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京都・天橋立に河原シンスケが移住した理由
なぜアーティストは“海の京都”へ?【前編】

2023.3.14
京都・天橋立に河原シンスケが移住した理由<small><br>なぜアーティストは“海の京都”へ?【前編】</small>

京都府北部、日本海に面する「海の京都」が、近年国内外で活躍する芸術家やクリエイター、職人など、ものづくりに携わる人々の熱い視線を集めている。彼らが引き寄せられる理由とは?
京都府宮津市を日本の住居兼アトリエとするアーティスト・河原シンスケさんにこの土地を選んだ理由と、天橋立周辺の魅力的なスポットを教えてもらった。

河原シンスケ(かわはら しんすけ)
武蔵野美術大学卒業後、1980年代よりパリを中心にフランス・アメリカ・日本などで創作活動を行う。エルメス、バカラ等の広告を手掛けるほか、La Rochelleのリゾートホテル「cote ocean」の総合デザイン及び、250㎡の天井画を完成させる。2022年にはMusée de la Monnaie de Parisでも作品を展示

アーティスト・河原シンスケが
天橋立を目指した理由

京都府宮津市。青い海に架かる橋のように、海を割ってすっと延びる砂洲と松並木——日本三景のひとつ、天橋立。河原シンスケさんの日本における住居兼アトリエは、この天橋立近くの海沿いにある。ウサギをモチーフとした絵画やオブジェ、映像など多彩な作品で知られる河原さんはフランス・パリを拠点に創作活動を行い、エルメスをはじめハイブランドとの仕事も多く手掛けてきた。その河原さんが、なぜ天橋立にも拠点を?

「大陸とも関係の深い日本海側に、前から一度住んでみたいと思っていました。数年前はじめて天橋立を訪れたとき、海がすごくきれいで感動! ピピっときて何度か通ううちに、ここかなと」。海に臨む古民家を、2年かけてリノベーション。2020年以降、日本滞在中はこちらを拠点としている。

「『何もなくて不便でしょ?』とよく言われるけれど、困ることは何もない」と涼しい顔の河原さん。むしろ、日曜にほとんどの店が閉まるパリと比べれば、ずっと便利だという。「都会にしか住んだことがなかったから、何もかも新鮮でおもしろいんですよ。漁師さんを見て『魚ってこういう風に捕るんだ!』とか」。眼前に海が広がる自宅ダイニングに地元の人を招いたところ、お礼にと大量の野菜が翌日届けられたこともある。

車はもたず、移動手段は主に徒歩と自転車で「日本の原風景の美しさ」を感じているという河原さん。「朝、誰もいない天橋立を歩くのは、最高ですよ」。急な雨や雪に見舞われたこともあるが、通りかかった知り合いが車に乗せてくれたという。

天橋立に拠点をつくって約3年。いま、河原さんは「縁もゆかりもない自分を受け入れてくれた土地に、少しでも何か返したい」と考えている。すでに地元では、河原さんがデザインしたワインのラベルや絵馬がお目見え。さらに江戸時代から続く地場産業・丹後ちりめんに、河原さんの新しいアイデアを注ぐプロジェクトも進行中。「海の京都」と河原さんのコラボレーション、今後の展開に注目したい。

天橋立近くの自宅で作品を描く河原さん。床の間にはネオン管が輝く「Forme」シリーズの一作が
天橋立の松並木が好きで、よく散歩するという河原さん。「なんでこんな風に松が? とホントに不思議。ほかのどこにもない美しい景観ですよね」。よく立ち寄るという、天橋立周辺のお気に入りスポットも教えてもらった

《河原シンスケの天橋立案内》
葡萄酒から旬菜まで手に入る
「天橋立ワイナリー」

約4haのブドウ園。天橋立で回収される牡蠣の殻や地元産堆肥を使い、自然栽培に近い方法で育てられている

江戸中期創業の老舗旅館「ワインとお宿 千歳 CHITOSE」が2001年にオープンさせたワイナリー。100%京都産のブドウを加熱処理せず熟成させたワインが評判だ。代表・山﨑浩孝さんは河原さんを「海の京都」に招いた一人で、河原さんはワインのラベルデザインの依頼をたびたび受けている。醸造所は見学可能で、レストランのほか地元の野菜や米、パンなどが並ぶマルシェも併設。「野菜は日によってラインアップが異なり、新鮮で安くて美味しい! いつもここで買って帰ります」

河原さんデザインの2023年干支「卯年」記念ラベル。右からロゼ、ルージュ、ブラン
その日に採れた野菜が並ぶマルシェ。一つひとつ、生産者の名も記されている

天橋立ワイナリー
住所|京都府宮津市国分123
Tel|0772-27-2222
営業時間|工場見学・ワインショップ10:00~17:00、レストラン11:00~14:00(L.O.)14:00~17:00(カフェ)※平日のみ11:00~17:00カフェ利用可 マルシェ10:00~17:00
定休日|水曜
http://www.amanohashidate.org/wein/

清水が湧く、日本屈指の古社
「元伊勢 籠神社」

元伊勢 籠神社(もといせ このじんじゃ)の奥宮、真名井神社

古来、豊受大神(とようけおおかみ)と天照大神(あまてらすおおかみ)を祀り、後に、両大神が伊勢に遷されたという故事から「元伊勢」と呼ばれる古社。両大神がその昔祀られたという奥宮・真名井(まない)神社の湧き水「真名井の水」は、地元の人もくみに来る名水だ。「水に浸すと、文字が浮かんでくるおみくじもおもしろいんですよ」。古事記をはじめ日本の神話に昔から心が惹かれるという河原さんが、2023年卯年の絵馬をデザインしている。

読了ライン

河原さんが手掛けた2023年の絵馬。卯年にちなんだ愛らしいウサギと天橋立が描かれている

元伊勢 籠神社
住所|京都府宮津市大垣430
Tel|0772-27-0006
開門時間|7:30~16:30 ※電話受付・授与所開設 8:30~16:30(御朱印は9:00~) ※土・日曜・祝日、また季節に応じて延長になる場合あり
定休日|なし
https://www.motoise.jp/

 


若手職人が京都・丹後を拠点にする理由
 
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1|和の源流を訪ねて都から“海の京都”へ
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text:Kaori Nagano(Arika Inc.) photo:Masaki Hashimoto

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