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京都で“どうした家康”【前編】
作家・柏井壽がひも解く!徳川家康と京都の深い関係

2023.3.18 PR
京都で“どうした家康”【前編】<br> 作家・柏井壽がひも解く!徳川家康と京都の深い関係

徳川家康とゆかりの深い土地といえば、まずは江戸と回答する方が大多数。もしくは、静岡県の駿府や、愛知県の岡崎を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、それは思い込みだったかもしれない。家康の生涯を追っていくと見えてくる、京都の深いかかわりを、作家・柏井壽さんが京都人ならではの目線でひも解いていく。

文=柏井 壽(かしわい ひさし)
1952年、京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業。一方で、「京都」、「日本旅館」、「食」をテーマとするエッセイ、小説を執筆。京都を舞台にした小説『鴨川食堂』シリーズから待望の続編『鴨川食堂ひっこし』(小学館)が3月7日に刊行

京都で家康といえば…
まずは二条城、金地院へ

「京都で“どうした家康”」というテーマでまず頭に浮かぶのは「二条城」。関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康が、上洛の際の宿泊所として築城した「二条城」は世界文化遺産にも登録され、多くの観光客で賑わっている。本丸と二の丸、ふたつの御殿はそれぞれ、手入れの行き届いた庭園を備え、四季折々の草花が目を癒してくれる。家康の遺髪が納められているという南禅寺「金地院」に建つ東照宮を拝観し、次はどこへ、と思いをめぐらせ、浮かんだのは神君伊賀越えだ。

「二条城 二の丸御殿」。東南から北西にかけて6棟が雁行形に立ち並ぶ御殿で、部屋数は33室、800畳余りもある。修復工事で美しい彫刻がよみがえった唐門も見事。本丸御殿は保存修理工事中。
画像提供:京都市元離宮二条城事務所

二条城
住所|京都府京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
Tel|075-841-0096
拝観時間|8:45~16:00(閉城17:00)
休城日|12月29日~31日、二の丸御殿は12月26日~28日、1月1日~3日及び1・7・8・12月の毎週火曜が観覧休止日
入城料・二の丸御殿拝観料|1300円
https://nijo-jocastle.city.kyoto.lg.jp/

「金地院」は応永年間(1394~1428年)に北山に創建された寺。一時荒廃したが、以心崇伝が南禅寺境内の現在地に移して復興させた。以心崇伝は徳川家康に仕え、ブレーンとして信頼を置かれた人物
苔むす参道など見どころが多い
江戸時代初期の枯山水庭園「鶴亀の庭」

金地院 
住所|京都府京都市左京区南禅寺福地町86-12
Tel|075-771-3511
拝観時間|9:00~17:00(12~2月は~16:30)
閉門日|なし
拝観料|大人1200円(一般拝観500円、特別拝観700円)

危機からの逃避!家康の「伊賀越え」

伊賀越えには諸説ある。写真は甘南備山の雄山と雌山の間の林道

本能寺の変の後、堺にいた家康はいったん京都に入り、追腹を切ると言いつつも、説得されて、結局は三河への帰還を目指す。その際に逃亡路としたのが、伊賀越えルートで、いまの京田辺市あたりを通ったとのこと。ここで生き延びられたから、後の天下取りにつながるので、つまり家康にとって、京都は恩義ある土地だと言える。

画像提供:京田辺市観光協会、京田辺市観光ボランティアガイド協会
徳川家康が伴った武将・穴山梅雪の墓所。伊賀越えの際、殺害されたとされ、悲運の武将として飯岡の村人が手厚く葬ったといわれる。現在は京田辺市飯岡区の共同墓地にある。京田辺市観光ボランティアガイドによる伊賀越えルートのツアーも開催(参加費1人500円、3人以下はグループで1500円)

穴山梅雪の墓 
住所|京都府京田辺市飯岡中峯57

疑問を解くカギは伏見にあり

1594年に豊臣秀吉が伏見城を築造する際につくられた伏見港。大阪との水運の拠点となり、江戸時代はさらに発展した

家康はその恩義に報いたのか。京都にどんな足跡を残したのか。その疑問を解くカギはどうやら伏見、とりわけ伏見城にあるようなのだが、洛南には疎いので、伏見に詳しい方からレクチャーを受けることにした。
教えを乞うたのは、京都府立京都学・歴彩館の若林正博さん。伏見の歴史、とりわけ伏見城の変遷に詳しいスペシャリストである。
伏見城がたどった歴史をうかがううち、目から何枚うろこが落ちたかわからない。うかつにも伏見城といえば秀吉、そう思い込んでいたが、家康が再建した話を忘れ去っていた。伏見城といっても、時期や役割、場所の異なる複数の城が存在していたのである。そのひとつが家康によって再建された城。そうか。そうだったのか。うかがった話は、これまで僕が抱いていた家康と京都の関係を、根底から覆すものだった。

それをこの目で確かめたい。しばらく足が遠のいていた伏見を訪れ、家康の面影をたどってみようと、早速伏見に向かった。

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数々の変遷をたどった伏見城へ
 
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edit : Hiroko Yokozawa photo: Azusa Todoroki

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