ旅なら、6月から10月にかけてがおすすめというマーカスさん。アスパラガスにはじまり、サクランボ、メロン、トウモロコシ、ジャガイモといった北海道を代表する農作物が次から次へと旬を迎えるからだ。
この時期、近隣の生産者とともに札幌でマルシェを開いているマーカスさんは、北海道の野菜や果物を熟知し、お客に美味しい食べ方を伝えている。

篠原果樹園のオーナー・篠原光則さんと。マーカスさんが求めたのは明治時代から親しまれてきた在来品種「水門」。「この酸味がいいです。ジャムにしても美味しいし、バルサミコと煮詰めてソースにし、豚肉のソテーに合わせたら最高です」
今回の旅で最初に立ち寄った篠原果樹園は、そんな彼のイチオシの場所。札幌の南に位置する広大な斜面にサクランボやプラム、リンゴなどの木が並び、8月上旬までは真っ赤なサクランボを好きなだけほお張れる。

初日に目指すのは、北海道のシンボルである羊蹄山。羊蹄山がもたらす水や風、土のおかげで、この地はとても豊かだ。ルスツやニセコの道の駅に立ち寄れば、つやつやと輝く野菜、自家製のライ麦や野菜を用いたパン、良質な牛乳でつくるチーズ、地元のワインなどが目に飛び込んでくる。

キャンピングカー旅の醍醐味は、風景も食べ物もその土地の個性にどっぷり浸かり、安心して行き当たりばったりを楽しめるところ。焼きたてのパンが手に入ったら、気持ちのいい場所で車を止め、車内のキッチンでコーヒーをいれてちょっとひと息。
夜は道中で求めた食材とワインをゆっくりといただき、満天の星の下、テントを張る手間なくベッドをしつらえた車中で眠る。そこにはレンタカー&ホテルの旅では味わえない喜びと充実感があるはずだ。
文=増本幸恵 写真=小澤義人
2019年9月号 特集「夢のニッポンのりもの旅」