京都・天橋立に河原シンスケが移住した理由
なぜアーティストは“海の京都”へ?【前編】
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京都府北部、日本海に面する「海の京都」が、近年国内外で活躍する芸術家やクリエイター、職人など、ものづくりに携わる人々の熱い視線を集めている。彼らが引き寄せられる理由とは?
京都府宮津市を日本の住居兼アトリエとするアーティスト・河原シンスケさんにこの土地を選んだ理由と、天橋立周辺の魅力的なスポットを教えてもらった。
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河原シンスケ(かわはら しんすけ)
武蔵野美術大学卒業後、1980年代よりパリを中心にフランス・アメリカ・日本などで創作活動を行う。エルメス、バカラ等の広告を手掛けるほか、La Rochelleのリゾートホテル「cote ocean」の総合デザイン及び、250㎡の天井画を完成させる。2022年にはMusée de la Monnaie de Parisでも作品を展示
アーティスト・河原シンスケが
天橋立を目指した理由
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京都府宮津市。青い海に架かる橋のように、海を割ってすっと延びる砂洲と松並木——日本三景のひとつ、天橋立。河原シンスケさんの日本における住居兼アトリエは、この天橋立近くの海沿いにある。ウサギをモチーフとした絵画やオブジェ、映像など多彩な作品で知られる河原さんはフランス・パリを拠点に創作活動を行い、エルメスをはじめハイブランドとの仕事も多く手掛けてきた。その河原さんが、なぜ天橋立にも拠点を?
「大陸とも関係の深い日本海側に、前から一度住んでみたいと思っていました。数年前はじめて天橋立を訪れたとき、海がすごくきれいで感動! ピピっときて何度か通ううちに、ここかなと」。海に臨む古民家を、2年かけてリノベーション。2020年以降、日本滞在中はこちらを拠点としている。
「『何もなくて不便でしょ?』とよく言われるけれど、困ることは何もない」と涼しい顔の河原さん。むしろ、日曜にほとんどの店が閉まるパリと比べれば、ずっと便利だという。「都会にしか住んだことがなかったから、何もかも新鮮でおもしろいんですよ。漁師さんを見て『魚ってこういう風に捕るんだ!』とか」。眼前に海が広がる自宅ダイニングに地元の人を招いたところ、お礼にと大量の野菜が翌日届けられたこともある。
車はもたず、移動手段は主に徒歩と自転車で「日本の原風景の美しさ」を感じているという河原さん。「朝、誰もいない天橋立を歩くのは、最高ですよ」。急な雨や雪に見舞われたこともあるが、通りかかった知り合いが車に乗せてくれたという。
天橋立に拠点をつくって約3年。いま、河原さんは「縁もゆかりもない自分を受け入れてくれた土地に、少しでも何か返したい」と考えている。すでに地元では、河原さんがデザインしたワインのラベルや絵馬がお目見え。さらに江戸時代から続く地場産業・丹後ちりめんに、河原さんの新しいアイデアを注ぐプロジェクトも進行中。「海の京都」と河原さんのコラボレーション、今後の展開に注目したい。
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《河原シンスケの天橋立案内》
葡萄酒から旬菜まで手に入る
「天橋立ワイナリー」
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江戸中期創業の老舗旅館「ワインとお宿 千歳 CHITOSE」が2001年にオープンさせたワイナリー。100%京都産のブドウを加熱処理せず熟成させたワインが評判だ。代表・山﨑浩孝さんは河原さんを「海の京都」に招いた一人で、河原さんはワインのラベルデザインの依頼をたびたび受けている。醸造所は見学可能で、レストランのほか地元の野菜や米、パンなどが並ぶマルシェも併設。「野菜は日によってラインアップが異なり、新鮮で安くて美味しい! いつもここで買って帰ります」
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天橋立ワイナリー
住所|京都府宮津市国分123
Tel|0772-27-2222
営業時間|工場見学・ワインショップ10:00~17:00、レストラン11:00~14:00(L.O.)14:00~17:00(カフェ)※平日のみ11:00~17:00カフェ利用可 マルシェ10:00~17:00
定休日|水曜
http://www.amanohashidate.org/wein/
清水が湧く、日本屈指の古社
「元伊勢 籠神社」
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古来、豊受大神(とようけおおかみ)と天照大神(あまてらすおおかみ)を祀り、後に、両大神が伊勢に遷されたという故事から「元伊勢」と呼ばれる古社。両大神がその昔祀られたという奥宮・真名井(まない)神社の湧き水「真名井の水」は、地元の人もくみに来る名水だ。「水に浸すと、文字が浮かんでくるおみくじもおもしろいんですよ」。古事記をはじめ日本の神話に昔から心が惹かれるという河原さんが、2023年卯年の絵馬をデザインしている。
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元伊勢 籠神社
住所|京都府宮津市大垣430
Tel|0772-27-0006
開門時間|7:30~16:30 ※電話受付・授与所開設 8:30~16:30(御朱印は9:00~) ※土・日曜・祝日、また季節に応じて延長になる場合あり
定休日|なし
https://www.motoise.jp/
若手職人が京都・丹後を拠点にする理由
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京都の魅力再発見の旅へ
1|和の源流を訪ねて都から“海の京都”へ
【前編】京都・丹後地方で美食旅
【後編】京都・丹後地方の美食・歴史・宿
2|なぜアーティストは“海の京都”へ?
【前編】河原シンスケが京都・天橋立に移住した理由
【後編】いま若手職人が京都・丹後を拠点にする理由
3|作家・柏井壽がひも解く!京都で“どうした家康”
【前編】徳川家康と京都の深い関係
【後編】徳川家康・明智光秀の面影をたどる旅
4|平安の女性たちの物語を巡る、作家・柏井壽の京都案内
【前編】女性たちの平安京
【後編】紫式部「源氏物語」の舞台・平等院へ
5|京都の料亭へ行こう
【前編】新旧が交錯する会席で“京料理の美”を堪能
【後編】京料理を支えるうつわ、もてなし、食材
text:Kaori Nagano(Arika Inc.) photo:Masaki Hashimoto